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冒険に、ついてこないでお母さん! 〜 超過保護な最強ドラゴンに育てられた息子、母親同伴で冒険者になる  作者: 茨木野
11章「最終決戦編」

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162.邪竜、その身を差し出す【中編】




 突如として来訪した、魔王四天王のひとりメデューサ。


「私の力を……取り除くですって?」


 カルマは警戒しながら、メデューサを見やる。


「そう警戒しないで。わたくしは善意で、あなたたち親子を救おうとしているの」


「……どういうことですか?」


 メデューサは地上へと降り立つ。


「今、息子リュージの勇者の力によって、あなたは死の危機に瀕している。それは理解できて?」


 カルマは思い出す。

 リュージに掴んだ瞬間、凄まじい電流が走った。


 本来、傷つけることができないはずのカルマの体。


 しかしそれをリュージは破り、カルマの体に甚大なダメージを与えた。


「今、あなたは立っているのがやっとの状態よ。勇者の力はどんどんと増している。明日にでもあなたは死んでしまうでしょうね。……このままでは」


「何か打開策があるのですか?」


「ええ、もちろん。簡単なことよ。あなたの体からベリアル様の力を抜き取ればいい」


「邪神王の力を……? そんなことが可能なのです?」


 メデューサはにんまりわらってうなずく。

「ええ、簡単よ。ものの数秒で手術は終わるわ。そうすればあなたは、もう近づいても傷つくことはない」


 だったら……とカルマは二つ返事をしようとする。


「待て、カルマ」


 それを制止したのは、母マキナだった。


「メデューサ。貴様、取り出したベリアルの力、どうするつもりだ?」


 マキナは油断なく、メデューサを見やる。

「それはもちろん、本来の持ち主へと返還しますわ」


「……それはつまり、邪神王にその力を返すと言うことか?」


 邪神王ベリアル。

 かつてカルマが殺した神の名前だ。


「もちろん、あなたのおっしゃるとおりですわ、マキナ」


「……勇者の遺体を使い、この世にベリアルを復活させたのか」


 にやり、とメデューサは笑う。


「よくわかりませんが、さっさとベリアルの力を取り除いてください!」


 カルマは悲痛なる叫びをこぼす。


「私はこんな力、いりません!」


「カルマ!」


 マキナはカルマの腕を引っ張って言う。


「そんなことをしてみろ! この世界は滅ぶぞ!」


 マキナがカルマに言う。

 それは、母親が子供を叱りつけるような……まあ実際そうなのだが、そんな感じがした。


「この女はベリアルを完全復活させる気だ! 貴様から邪神の力を抜いたら最後、ベリアルはこの世に完全に姿を現す! そうしたらこの世界は破滅するぞ!」


「それがなんだというのですか!!!」


 カルマがマキナをにらみ付ける。


「りゅーくん以外、私にとってはどうでも良いことです! あの子を悲しませる、苦しませるくらいなら! こんな世界なんてどうでもいい!」


「ふざけるな!」


 バシッ……!


 マキナはカルマの頬を打つ。


「貴様……今の発言は、最低だぞ! この世界に暮らしているのは、リュージだけではない! あの子の友達も、娘も、恋人もこの世にはいるんだろう!?」


 ハッ……! とカルマは気付かされた。


 そうだ。

 この世界には、たくさんの、息子にとって大切な人たちがいるのだ。


「それにおまえも! シーラやルトラ、ルコにバブコ! 大事なものができたんじゃなかったのか!? その全てを、おまえは自分のワガママで捨てるのか!?」


「そ、それは……」


 カッとなったが、確かにその通りだ。


 邪神が復活すれば、この星に住まう、シーラたちの命はない。


「…………」


「冷静に考えるんだ。メデューサの誘いに乗ってはいけない」


「け、けど……私……私は……りゅーくんに……また……」


 と、そのときだった。


「ああもう、まどろっこしいですわねぇ。もう面倒なので、強硬手段といきましょうか」


 パチンッ! とメデューサが指を鳴らす。

「! カルマッ! 危ない!」


 マキナがドンッ……! とカルマを突き飛ばす。


 直後、地面が揺れ、地の底から何かが顔を出した。


【そいつ】は……マキナの下半身を、食いちぎったのだった。

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