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冒険に、ついてこないでお母さん! 〜 超過保護な最強ドラゴンに育てられた息子、母親同伴で冒険者になる  作者: 茨木野
11章「最終決戦編」

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172.それぞれの戦い【中編】



 一方でルコとバブコは、ベリアルの待つであろう場所へ向かって歩いていた。


「…………」


 バブコは隣を歩く褐色幼女を見やる。


 普段ぼうっとしている彼女だが、今は緊張しているのだろう。


 なにもしゃべらず、口をきゅっと閉じている。


「ルコよ。そう緊張するでない」


 バブコは立ち止まり、ルコの手を握る。


「るぅ。きんちょう。してぬ」


 ぷるぷる、とルコが首を振る。


「いや、おぬしめっちゃ手に汗かいてるんじゃが……」


「してぬ。してぬ」


 ぷるぷるぷる、とルコが首を振る。


「嘘をつかずともよい。ベリアルの強さが桁外れであることは、わしら四天王がよく知っておるからな」


 彼我の実力差に、圧倒的なまでの差があることは先刻承知済みだ。


 それでも、ルコたちはこの道を選んだ。


「みんな。やるべこと。ある。るぅたち。おうえんする。それ。しごと」


「……そうじゃな」


 カルマは息子を助けるという使命。


 チェキータたちは世界を救い、過去との決着をつけに行く。


 それぞれが抱える者がある。


 その手助けを、ルコたちはしたいと思った。


「わしらには……何もない。かつてのわしらはただ破壊するだけのむなしい存在じゃった」


「けど。ぱぱ。かるま。あたえてくれた。たくさん。たくさん」


 カルマたちとであってから、二人の運命はガラッと変わった。


 あの親子が救ってくれた。


 最低で最悪な日々から、すくい上げてくれたのだ。


「ああ、わしらが今度は返す番だ」


 バブコはルコとともに、通路を進んでいく。


 やがて……玉座の間へとやってくる。


「ここか」


「ばぶこ。あそこ。おおきな。マユ」


 玉座の上に、真っ白なマユが、天井に張り付いている。


 その奥からベリアルの魔力を感じた。


「破壊するぞ」


「! まって!」


 そのときだ。


 ずどぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!


 天井から、何か巨大なものが落ちてきたのだ。


「ハッ……! やはり、一筋縄ではいかぬか」


「よるむんがんど。どうして……?」


 そこにいたのは、世界蛇【ヨルムンガンド】だ。


「地上にいる奴を転送したのか、あるいはあらかじめ2匹作っていたのか……。いずれにしろ、あの化け物を倒さぬ限り、ベリアルを止めることはできぬようじゃな」


 バブコは両手を広げる。


 彼女の周りに、無数の爆炎虫たちがまとわりつく。


 ルコは目を輝かせ、念動力を高める。


「ばぶこ。こわい?」


「ハッ……! まさか。そんなわけなかろう」


 バブコは敵をにらみつけて言う。


「化け物なんぞ、毎日のように見ていたわ。あの最強ドラゴンと比べたら、こんなやつ、トカゲに等しいわ!」


 だっ……! とバブコとルコは、ヨルムンガンドへ向けて駆けだしたのだった。


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