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冒険に、ついてこないでお母さん! 〜 超過保護な最強ドラゴンに育てられた息子、母親同伴で冒険者になる  作者: 茨木野
11章「最終決戦編」

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175.エルフ、決して希望を諦めない【中編】



 チェキータがメデューサに近づいてくる。

 ぐ……っと力を込めるが、立ち上がれない。


 それほどまでにダメージが深刻だった。


「無駄なのに、どうして立ち上がろうとするの?」


 メデューサは両手を広げる。


 そこに【窓】が開いた。


 窓からは、別の場所が移っている。

 どうやら遠くのものを見る千里眼のような魔法らしい。


 窓には、白髪の魔神がいた。

 その足元に、ルコたちがボロ雑巾のように転がっている。


「見て、美しいお姿でしょう? 邪神王ベリアルは、完全に復活したのよ?」


「…………」


「これで終わる。最強無比のかの邪神に、誰もかなうものはいないわ。……対抗手段は、使い物にならないしね」


 対抗手段、つまりカルマおよびリュージのことだろう。


「…………」


 ぐぐっ、とチェキータがまだ立ち上がろうとする。


 そして、メデューサを見上げる。


 メデューサはエルフの目を見て、不快そうに顔をゆがめる。


「……どうして、そんな目ができるのかしら? 理解できていないのかしらね」


 白髪女は足を振り上げて、チェキータの頭を踏み潰す。


「いい? あなたたちは負けたの? 邪神王は完全に復活したの? わたくしたちの完璧なる勝利なの? なのに、どうしてまだそんな希望に満ちた目を向けているの!?」


 メデューサは苛立っていた。


 おそらく、チェキータたちが絶望に歪むその顔を、見て楽しもうとしていたからだろう。


「……負けて、ない」


 ぐっ……とチェキータは目だけでメデューサを見上げる。


「……【アタシ】たちは、負けてない」


「ハッ! 強がりも大概にしなさい!」


 ガンッ! ガンッ! とメデューサが何度も、エルフを踏みつける。


「……アタシたちには、まだ希望がある」


 希望。

 それは、あの二人の親子のことだ。


「ははっ! あんな出来損ないどもに何を期待してるのか知らないけど、無駄よ!」


 ガンッ……! とチェキータを強く蹴り飛ばす。


「あの竜も、あの勇者もどきも! ベリアル様が至高なる存在に至るための捨て石に過ぎないのよ!」


 メデューサが邪悪なる笑みを浮かべる。


「あんな偽物どもでは、本物の強者である我々にかなうわけがない。偽物の親子。借り物の力。所詮すべては、ベリアル様に比べたらちっぽけなものなのよ!」

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