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28話目 感謝

 それはイジメみたいなものだ。


 こちらの攻撃は一切通用しないで、ギガンテスからの攻撃を必死にぼくらは避け続けている。明らかに死ぬと思って当たった攻撃は骨が折れるだけで済んでいる。


 こいつ、ぼくらで遊んでいるんだ。ちょっとずつ殺しにかかっているんだ。


 だけど、昔のぼくと違って、今のぼくは呼吸している限り、意識がある限り、生きることなんて諦めはしない。


 弱くてもいい、無力でも構わない、生きるんだ。ぼくに生きることを願っている人たちのために!



「ガボッ!」


 ギガンテスのパンチがまともに入って、アルは吹き飛ばされてそのまま動かなくなった。助けに行きたいけど、ぼくにも余力は残されていない。いまは一ミリでもと地べたを這い進み、アルの所まで行く。


 最後の最期は一緒にいたい。



 そんなぼくの様子を見てからギガンテスは右手を上にかざし、なにかわからない言葉で呟きだした。その右手の上に大きな炎の玉が現れた。


 なんだ、詠唱していたのか。冷静にそれを見ていられる自分のことが少々おかしくて笑ってしまった。



「アル、お疲れ。ぼくもきみも頑張ったよな」


 ようやくアルのそばに辿り着いたぼくは アルの手を握りしめると彼を褒め称えることにした。アルはぼくになにか言おうとするけど、出てくるのは言葉じゃなくて、血の塊だけが口から零れ落ちる。



「いいよ、もう喋るなよ」


 ぼくは彼への想いを生のある限り、言葉で伝え続けよう。



「死のうと思って、この世界に来て、きみに逢えて、ぼくは生きることに日々の喜びを感じることができたんだ」


「初めてきみに会ったとき、貶されても罵倒されても懸命にしがみついているきみが羨ましいと思ったんだ。なんて勇敢な子がいるんだと」


「ぼくはきみといることで何度も勇気づけられて、がむしゃらに生きることができて、きみのことが誇らしいと思っているよ」


「最後になっちゃうけど、きみの友でいられたことがぼくの誇り。きみと過ごせた日々に輝かない一日たりともなかった。だから、変に思わないでいてほしいけど、人間として、ぼくはアルのことが大好きなんだ」



 アルがぼくを握る手にわずかだけど力がこもってくる。アルもぼくと同じ気持ちでいることを確信した。



「だから、生まれ変わることがあるなら、またぼくの友達になってよ。これがきみへの最期の願いなんだ」



 ギガンテスの呪文が完成し、巨大な炎の玉がぼくとアルに降り注いでくる。一瞬で焼け死ぬなんだろうけど、そんなことはどうでもよかった。


 この世界にきて、優しくしてくれた人たちがいて、親友と呼べる存在もそばにずっといてくれた。


 人を守るために戦い抜いたことをマリアーヌお姉さんきっと許してくれる。あの自分のことしか考えない、温かくてどこまでも優しいお姉さんはそういう人と、ようやくぼくにもわかったんだ。



 炎の眩しい明かりがもう目の前に来ている。


 これで世界とはさようなら。


 お姉さんたち(みんな)とも、さようなら。


ありがとうございました。

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