5話目 魔法
キシさんは魔法が使えないので、騎士団の魔法部隊にいるヤマモトさんを紹介してくれた。ほぼ毎日に騎士団へ顔を出してるから、騎士団員がほとんど日本人であることに驚いた。死にたいと思ってる人ってこんなに多かったんだ。
ヤマモトさんは無口な人ぼくがヤマモトさんから聞いた言葉は「そうだ」「違う」「撃って見ろ」「倒せ」の四つしかない。朝の挨拶しても 練習のお礼を言っても、ヤマモトさんは右手しかあげてくれない。
ヤマモトさんと魔法の練習は とにかくイメージを固めて魔法の火で遊ぶことだけであった。火球を作ってみたり、火炎放射してみたりと、ヤマモトさんは火を操ることに拘りを持ってるみたい。
ヤマモトさんが見せてくれた切り札は、人の形を成した巨大な火炎の人型、イフリートだ。それは召喚術とかではなく、精霊でもなく、あくまでヤマモトさんの魔力と想像力によって創造された火炎の塊であることをキシさんから聞いた。
このイフリートの魔法だけで ヤマモトさんは単独でダンジョンを踏破したと、騎士団の魔法部隊の人たちが教えてくれた。しかも、ヤマモトさんは人付き合いが苦手らしく、魔法を教えたのはぼくが初めてらしい。光栄なことです。
「倒せ」
ヤマモトさんは火のトカゲを作り出して、ぼくに魔法の試合を挑んできた。今日は珍しくマリアーヌお姉さんとハルカお姉さんが見に来てる。キシさんがいうにはおねえさんたちにとって、ヤマモトさんとぼくでは創造意欲が湧かないみたい。ありがたいことです。
火のトカゲはヤマモトさんによる上手な操作で、あたかも生き物のように襲い掛かってくる。だけどぼくだってヤマモトさんから魔法を学び、訓練を通して、色んなやり方を教わってきた。魔力には魔力による分解が一番だ。
バーナーのような炎の剣を作って、サラマンダーの攻撃を避けながら解体するように切り刻んでいく。魔力の残量に気を配りつつ、ぼくはサラマンダーの四肢を切り落とすことに成功した。あとは本体にあるサラマンダーを形成する魔力の核を壊すだけ。
「ヤマモト先生、ありがとうございました!」
今日はヤマモトさんから教わる魔法授業の卒業式であることをキシさんから聞いた。ヤマモトさんはもうぼくに教えることはないと太鼓判を押してくれたので、明日からは実戦形式に切り替えるとキシさんは今後の方針を示してくれた。
火のトカゲの中心にある魔力の核に、細長く密度の高い炎の槍を作り出してからそれを突き刺した。サラマンダーが魔力を散らして消えるように崩れ去っていく。
「魔力の量に気を配れ。それができれば一人前」
ヤマモトさんからぼくへ、今まで一番長いお言葉だった。
ありがとうございました。




