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第45話 ドラゴン退治って幻聴かしら


 今〝ドラゴン退治〟とか口走ったのかなこの子。

 あはは〝薬草むしり〟の聞き間違いだよね、似てる似てる、同じ七文字だし。


「ドラゴン退治です」


「ドラゴン草を採取するってオチだよね? よくあるよくある」

「魔物のドラゴンですよ」


「ほらあ! メガネ君がわけのわからないストライプキノコなんか採ってくるから、おかしな幻聴が聞こえちゃってるじゃん!」


「ちょっと寄こせと齧ったのリンさんじゃないですか。ふむ、ストライプキノコはとてもストライプと、ノートに記載しておきますか」


 そーじゃねーわ! 意味不明な情報じゃなくて幻聴の事を書けよ!


「幻聴じゃないですよリンナファナさん、本当にドラゴン退治に来たんです私」


「マジですか」

「マジです」


 そんな真っ直ぐな目で私を見ないで。お姉さん、気前よく手伝うと言っちゃったけど腰が抜けそうだよ。


「そんなの女の子一人で受けるような仕事じゃないわよね、それこそ勇者パーティーの出番じゃないの」

「あのポンコツたちでは食べられて終わりですよ?」


 うん確かに、その意見には私も同感です。


「でもどうしてそんな危険な依頼を受けようと思ったの?」

「町が困っていたからですよ。実はコッカーの町は私の出身の町なんです」


 ロリっ娘ちゃんが困ったような笑顔で私たちに事情を説明してくれる。


「数ヶ月前からコッカーの町は、一体のドラゴンに襲われるようになりました。そして決まって町の子供たちが消えるんです」

「それって……」


「ドラゴンが子供たちを攫うんですよ。いつの間にか消えていた子供もいれば、攫われるのを目撃された子供もいます。今では上流階級の子供が狙われないように、平民の特に貧民の孤児を生贄にしてドラゴンの目につき易い所におくようになりました」

「あ……」


 私がお芋をあげた子供たちの笑顔を思い出して切なくなる。

 ちくしょう、そういうカラクリであの子たちはあそこに留め置かれていたのか。


「仕方無いです、親も無く後ろ盾の無い非力な子供なんてそんなものです。私もコッカーの町の孤児でしたからね。私が暮らしていた孤児院にも沢山子供がいたんです、だから私程度でも力になってあげたいんですよ」


 私も孤児だ、本当の親なんてわからない。気がついたらカナがご飯を食べさせてくれていたし、猫もオヤツを分けてくれていた。


 この目の前の少女が私のような子の頭を撫でてオヤツをあげたくなるのは、そうやって他の子の面倒を見ていたからかもしれない。


「勇者パーティーには期待していたんですけどねえ、ドラゴンをやっつけてもらえるって。加入したらとんでもないポンコツでしょ? あの人たちに頼んだら間違いなく全滅させちゃうから、こうなったら私一人でドラゴンを殺るしかないと思ったんですよ」


 あはは、期待ハズレな幼馴染でごめんね。

 そして命の心配もしてくれてありがとう。


「でもいくらなんでも、リンナファナさんにも迷惑はかけられませんね。やっぱりドラゴン退治は私一人で行く事にします」


 何言ってるのよロリっ娘ちゃん。

 話を聞いた以上は、ドラゴンなんて尻込みしている場合じゃないわね。あの子たちをドラゴンの生贄に? 冗談じゃない。


「私も力になるよ、一緒にドラゴンの首を取ろう! ドーンとこの頼れるお姉さんにまかせなさい!」


 ああごめんごめん、ドーンと自分の胸を叩いたつもりだったけど、フィギュアちゃんごと叩いてしまった。


「もちろん僕たちも行くよ。もともと依頼を受けるか相談しようと思ってたしね。リンがいれば大丈夫、このパーティーは無敵だよ」


 だから私を基点にした根拠の無い自信はやめて。


「姫とロリとドラゴン狩りだブヒ」

「ふむ、その子の大腿骨もなかなかに素晴らしい」

「私もドラゴンの背中に乗って空とぶー」


「姫とかロリとか大腿骨とか何の話ですか? あとその人形今喋りました?」

「世の中には気にしてはいけないものが沢山あるのよ」



 ロリっ娘ちゃんの話では、ドラゴンはここから一日歩いた山を棲みかとしているらしい。

 元々その山にはモンスターが多かった上に、ドラゴンの進出でそこには誰も近づかなくなったそうだ。


 道中フィギュアちゃんをロリっ娘ちゃんに紹介しておいた。また私の腹話術だと思われて、この少女にまで温かい目で見られたら余裕で泣けるからだ。


 いやもう既に温かい目で見られてるんだけどね。

 フィギュアちゃんとロリっ娘ちゃんはすぐに仲良くなった。


 一度フィギュアちゃんがロリっ娘ちゃんの胸元に入ってすぐに『苦しい』と言って私の胸元に帰って来た。


「やっぱりリンの胸の方がぶかぶかで開放感がもがもが」


 何かおかしな事を言いかけたフィギュアちゃんの口に、飴玉を押し付けて黙らせる。ピーチ味である。


 モブ男君たちも自己紹介していたのだが、ちゃんと覚えられたか不安である。

 彼らの顔は、十万三千冊の本を覚えるくらいの記憶力がないと覚えられないかもしれないのだ。


 そんなポンコツ道中も終わりにさしかかり、いよいよ山の麓に到着だ。


「ここから先は、モンスターがうようよ沸いて出てきますから気をつけて下さ――」


 と言うロリっ娘ちゃんのセリフの途中から、既にモンスターの出現である。

 草むらからひょっこり顔を出した熊型のモンスターを、ロリっ娘ちゃんがパンチ一撃で屠った。


 す、すげー。

 これが元勇者パーティーメンバーの実力か!


 モンスターも何が起きたかよくわかってなかっただろう。

 玄関先でいきなり強盗みたいなものである。


『ブゴオオオオオ』


 うわ、モンスターがいっぱい出てきたよ!


 まるで『何だ何だカチコミか!』そんな事を言ってるように聞こえる。


 しかし新戦力を得たわがモブパーティーに敵は無し!


 このパーティーにいれば、魔物に食われそうになる事なんて絶対に無いわね!


 次回 「ドラゴンの山で食われそうになる」


 リン、食われそうになる


 すみません、長くなったので食われそうになるのは次回に持ち越しになりました。

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