169.息子、塞ぎ込む【前編】
カルマが仲間たちとともに、息子の救出を決意した……一方その頃。
カミィーナ上空。
雲海の上には、1つの城があった。
それはかつて、カルマが作って放置していた天空城。
城壁からメデューサは、地上をのぞき込んでいた。
「くふっ♡ わたくしの可愛い世界蛇ちゃんは、順調に仕事をこなしているようですわね」
巨大な銀の蛇が世界をむしばんでいく。
緑は死に、海は犯され、大気は汚染されていく。
もう数時間もすれば、この星は人間の住めぬ星に代わるだろう。
「そして復活したベリアル様が地上に降臨する……くふっ♡」
メデューサはきびすを返し、城壁から降りる。
「唯一ベリアル様に対抗できる勇者リュージは、今こちらの手にある。世界の破滅はもはや秒読み……しかし」
城の中に入る。
「もし万一、あの元邪竜が息子を取り返しに来る可能性も、なくはないですわ。そこで……あなたたちの出番と言うことですわ」
城の中には、人とも思えぬ異形な姿をした化け物たちが、うめき声を出して徘徊していた。
「人造勇者の失敗作、とっておいてよかったですわ。さすがにリュージやルトラほどの力はありませんが、その数はかなりのもの。時間稼ぎにしかならないでしょうね」
しかしそれでいいのだ。
時間を稼ぐことが、このゴミたちの仕事だからである。
「本当ならルトラがいれば役に立つのですが……ま、いないものを当てにしてもしかたりませんわ。さて……」
城の最奥までやってきた。
だだっ広いホールに、玉座が一つある。
頭上には、結界に包まれたリュージが眠っていた。
メデューサは玉座に近づいて、深々と腰を下ろす。
「さ、邪竜とそのお仲間。来るならどうぞご自由に」




