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冒険に、ついてこないでお母さん! 〜 超過保護な最強ドラゴンに育てられた息子、母親同伴で冒険者になる  作者: 茨木野
11章「最終決戦編」

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169.息子、塞ぎ込む【中編】



 さて、メデューサによって捉えられたリュージはというと。


 メデューサの結界のなかで、文字通り塞ぎ込んでいた。


 結界内部には、何もない、暗い空間がどこまでも広がっている。


 そこは生暖かい水のなかのようだ。


 しかし呼吸はできた。


「…………」


 リュージは暗い水のなか、丸くなり、目を閉じていた。


 周囲一帯に広がる闇の海。


 目を開けているのかも、閉じているのかもわからない。


 自分が生きているのか死んでいるのかも不鮮明だ。


 ……だが、もうどうでもよかった。


「……僕は、母さんを殺すために……作られた命なんだ」


 突きつけられた事実は、残酷なものだった。

 

 リュージは人造の勇者。


 カルマアビスを殺すためだけに生み出された、生物兵器。


 自分の存在意義は、最愛の女性ひとを殺すこと。


「…………」


 思い出すのは、母との思い出。


 記憶のなかの母は、いつだってリュージに笑顔を向け、あふれんばかりの愛情を注いでくれた。


 だから、本当の両親がいなくても、平気だった。


 本当の母がいないと、父がいないと泣いたことは一度だってなかった。


 だってそんなものなくても、いつだって深い深い愛情で自分を包んでくれる、カルマがいたからだ。


「……ごめんね」


 ぽた……とリュージのほおから、涙がこぼれ落ちた。


「……ごめんね、母さん。僕のこと、たくさん愛してくれたのに……僕は……母さんのこと……傷つける存在なんだ……」


 リュージを苦しめているのは、母に対する罪の意識だった。


 カルマは、自分の子供でもないリュージを、15年間、大切に大切に育ててくれた。


 そんな母に、リュージは恩返しがしたかった。


 いつかカルマに言いたかったのだ。


 育ててくれて、ありがとう。


 あなたのおかげで、僕は、こんなに立派になれましたと。


 カルマの過保護に対して、リュージは鬱陶しいと思ったことは一度もなかった。


 それどころか、申し訳なさを覚えていたくらいだ。


 母が過保護なのは、息子である自分が弱いからだ。


 いつまでも弱いままだから、母はいつまでたっても息子を安心して外に出すことができない。


 結局、リュージが弱いことが、母を過保護にさせてしまっていた。


 だから……リュージは早く、強くなりたかった。


 強くなって、大人になって、母を安心させたかった。


 自分が強く成長した姿を、カルマに見せる。


 それが何よりも、母に対する恩返しになると思ったからだ。


「なのに……ごめんね、母さん……恩を、仇で返すようなまねして……ごめんね……」

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