20話目 相棒
初めのうちはマリアーヌお姉さんやキシさんがぼくらのダンジョンアタックに付き合ってくれた。
ぼくらの安定した戦いぶりにまずはマリアーヌお姉さんとハルカお姉さんが抜け、何度目かのダンジョンアタックにヤマモトさんも来なくなり、ついにキシさんから太鼓判をもらえることになった。
「もうおれが行かなくてもお前らで大丈夫だろう」
「「はいっ!」」
アルとぼくはその言葉がとても嬉しかった。みんなから認めてもらえたんだ。
「いいか、30層からの中層へはまだ行くなよ? あれは回復役と盾役がいないと通用しないからな」
「「わかりました!」」
次の日からぼくとアルだけの冒険の日々が始まる。
あれからもうすぐ2年。ぼくとアルは城下町や冒険者ギルドではちょっとした有名人となっている。
「よう、冷血と熱血、今日も下層で無双か?」
冒険者ギルドで見知った冒険者の青年から声を掛けられた。
顔色を変えることなく、涼しい雰囲気でダンジョンモンスターを討伐していくぼく。いつも雄叫びを上げながらモンスターの群れに突進して連撃するアル。
体付きも大人のそれに近付き、ぼくのことをモヤシと呼ぶ人が少なくなり、その代わりに冷血との二つ名が知られるようになった。
一方、アルのほうはその行動から熱血と呼ばれるようになり、本人はファイティングドッグのほうに拘っているようだが誰からも呼ばれていない。
ダンジョンアタックではほとんどが二人でのタッグなので、いつしかぼくらは冒険者とポーターたちに冷血と熱血と一緒に称されるようになっている。キラーという名詞はなんだか嫌なのだが、アルと一緒にされるのならそれもいいかと諦めた。
「無双なんてしてないよ。手堅く戦っているだけ」
ぼくの反論に冒険者たちはまともに取り合わない。ぼくらと変わらない年頃の女の子たちがここで絡んでくる。
「あんたたち、下層で初心者たちの獲物を奪わないの。そろそろあたしたちと中層へ行きなさいよ」
彼女たちは現在、絶賛売り出し中の女子パーティであるバラの騎士団。
アタッカーにシールダー、マジシャンにヒーラーとパトロール。ダンジョンアタックに必要な役割を全て備わってる冒険者ギルドからも期待をかけられている新鋭のクランである。
その彼女たちはなぜかぼくらによくちょっかいをかけてくる。
アルやほかの冒険者らはぼくらに気があると勘違いしてるのだけど、真実はぼくだけが知ってる。
あいつら、揃いも揃ってクサってやがるんだ。
なにがアキ×アルだ。そんな目でおれとアルの仲をマリアーヌお姉さんたちみたいに汚すなよ。
「はいはい、また今度な」
実はぼくの素っ気ない態度が彼女たちの疑惑を買ってることも知っているのだけど、あの腐女子どもに弁明する気なんて起きもしない。
今日もぼくとアルはダンジョンでひと稼ぎして、可愛い子供たちが待つ孤児院へ美味しいものを買って帰って餌付けするんだ。
ありがとうございました。




