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14話目 救助

「じゃな、アキ。明日は遅れるなよ!」


 城下町まで戻ってきたぼくたちはアルと城門のところでお別れした。今日で得た報酬は金貨50枚、アルはその半分の25枚を手にして震えていた。それでもそれはアルと最初から契約したポーターとしての正当報酬なので、5枚でいいと遠慮したアルの言い分を聞くつもりはなかった。


 アルが売店が立ち並ぶ大通りに消えていくとキシさんはぼくに話しかけてくる。



「アキ。仲間を守ることはこの世界でも大切なことだぜ」


「え? どういうことですか?」


 キシさんの言葉の意図がわからない。いきなりなにを言い出すのかな。



「アキ君は気が付かないの? おっかないお兄さんたちが私たちの後についてきていたの。今はアル君に目標を変更しているわね」


「え?どういうことですか?」


 ぼくにはこの人たちがなにを言っているのかが全く分からない。



「もう、アキヒロは子供よね。アルが悪い人たちに目を付けられているの、アルのことを仲間だと思うなら助けに行きなさいよ!」


 あ、マリアーヌお姉さんのストレートな物言いにぼくも事の次第がわかった。よく考えてみれば、確かにぼくたちがダンジョンからの戻り道で、ガラの悪そうな集団が離れて後ろからついてきた気がする。



「す、すみません。ぼく、なにもわからなくて……」


「いいんだよ、その年でそれが読めていたら怖いぜ」


 キシさんがゆったりとした口調で泣きそうになっているぼくを慰めてくれた。


「いいか、アキ。人を思う心は強さ、人を背く心は弱さだ。アルのことを思ってるのなら、心を強くして今からお前の手で仲間を助けて来い」


「はいっ!」


 居ても立っても居られない気持ちになって、みんなに頭を下げて一礼をすると、ぼくはアルが消えた方向へ全力で駆け出す。



 アル、待ってろよ。今から行くからな!




 城下町の路地裏でアルが数十人の男たちに囲まれて、殴られながらも必死にマリアーヌお姉さんからもらった時空の革袋(アイテムボックス)を抱えて守っている。


「このガキャ、なんて力をしてやがる。離しやがれってんだよ!」


 一人の大男がアルを押さえつけて力一杯顔を拳で殴りつける。


「キャハハ、ウケるぅ。ガキ一人に手こずってやんの」


 男の隣でしゃがんでいる痩せた男が高い声でおかしそうに大笑いして、周りにいる男たちもにやにやとこの光景を楽しそうに眺めていた。アルは顔中を血で染めりつつも時空の革袋を手放さない。



 アルを押さえいる大男が面倒そうに腰からナイフを抜き放つ。


「クソガキが。命まで奪うつもりはなかったが、てめえのアホさで悔いて死ねや」



 このやろう! ぼくの友達になにをする気? 死にたいならお前が死んでよ。



 ぼくは男たちの輪を駆け抜けると、手加減なしの一回転する回し蹴りでナイフを持つ男の顔を目掛けて蹴りつけた。


 その男はアルの上を飛び越えてしまい、地べたを転がりまわってから積んでいた木箱に激突して、崩れた木箱の中に埋もれて動かなくなった。


ありがとうございました。

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