25話目 好意
「……アキは、どうしたい?」
親友からの問いにぼくは迷わずに即答する。
「ギガンテスを1体減らす。みんなが生き延びる確率を上げたい」
ぼくからの意見に全員がまた顔を上げてくるけど、その顔には信じられないと言わんばかりに口を開いたままだ。
「ここがバレれば打って出る。一緒に来てほしいのはシールダーにマジシャン、それとアルの4人だけでいい」
「あたしは! あたしはここに残れって言うのあんたは!」
もうなんだろうな。
このリーダーさんはやたらと噛み付いてくる。あんたにはみんなを守る役割があるでしょうに、それもいちいち言わないとだめなのかな。
「あのな、きみはここに残ってみんなを守り抜くことが必要だ。クランのリーダーを張るくらいならわかることでしょう?」
「……う、ううう……」
なんでかな、ぼくなにかいけないことを言ったのかな。
なんでここで泣くんだよ。
「……うう……生き延びるって、約束して……」
「ああ、死なないように頑張ってみるよ」
「生き延びて……あ、あたしとデ……」
「え? なに?」
最後のほうの言葉がよく聞き取れないから聞き直すことにした。
バラの騎士団のリーダー以外の全員が自分たちのリーダーに頑張れという顔をして見守ってる。
なぜだろう?
「生き延びたらあたしとデートしてっ!」
「え? ええーーっ!」
遠くのほうでギガンテスが絶え間もない咆哮をあげ、ぼくはそれに劣る声で絶叫してから固まってしまった。
あれからリーダーさんは手のひらで顔を隠したまま、ぼくのことを見ようとしない。
彼女の団員さんたちはリーダーの健闘を称えるように彼女を取り囲んでる。正直、異性から好意を受けたことのないぼくではこの場をどうすればいいかがわからず、こういう場合に頼りになるのは親友だけ。
「な、なあ、アル。ぼくはどうすればいいかな?」
「んー……サッサと付き合っちゃえよ」
役立たずの親友がここにいた。
「あ、ああー。とりあえずギガンテスの迎撃について語り合おう」
……
「逃げる気ね」
「冷血という割には臆病なのね」
「……慣れてなさそう」
「ああ、幼稚なうちのリーダーにはちょうどいいくらいね」
「真っ赤な顔でお手々を繋いで街を歩く。うん、初々しくて微笑ましい」
「すまないね。うちのアキは女慣れしていなくてね」
こ、こいつら……言いたい放題言ってくれるよ。
リーダーさんのほうを見ると、彼女は熱い眼差しでぼくを凝視していて、ぼくの視線に気付くとあわてて手のひらでまた顔を隠してしまった。
ぼくにどうしろってのよ。
「あー、とにかく、ギガンテスと戦うための話し合いをしようよ」
「「はーい」」
「うん……」
今は生きることが先決だ。
もし、今後にこういうふうな対応が難しいことが起きたら、ぼくそれをうまくあしらえる男になりたい。そのためにも生き抜いてやる。
ありがとうございました。




