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死域からの生還者  作者: 七夕 アキラ
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25.拠点作りと問題発生


 一騎と創太が有栖デパート内のゾンビを掃討して安全確保を終えたのと、鳥越班が四トントラックを含めた道路中央部分の事故車を全て左右に退()かしたのは同じタイミングだった。

 一騎が無線を使って鳥越班と三班に連絡を入れて、拠点として使えそうな場所を確保したことと、正確な場所を伝えると十分もしないうちに彼ら全員が集合。

 この時になって、一騎と創太は三班改め北見班だと知ったのだが、会話のやり取りは省く。一騎たちは一階の床やインフォメーションのイスになど座って、今後の方針を話し合っていた。


「発電機があったのはいいが、当面の問題としては安定的な電力を得るための燃料確保に、水と食料の調達。 それと同時にバリケードとかの設置か」

「飲み物に関しては、あれがあるじゃんか」

「あれ?」


 北見の言葉に事情を知らない一騎と創太が、説明してほしそうな表情を浮かべた。


「道路を埋め尽くしていた事故車の中に、自販機の商品補充トラックがあったんだ。 ジュース系はダメだったが、ミネラルウォーターやお茶、ブラックのコーヒーに無糖、ミルクなしの紅茶が箱にかなり入っているんだよ」

「量はどのくらいなんですか?」

「それぞれ二十四本入りが六箱ずつだ」


 かなりの量があるから、当面の飲料確保は問題なし。ただ、身体を清潔にするために使う水と、普通に食料などは調達するしかない。


「更衣室にシャワールームがあったが、水は濁っているのだよ。 ここで生活を送るなら清潔な水の確保は最優先問題なのだよ」

「それと食料だな。 食料確保も生活を送る上で絶対に筆ようになる」


 創太の言葉に盛岡が頷いて、食料確保を訴えた。


「地下の販売コーナーは、ほぼ全部腐っているから使えないですね。 オレたちのマンションとイーグルマンションから融通しても、数に限りはある。 どうにかしないと」

「それもそうだが、一番最初に決めることがあるだろ」


 一騎の言葉に鳥越が待ったを掛けた。一騎たちから視線を一斉に向けられるが、鳥越は重要なことだからと言葉を続けた。


「誰がここで生活を送るか、だ」

「「「「「「…………忘れてた」」」」」」」」


 彼の言葉を聞いて、一騎たちは生活を送る上で必要となる物を考えることをストップした。


「誰がってなると、一人だけになるか」

「オレは班単位で管理した方がいいんじゃないかと」

「班単位?」

「えぇ。 一人だけだと管理維持、それにもしもゾンビが団体で入ってきたら絶望的でしょう」

「そうだな。 となると、中村班、俺の鳥越班、北見班、イーグルマンションにいる四班のどこが担当するかが問題か」

「あの、中村さんたちにはオレたちのマンションを守ってもらいたいので、候補から外してもらえますか?」

「一騎、なぜなのだよ」

「オレと創太、中村班が出ていったらマンションの防衛力は?」

「わかったのだよ」


 一応、今はイーグルマンションにいる澪たちにも、ちゃんと銃は渡してある。渡してあるが彼女たちだけでは、ゾンビ集団や悪意を持つ生存者に対抗しきれない。

 それを考慮すると一騎としては、中村班にマンションに残ってもらうのは絶対だった。創太もそれを理解し、同意した。この段階で有栖デパートを拠点として維持管理するのは鳥越班、北見班、イーグルマンションにいる四班だけ。


「ワン!」


 どうしようかと考えていた鳥越班と、北見班は突然吠えたジャーキーにビクゥっとする。


「ジャーキー?」

「ワフン」


 吠えた理由がわからず、一騎と創太の二人が首を傾げているとジャーキーは再び吠えて北見の背中を前足で軽くポンポンと叩く。


「ん? どうした?」


 北見はジャーキーの方向へと振り返り、その頭を撫で回しながら聞いた。人語を話せないし、簡単な指示くらいしかわからないはずだが、この時のジャーキーは違った。


「ワン、ワフ、ワフン」


 ジャーキーは北見班の残り三人の背後に歩いていき、前足で彼らの背中をポンポンする。


「もしかして、ジャーキーは北見さんの班に担当してもらいたいんじゃ」

「そうなのか? んー?」

「ワン!」


 一騎の言葉を聞いて北見がジャーキーに確認すると、ジャーキーはまるで肯定するように吠えた。


「鳥越班はどうなのだよ?」

「ワフーン」


 創太が確認するように問うと、ジャーキーは首を左右に振って否定のジェスチャー。


「イーグルマンション周辺の、ゾンビ調査は鳥越さんたちが担当していたんですよね?」

「そうだ」

「だったら、そのまま担当するのがいいかと思います」


 今までマンションからある程度、離れた場所を含めての調査をしていた鳥越班。もしゾンビの数や場所移動などがあったら、すぐに気付けるのは彼らだろう。


「北見、頼めるか?」

「おう」


 鳥越の問いに北見が頷き、今後は北見班が維持管理する方向で話はまとまった。一騎たちが次に行動したのは、数日分の燃料確保。

 これは事故車の中でも損傷が少なそうな物から、ガソリンを抜き取ることで解決。ただし、ガソリンを入れる容器を探すのに一時間近くが消費された。

 時間がいつの間にか正午近くになっていたため、全員がカロリーメイトのブロックと箱から取り出したお茶で超簡単な手抜き過ぎる昼食。


 昼食を終えた後、一騎たちは食料確保とバリケード設置のグループに別れた。一騎と鳥越班はバリケード、創太と北見班は食料を。

 一騎と鳥越班はバックヤードの備品である机やイス、デパートなのに置かれている売り物用の家具などを運び出して一ヶ所しか開いていないシャッター前に並べていく。

 大きさや向き、落ちないような積み上げを行いガムテープや、売り物のカーテンを使って崩れないように固定。十分な強度ではないが、それでもシャッター周辺を塞ぐようにするだけなら問題ない。


「鳥越さん、これだけだと不安じゃありません?」

「不安だな。 だが、他にバリケードに使えそうな物なんてないぞ?」

「事故車をここまで押しますか」

「却下だな。 そんなことをするくらいなら、取り出したガソリンを数台に戻して、運転して運んできた方が早い」

「ガソリン、使いますか?」


 一騎の問いに鳥越ではなく盛岡が答えた。彼は本当にガソリンを使うのかと確認すると、鳥越班全員が頷く。手で押すのに比べたら、断然早いから当然だろう。

 その分、もしもエンジン音が聞こえる距離にゾンビがいた場合は、集まってくる危険性もあるが。それでも、早い段階でバリケードを作り上げる必要があった。

 彼らは地下一階に運び込む前のガソリンを入れた容器をいくつか持ち、事故車が停まっている方向へと歩いていく。ジャーキーは疲れきった表情の鳥越たちを、後ろから前足で軽く押して早く歩けとばかりに急かした。





 一騎たちが事故車を動かすべく向かっていた頃、創太と北見班は三階の宇宙食、長期保存食コーナーを訪れている。地下一階は惣菜コーナーであり、腐っていたがここは別だ。

 いつだったか、テレビ番組に有栖デパートの経営者が出演し、誰もが気軽に宇宙食を買える場所を作りたい、そう語っていたのを思い出した創太が真っ先に北見班を連れて移動したのだ。

 長期保存食は日本各地で大規模地震が二十年経たずに連続したことにより、宇宙食と一緒に販売されている。


「種類豊富だなぁ」

「そう思うのだよ。 ただ、ご飯系の種類が少し残念なのだよ」

「葉加瀬くん、普通はこんなにないと思うけど」

「種類が限られているから、食べ飽きてしまうのだよ」

「食べ飽きる、のか?」

「北見さん、俺は種類豊富だと思うんですけど」

「これが年齢の差による見方の違いってところか」


 創太はご飯系が少ないと言っているが、実際のところは北見たちの言う通りに種類も量もある。水やお湯を入れるだけで物ばかり。

 ただの白米、五穀枚、十五種類のチャーハンに、リゾット二十五種類、ラザニア十種類、パエリア十二種類、牛丼、天丼、カツ丼、豚丼、中華丼がご飯物。

 これでご飯物の種類が少ないと言い張る創太は、自分が意外と食いしん坊だと気付いていないのだろう。おかずや普通のパン、特殊加工された菓子パンやケーキ類もある。


 それと種類はあまり多くないが、お湯を入れるだけで完成する麺料理も。うどん、蕎麦、そうめん、ラーメン。これらは少し多目にお湯を使うことになるが。

 かなりの量の食料が普通に見つかったため、創太と北見班にはもうやるべきことがない。


「どうするか」

「発電機用のガソリンを地下に運ぶのだよ。 それと腐っている惣菜の破棄と、僕と一騎が殺したゾンビの死体運び出し」

「ゾンビの死体か。 ゴム手袋とかってデパート内じゃ売っていないだろ。 どこかから持ってくるしかない」

「北見さん、葉加瀬くん。 ゴム手袋だけじゃなく、とりあえず寝られるように寝袋なんかも準備もありますよ」

「家具コーナーの一角に寝具がなかったか?」

「確かありました」

「それを使えばいいのだよ。 それとゴム手袋なら、バックヤードにもあるはずなのだよ。 ついでに宇宙食と長期保存食の箱の量も確認」


 創太と北見はガソリンを配電室まで運び、腐っている惣菜を袋に集めて破棄。北見班の残り三人は最初にバックヤードで食料が入った箱の確認。次にゴム手袋を使ってゾンビ死体を外に出して焼却することで話はまとまった。


「北見、行くのだよ」

「あぁ」


 創太と北見は一階へと降りて、ガソリンが入った容器を手に持つ。ここで創太が気付いた。二つほど足りないと。


「一騎、ガソリンを持って行ったか? なのだよ」


 無線機のスイッチを切り替え、創太が問いを発する。


『二つだけ持ってる。 数台の事故車に最低限戻して、運転してシャッター前に戻すことになった』

「了解なのだよ。 残りそうか?」

『わからないな。 今三リットルずつ、五台に入れてる』

「了解したのだよ」


 一騎からの返事を聞いた創太は、自分も連絡を聞いていた北見に視線を向けて運ぼうと促す。階段を下りようとしたところで、創太は足を止めてインフォメーションのところに置いたままだったXM8改を取りに行った。

 置いたままにしておいても問題なかったのだが、なんとなく創太は持っていくことにしたのだ。ちなみに一騎たちも銃は持って出ている。


「うっ!」

「換気システムを動かして、腐敗臭を取り除くか」


 地下一階へと下りた直後、思いきり腐敗臭を北見は嗅いでしまった。ガソリン入り容器を持つ手を一瞬で変えて、鼻を摘まむ。


「換気されていないから、腐敗臭が酷い」

「だからこそ、換気システムを動かすのだよ」


 創太は鼻を摘ままず、素早く口呼吸を開始して腐敗臭を嗅がないように。北見が容器を拾い上げるのを待ち、ゾンビ死体が倒れたままになっている場所を普通に歩いていく。


「どうしたのだよ」

「焼却されていないから、動き出すんじゃないかと不安でね」

「頭を破壊してあるから、心配いらないのだよ」

「そうは言ってもね」

「いらないのだよ」


 創太がXM8改を軽く叩いたことで、北見も止めていた足を動かす。そして二人が二往復して、十五リットル容器を四つ運び終わると、バックヤードから三十リッター入るゴミ袋二袋に腐った惣菜を次々と放り込む。

 皿ごと袋に全て入れると、創太は北見を連れてゴミの収集所へ。他にもある袋の上に重ねおいて、二人は上階へと戻ろうとした。


『ギャァァァァァァァァオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!!』


 無線機からこれでもかと言わんばかりの絶叫が。


『『『『『ギィィィィィィイ゛イ゛イ゛イ゛!!!』』』』』

『『『『『『グルゥゥゥゥア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア“ア“ア゛ア゛!!!』』』』』』


 呼応するように、さらに無線機から絶叫が。


「一騎、一騎!!」

『くそっ! SZに見つかった!』

「さっきの絶叫は!?」

『普通に判断するなら、ここから周辺にいる有栖総合病院以外のゾンビの声だろ』

「どうするのだよ?」

『大急ぎで移動するしかない』

「デパート前のバリケードはどうなのだよ?」

『大した防衛力はない。 そっちに向かえるが、ゾンビ共に襲撃されるだけになる』

「こっちに戻らずに逃げるのだよ!!」

『ノアまで戻る。 そっちはシャッターを下ろして、ゾンビを中に入れるな!!』

『北見さん、どうしますか!?』

「武藤くんからの連絡が聞こえていただろ!! すぐにシャッターを閉めるんだ!!」

「北見、発電機も止めるのだよ!!」

「わかった!!」

「一騎、生き延びて救出に来るのだよ!!」

『わかってる!!』


 無線連絡を終えると、すぐに創太と北見は地下一階から一階へと移動。この頃には、既に北見班の三人がシャッターを手動で降ろしていた。北見はそれを確認すると再び地下へと戻り、発電機を停止させに向かう。

 創太はXM8改を持ったまま、五階まで階段を使って駆け上がる。そして一つの窓を開けて、外を見ると一騎たちのいる事故車の方向に向けてデパート前を歩いていく、道路を埋め尽くすようなゾンビの大集団が。


「一体どこにあれだけの数がいたのだよ。 北見班、すぐに武装して五階へと上がってくるのだよ」

『五階?』

「ある程度の高い位置からなら、ゾンビ行動や向かう先がしっかりと見れるのだよ」

『了解』

『了解した』


 創太は帰ってきた返事を聞きながら、窓の外を見たままだった顔を引っ込める。カーテンを閉めずにいるのは、少しでも日光を室内に入れた状態で明るさを確保。


「数は?」

「数えられないくらいなのだよ」

「種類は?」

「WZがほとんど。 何体かがバリケードに接触しているが、見たところ問題ないのだよ」

「SZは一体どこにいて、どうやって武藤くんたちを見つけたんだろうな」

「それは聞かないとわからないのだよ」


 創太たち五人が五階の窓から見ていることなど気付きもしない様子で、WZたちは事故車の方向へと歩いていく。


「ここから撃つか?」

「却下なのだよ。 パチンコ玉を使うだけじゃなく、これほどの数を射殺するにはマガジン消耗が酷いのだよ」

「どうするんだ?」


 北見班の一人が言った内容を、創太は即却下。ちゃんと理由も告げてだ。北見としては一騎たちが無事に離れるために、できることがないかと彼に聞く。


「少しは自分で考えるのだよ」

「だな。 とりあえず、他の窓を開けて上からRZがいないのを確認するのが最優先だ」

「「「了解!!」」」


 北見の指示に班員三人は頷くと、すぐに他の窓を開けて上からRZがいないかを見ていく。せめてRZだけでも殺しておけば、一騎たちが素早く的確な判断を下せるだけの時間が稼げるはずと考えて。





 一騎たちはSZが絶叫を上げた直後に射殺し、ノアへと大急ぎで向かった。運転は盛岡で助手席に鳥越、後部座席に残り二人の班員と一騎が乗り込んでいる。ジャーキーは一後部座席の床で伏せた状態。

 すぐにノアは出発して、上戸森と有栖の境から離れている最中だ。ただし、最初から最高時速を出してはいない。ほとんどのゾンビが有栖総合病院にいるはずだから、数はそんなに多くないはず。

 そう判断していたのだが、彼らはその判断を現在進行形で悔いていた。


「どこにあれだけの数がいたんだか」

「さすがにこれ程の数は誰も予想も想定もしていなかっただろうね」

「勘弁してほしいですよ」

「全くだ。 出発するぞ」


 一騎は鳥越たちが事故車を動かして、デパートまで向かえるようになった道路をゾンビ大集団が迫ってくるのを見ていた。まだまだ距離はあるが、盛岡がノアを出発させた理由は至極単純。

 どこから集まったのかわからない、RZ三十二体が走ってくるのを見たせいだろう。


「鳥越、武藤くん、どうする」

「マンションまで戻るのが最善でしょう。 しかし、そうなるとデパート内にいる創太たちが、オレたちを見失った大量のゾンビに群がられてしまいます」

「となると、ある程度は殺すしかないか」

「今の数だけならマガジン、全員の一マガジンは絶対に使いきります」


 一騎と鳥越が話している間にも、RZは疲れ知らずの状態でノア目指して走ってくる。


「今は最優先でRZへの対応だな。 後部座席の窓を開けて発砲。 ただし、武藤くんは撃たずに二人のサポートを」


 一騎に出されたサポート指示は、左右に座る二人が身を乗り出して撃っているタイミングで曲がる時、電柱などに衝突しないように引っ込める役だ。


 ――パシュシュシュ!

 ――カシュン、カシュシュシュン!!


 一騎はRZの数を見ながら、視線を前方に戻して右左折するタイミングを見逃さないように意識を集中。


「曲がるぞ!」

「はい!」


 二人はシートベルトを外しているため、速度が出たままだと運悪く遠心力で外に飛び出してしまう危険性がある。だから、一騎は左右の手で隣に座る鳥越班の二人を服をグイっと引っ張って車内に戻した。

 引っ張り戻したその直後、時間差ならぬ距離差で左右から少しだけ飛び出すような電柱を発見。しかし、車内へと戻された二人は後ろを見て険しい表情だ。


「一体にも当たっていません!」

「まだ追ってきます!」

「しばらくは直線だ! そのまま撃て!!」

「「はい!」」


 鳥越の指示を聞いた二人は、また窓から身体を外に出してRZ集団へとパチンコ玉をどんどん撃っていく。ようやく三、四体の頭に命中して死亡。

 それでも残りは同じ種類であるRZの死体を無視し、しつこいくらいに追い掛け続ける。このままではムダにパチンコ玉が減っていくだけだ。


「オレが撃ちます。 リロードのタイミングで、場所を交換してもらいます」

「俺の方が早いな。 後十三発でリロードだ」


 一騎の言葉に右側の鳥越班の班員が答える。一マガジン撃ちきった彼と一騎は、すっと場所を変わった。


「SZにしろRZにしろ、どこに潜んでいたんだか」


 身を乗り出しながら、不満そうに呟きながらも一騎は自分のTARー21改のセーフティーを解除してドットサイトを覗き込む。


「ァァァァア゛ア゛ア゛ア゛!!」

「グヌゥゥォォオ゛オ゛オ゛オ゛!!」

「ギヤァァァァア゛ア゛ア゛ア゛オ゛オ゛オ゛!!」


 ――バシュン、バシュシュシュシュシュシュン!!


「ギィァァア」

「グギュゥゥウウ」

「ゲヒュ」

「ギャオ」


 ドットサイトでしっかりと狙いを定めて放たれたパチンコ玉は、まっすぐにRZ四体の眉間と頭部へ。一度に四体が倒れるが、残りはまだまだ残っている。


「す、凄い」

「ちゃんと狙わないとダメってことか」


 ――バシュン、バシュシュン、バシュシュシュン!

 ――パシュ、パシュシュシュ、パシュシュシュ!


 一騎と左側の鳥越班メンバーの正確な射撃によって、数分後にRZの数は残り三体にまで減っていた。


 ――バシュン、バシュン、バシュン!


 最後の三体となったRZを一騎が射殺し終えると、ノアは停車した。そして、後ろからWZの集団が来ていないかをしばらく注視し問題ないのを確認。


「戻りましょう」

「戻ってもあの数を殺すのは厄介だぞ」

「普通ならそうでしょうね」

「普通なら?」


 一騎の言葉に鳥越と盛岡が首を傾げる。どういう意味なのかと。


「ワン!」


 ジャーキーが自慢したそうな吠える。鳥越と盛岡の視線を受けて、ジャーキーはオレの足元にある箱を前足で引っ張り出した。そこには火炎瓶二本。


「いつの間に」

「デパートに向かう前に、現地で作ったものです。 ちょうど周辺に点々と民家があるので、追加で作ってWZを焼けばいいでしょう」

「だが、もしも追い付いてきたりしたら――――」

「すぐには追い付いてきませんよ。 RZから距離を開けるために走らせてきたんですから」

「そう、だったな」


 盛岡は一騎の言葉を聞くまで自分が運転していたことを失念していたらしい。しばらく押し問答があったものの、火炎瓶案は採用となり、民家から油や度数の高いウイスキー、ジン、ウォッカなどが集められた。

 彼らは容器として焼酎の瓶を使ったが、これらがない家では醤油指しや、ガラスコップなどを勝手に使って急造。量を調整しながら、四十本を作り上げる。

 そして一騎たちはデパート方面へと戻りながら、ある程度のまとまったWZの場所に火炎瓶を投げ込んで焼却を行い続け、ゾンビを一ヶ所に集めたりと時間が掛かったが全滅させることに成功。


 無線を使って創太たちに安全を伝えた。余った火炎瓶の在庫を全て北見班に残し、デパート内に飾ってあった時計で午後五時半近くなのを確認。

 一騎たちは北見班をデパートに残して、それぞれのマンションへと戻っていった。

ゾンビを一ヶ所に集めるのに、時間が掛かってしまい、夕方近くになってしまいました。

ちなみに、この日の一騎と創太の夕食は、澪たちが帰ったので、白米、マッシュポテト、肉団子、トマトスープです。

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