51.番外編_克也の高校入学祝い
克也は高校の入学祝いという名目で仕事帰りの父親とドレスコードがあるレストランで待ち合わせていた。
まだ父親は来ていないようでいつも友達と行くファミレスとの雰囲気の違いに何とも落ち着かず早く馬鹿親父が来ないかと手持ち無沙汰にスマホをいじっているとやっと人目を引く美女を連れた親父が現れた。
「すまん遅くなった克也。」
親父は黒髪でボンキュッボンの美女を先に座らせるとその隣に腰を降ろした。
おいおい。
さすがに二人っきりだと気まずいとか思ってたけど何この美女。
確かに親父は息子の俺から見ても頭脳明晰で顔いい金ありってそこそこお買い得だけど息子の入学祝いに義母紹介とかありえないだろ。
かなり引いている息子の様子に全く気付かない二人はそのまま克也にちょっとだけ会話を振りながらもほぼ二人の世界を展開したまま食事を終えた。
帰りは流石に美女を迎えに寄越したタクシーに乗せると別々に帰宅した。
自宅に帰る途中親父から先程の女性をどう思うかと担当直入に聞かれた。
「どうって俺を生んだお袋よりかなりの美女だと思うけどそれ以外はあの短い時間じゃ何とも言えないよ。」
「そうだなお前を生んだカホよりはきれいだな。」
おいおい。
なんで息子にそんなことを聞く。
「お前が反対しないのであれば結婚しようと思ってる。」
親父はそれだけ言うと黙り込んでしまった。
なんとも気まずい雰囲気の中帰宅してその日はそれ以上その話はしなかった。
親父は翌朝何ごともなく家を出て出勤して行った。
克也はまだ高校入学前だったので中学時代の友達と都内で待ち合わせ数時間遊んで昼過ぎには帰ろうとすると駅に行く途中に雨に降られた。
めんどくさいかった克也は傘もささずに駅に向かって歩いていたためびしょ濡れだった。
そのびしょ濡れの克也に誰かが傘をさしかけて声を掛けて来た。
「克也くん・・・克也君じゃない?」
克也は見慣れない女性の声に足を止めた。
そこには某高級レストランで親父と食事をした美女が立っていた。
「あっ・・・こんにちは?」
「なんで疑問形のなのよ。それよりびしょ濡れよ。私のマンションこの近くなの寄って行かない?」
「いや・・・でも。」
遠慮する克也に美女は腕をとると巨乳を押し付けて来た。
思わず赤面しながら克也は美女に言われるままマンションについていった。
そこは結構セキュリティがしっかりした高級マンションだった。
美女はそのままずぶ濡れの克也を連れホールを抜けるとバックから出したカードキーを差し込んで彼を美女の部屋に案内してくれた。
「さあ上がってそこがシャワー室だから。」
美女はそういうとびしょ濡れの克也をシャワー室に放り込んだ。
克也は戸惑いながらも濡れた服を脱ぐと温かいシャワーを浴びる為そのまま浴室に入った。
シャワーを浴び置かれていたバスタオルで体を拭いて出てくるとそこには男物のルームウェアが置かれていた。
たぶん親父のだろう。
なんとも複雑な気分でそれを拾い上げると裸で外に出るわけにもいかずそれに着替えて浴室を出た。
流石にこのままで帰る訳に行かず自分が着て来た洋服を返してもらおうとリビングに行くとなんでかかなり顕わな恰好をした美女がグラスを片手に窓外を見ていた。
「食事ならそこにあるから勝手につまんで頂戴。」
なんとも返答しづらいことを言われ洋服の事を言い出せずに仕方なくソファーに座ってテーブルに置かれている軽食をつまんだ。
「あら、ごめん。良かったら飲む。」
そう美女はいうとお酒を勧めて来た。
「いや、俺未成年ですから。」
「あら、そうだったわね。」
美女は妖艶に微笑むと窓外を離れて軽食をつまんでいた克也の横に座った。
「どう、美味しい?」
「不味くはないですけど。」
「そうね。不味くはないわ。」
何を考えているのか美女は克也にしな垂れかかって来た。
香水の香りがふんわりと漂ってくる。
それに思考を盗られているうちに美女の手が克也の顔に伸びキスされていた。
思わず開いた口に舌が入って来る。
呆気にとられているうちに上に乗られ気づいたら二人とも裸でベッドに寝ていた。
克也は我に返ると慌てて服を着て彼女のマンションを飛び出した。
どういうわけかあれから親父はあの美女の話をしてこなかった。
理由は分からないが克也としては気まずかったのでホッとした。
「父さん、父さん起きて。俺もう行くよ。」
克也は体を揺さぶられベッドから起き上がった。
ベットの傍には王都の近衛師団の入団試験に最年少で受かった黒髪でなんでか克也の実父によく似た息子がいた。
「ああ、もうそんな時間か。」
「母さんが起こして来いっていうから起こしたんだよ。」
「ああ、そうだな。悪かった。」
ふと窓外を見ると庭にこちらの世界でもよく見かける”バラの花”が咲いていた。
どうやら実父に似た息子の声とバラの香りで昔のことを思い出したようだ。
何とも変な気分を振り払って起き上がるといい匂いが漂って来た。
「父さん。食べたらすぐに出発だからね。」
「ああ、わかってる。」
息子のことを実父に知らせたいなと感傷的になった克也は息子の黒髪をぐしゃぐしゃに撫でまわしてから食堂に向かった。
「父さん。折角整えたのに酷い。」
ぶつくさ文句を言うその口調はなんでか母親である美野里にそっくりでついつい笑ってしまい盛大に息子に拗ねられた。
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