142.邪竜、貧血で倒れて息子に甘える【後編】
貧血で倒れた母のために、リュージは卵がゆを作って、カルマの待つ部屋へとやってきた。
「作ってきたよー」
「待ってましたー!」
カルマがベッドで飛び跳ねる。
「あれ? ぜんぜん元気じゃん」
「あーごほごほ。うーくるしい……持病のぜんそくがぁ~……」
「はいはい、貧血で倒れたんじゃなかったっけ?」
「ああそうでした! アア貧血が……!」
カルマは手で頭を抑えてその場にしゃがみ込む。
「ご飯にするから、大人しくしようね」
「はーい!」
カルマがいそいそと座る。
「りゅーくんりゅーくんっ♡ お母さん……りゅーくんに食べさせて欲しいなぁ!」
「はいはい、わかったよ」
リュージはイスを持ってきて、カルマの寝るベッドの隣に座る。
お椀を手に持ち、スプーンで中身をすくう。
「はい、母さん。あーん」
「待って! ふーふー! ふーふー!」
リュージは苦笑して、ふー、ふー、とおかゆをさます。
「はい、あーん」
「あーんっ……! ~~~~~~! さいっこー!!!!」
カルマは太陽のように明るい笑みを浮かべる。
「りゅーくんの手料理ってだけで2兆点なのにそこにふーふーが加わることでさらに倍! 4兆点のおいしさだよぅ!」
もう貧血はすっかりよくなったようだ。
母が快復してホッとするリュージ。
「ねーねーりゅーくん。あーん♡」
「はいはい。あーん」
リュージはそうやって、母におかゆを食べさせる。
「お腹いっぱいになった?」
「りゅーくん! リンゴ! お母さんすりおろしたリンゴが食べたいなぁ……死ぬ前に!」
「はいはい。今下ろしてくるから、死なないで待っててね」
「っしゃー! 待ってりゅー!」
えへへ~♡ とカルマがうれしそうに笑う。
リュージは空いた皿を持って、ドアを開ける。
そこにはやはり、マキナがいた。
「カルマ……」
マキナが呆れたようにため息をついていた。
「リュージよ。カルマは、娘は……いつもああなのか……?」
信じられないような表情で、リュージをみて言う。
「たまにだよ、たまに」
母の名誉を守るため、ちょっぴり嘘をつくリュージ。
「やはり育て方が悪かったせいで……くっ!」
「いや……マキナは関係ないかなっておもうよ」
リュージを拾ってああなったとチェキータも言っていたし、育ての親は関係ないと思われた。
1階に降りて、リュージはリンゴを、すりおろし器にかける。
マキナはその後からジッと様子をうかがっていた。
「……母思いの、良い息子だな、リュージは」
マキナが淡く微笑んで言う。
「そうかな?」
「ああ。体調不良の母のために、嫌な顔せず看病する。立派なことだと思うぞ」
「ありがとう。まあ母さん仮病なんだけどね……」
「言うな……悲しくなる……」
リュージはマキナとともに、リンゴを持ってカルマの元へ行く。
ふと、思いついた。
「ねえマキナ。これ、母さんにもっていってあげて」
「……………………」
マキナが、擦りリンゴの入った器を凝視する。
「僕が持って行くより、マキナがもっていったほうが喜ぶよ」
「……いいや」
マキナがふるふると首を振る。
「リュージ、おまえがもっていったほうがもっと喜ぶ。わがはいは……ダメだよ」
諦めたような表情で、マキナが力なく言う。
「そんな……大丈夫だって。母さんきっと、心の中ではマキナのこと……」
「いいんだ、リュージ。ありがとう、優しい竜の子よ」
それだけ言うと、マキナはリュージの元を去った。
その背中は……どこまでも、さみしそうだった。
「……やっぱり、ふたりがこのままじゃ、いけないよ。なんとか……したいな」
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