第121話 リン、反撃!
二日くらいは何事も無く過ごせた。
しかしとうとうその日がやって来た。隣国の軍の主力が町を攻撃しようと終結してきたのだ。
それは朝の事だった。
「敵軍主力十数万! 町の南側に集結しています!」
「遂に来おったか! やつら何故かこの町が気になって仕方がないようだ」
「ここでルーアミル殿下を一気に叩いて、我が国の反撃の芽を潰してしまう気でしょうな」
王子の事もたまには思い出してあげてください。
「我らこの地にて、ルーアミル王女殿下と共に華々しく散る覚悟はできておる!」
「私もお供いたしますルーアミル王女殿下!」
「当然私も一緒にこの地で果てる覚悟ですわ! 殿下!」
「我ら、ルーアミル殿下と共に!」
悲壮感漂いながらもどこか晴れ晴れとした皆の顔に、お姫ちゃんが静かに頷いている。
「我が王国軍の最後の死闘。ここで敵に見せて差し上げましょう」
『うおおおおおおおおお!』
「ルーアミル!」
「ルーアミル!」
「ルーアミル!」
「ルーアミル!」
たまには王子の事も……って王子も一緒になってシュプレヒコール上げてんじゃねーわよ!
因みに私はこの声援には参加していない。
なぜなら私は現在、この町の外にいるからだ
城壁の上にいる王侯貴族や兵士たちを、膝を抱えて座りながら城壁の外から見上げている状態なのだ。
城壁と言ってももはやボロボロのボロ、崩れてるわ折れてるわで散々な状態なのだが。
十数万の軍勢に押しかけられたら、たぶん数時間ももたないだろう。
噂の竜騎兵が殺到したら、数分で詰む。
その外側に私はいる。
私の正面には展開している隣国の軍勢が見えている。
もちろんとんずらこく為ではない。
私だって、私にやれる事はやっておきたいのだ。
もちろん私は一人でここにいるわけじゃない。
「リン、お供するよ」
私の胸元ではフィギュアちゃんがトゲを握りしめて私を見上げているのだ。
「リンの判断なら、僕は何も言わずに従うよ」
「私たちはチームですからね」(メガネくいっ)
「ブヒ」
い、いたんだモブ男君たち。
モブ太君はここでかっこいいセリフを決められなかったのだろうか。いや、むしろそれがかっこいいよ。
隣国の軍勢がゆっくりとこちらに向って進んでくるのが見える。
「はははは! またもこの町を攻め滅ぼす事になろうとは! 光姫がいるとも聞いておる、好敵に相まみえられる我が武運にこのコードル、感謝しておるわ!」
なんだか向こうで暑苦しい隣国の将軍みたいなのが叫んでるけど、声が大きすぎるわ。
馬鹿笑いがこっちまで聞こえてきたわよ。どんな頑丈な喉をしてるのよ。
「さあ出て来なさい! 光姫! 馬車一杯タマネギを用意してあげたからね! 今度はあなたが目が目がって泣き叫ぶ番よ!」
「うわー闇姫が出たー!」
公爵たちの騒ぎに改めて向こうの軍を見ると、軍勢より前に黒髪ちゃんがドヤ顔で立っているではないか。
隣には大きな木箱が積まれているが、恐らくあれが用意されたタマネギなのだろうか。
これから光姫と闇姫とでタマネギこすり合い合戦でも繰り広げられるのだろう。
光姫もご苦労な事である。まあ私には関係無いけどね。
「うわあああ、来たぞ! 敵の竜騎兵だ!」
「もうだめだ、例え光姫のご加護があっても闇姫と相殺されて、あいつらの分だけ我らはズタボロにされるのだ!」
また城壁の上が騒がしくなった。
なるほど、隣国の軍勢の後方の空に無数に飛んで見えているのは飛竜なのか、カラスじゃないんだね。あれに騎兵が搭乗しているのだろう。
「やれやれ、出番が来たみたい」
私はその場に立ち上がった。
私が立った事で、城壁の人々も私の存在に気が付いたのだろう。
「なんだあのほっかむりの少女は?」
「戦場泥棒か?」
やかましいわ!
岩や炸裂魔法弾や、よりにもよってとんでもないお土産を爆撃していく悪しき存在の竜騎兵。
乙女としては絶対に許せない。怖いけど許せない。
私は逃げも隠れもしないわよ。
その証拠に、頭に付けた飛竜のお土産避けのほっかむりを取ってあげようじゃないの。
そう、これが私の真剣の証明だ!
勢いよくほっかむりを取ると、私の金髪が風になびいた。
「なんだあれは、金髪がきらきら光って、光の勇者か?」
後ろから見たらとてもかっこいい事になってるんでしょうねえ。
でも実際には髪が目に入るわ、鼻をこすってくしゃみが出そうになるわ、ほっかむり取るんじゃなかった!
隣国の竜騎兵の軍団がこちらに向って殺到してきているのが見える。
飛竜の足には巨大な岩やその他。それらをこちらに落とそうと飛んで来ているのだ。
その数はざっと見て数百騎というところか。
ドラゴンの親戚の飛竜が数百体も押し寄せてくるのだ。あれの一体一体が、こちらの数百の部隊に匹敵するかと思うと、絶望の風景でしかない。
その上、空から飛竜のお土産まで落としてくるのだ、あれは地獄の使者に違いない。
だからこそあいつらは倒す!
「あの少女は一体なにをしているのだ!」
「おおい! そこの少女、そんな所に一人で立っていては危ないぞ!」
「何をしている、逃げろ!」
おいこら、私以外にもモブ男君たちもいるっての。
地味な色の服を来てニンジャ仕様なもんだから、地面と同化しちゃって見づらいのかも知れないけどさ。
そう、私はここに一人でいるわけではないのだ。
モブ男君たちだけではない。
飛竜? 竜騎兵? そんな連中にお姫ちゃんや、町の再建を頑張っている町の人たちをやらせないよ!
ドラゴンの親戚? 数百体? 知るか!
その時、公爵の叫び声が空に響いた。
「あ、あれは――もしやリンナファナ嬢か!」
私はさっと手を上げる。
そして叫んだ。
「第一次攻撃隊出撃――――!」
「赤城隊発進します!」
「加賀隊同じく発進!」
「蒼龍隊出撃します!」
「飛龍隊も出撃――!」
私の足元に待機していた妖精の子たちが一斉に飛び立って行く。
「こちら利根四号機、敵編隊は高度一五〇〇、方角南南東より接近。距離一〇〇〇」
天まんじゅうを空輸する為にこの町に来ていた妖精の子たちに久しぶりに再開した私は、ついでに今回の事を頼んでおいたのだ。
「いっけええええ!」
妖精ストライク――!
次回 「ヒャッハー航空戦」
城壁の上の人たち、ハニワ君人形になる




