175.エルフ、決して希望を諦めない【後編】
メデューサはいかに、チェキータたちが劣勢であるかを語る。
だがその目は……決して絶望に染まりはしない。
「むかつきますわね、その表情! まるで希望があるとでも思っているのかしら!?」
「……あたり、前よ」
ふっ……とチェキータが不敵に笑う。
「……【アタシ】たちには、希望がある」
「まだ言うの!? あの親子には邪神王も勇者の力もないのよ!?」
「……あなたは、ひとつ、勘違いをしているわ、【お母さん】」
【チェキータ】は揺るがぬ瞳で、メデューサを見やる。
「……希望とは……決して邪神や勇者の力のことじゃ、ない。それは、あの親子の、強い絆ことよ」
拍子抜けした表情で、メデューサが見下ろす。
やがて、高らかにあざ笑った。
「絆!? 絆がなんだというの!? それで最強の邪神を倒せるとでも思っているのかしら! デルフリンガー、追い詰められて頭でもおかしくなったのかしら?」
メデューサは勝利者の笑みを浮かべて言う。
「今のベリアル様は邪神と勇者、聖と邪のふたつの最強をその身に宿している! もはや誰もかなうものはいない!」
「……いいえ、予言するわ。あなたたちは負ける。だって……」
チェキータの目は、この城にいるであろう、希望を向いて輝いていた。
「だってここには、固い絆で結ばれた、最強の親子がいるのだから」
「……もう良いわ。時間の無駄ね」
メデューサが深々とため息をついて、手を振り上げる。
「さようなら、愚かなデルフリンガー」
そして、手刀を振り下ろそうとした、そのときだ。
ピタッ……!
「なっ!?」
メデューサが驚愕に目を見開く。
「ばかな!? いったい、どうして!?」
そのそばで、ふっ……と嬉しそうにチェキータが笑う。
「……遅いのよ、まったく」




