04.再会
裕也は激痛で目を覚ました。
目を開けると石造りの天井が見えた。
背中が焼けるように痛い。
涙を堪えるように視線をめぐらすと自分の手を握っている人物がいることに気がついた。
視線を手に向けるとそこには涙目で裕也の手を握る 朱里がいた。
「朱里?」
「裕也クーン。よ・・・よかった。気がついた。」
朱里は目を開けた裕也に抱き付いた。
背中の傷がその衝撃で引き攣れて痛い。
思わず呻き声をあげると朱里が慌てて裕也から離れた。
「ごめんなさい、裕也くん。痛かった?」
「いや、大丈夫だ。」
本当は大丈夫じゃないが涙目の朱里にそう聞かれたら正直に言えるわけはない。
「だから大丈夫だと言っただろ朱里。」
そこに中二病臭い格好をした彫の深い顔立ちできれいな金髪の少年が朱里の背後から現れた。
誰だ、こいつ?
「シャルル様!なんでここに?」
「アカリがここにいても何もできない。ほら行くぞ。」
金髪の少年が朱里の手を取ってベッド傍から立ち上がらせようとした。
「いやです。裕也くんの所にいます。」
朱里は手を取られてもそれを頑なに拒絶した。
「アカリ!わがままを言うんじゃない。」
「いやぁ!」
「朱里!」
朱里の手を強引に掴んで立ち上がらせようとする少年に思わず起き上がった裕也は動こうとしてさらに呻き声をあげた。
「ちゃっとまだ動かないで!」
そこに真っ黒い魔女服のようなものを着た黒髪の女が現れた。
「シータさん!」
「シータ。」
朱里はビックリした顔で王子は嫌そうな顔でその女を見ていた。
女は黒い縁のメガネをクイッと上げると二人を睨み付けた。
「まだ治療が終わっていないのになんで患者を興奮させているんですか。ここは治療棟です。静かに出来ないんなら出て行ってください。」
「ごめんなさい。」
朱里は俯いて謝っている。
少年は何も言わずに彼女を睨み付けた。
そんな少年を女は綺麗に無視すると裕也のベッド傍にしゃがむと痛みで固まっている彼に近づいた。
そしてそのまま彼の背中に手を当てる目を閉じた。
手を背中に当てられた痛みに一瞬、飛び跳ねそうになるがすぐにその痛みが消えていく。
驚愕で声も出せないでいると背中が熱くなってくると共に次第に眠気が襲ってきた。
そのまま頽れるようにベッドに背中が沈んだ。
そこから裕也の意識は途切れた。
「明日まで目覚めないわ。それと目を覚ませばもう大丈夫よ。」
彼女はそういうとすぐに他の患者を見るために立ち去っていった。
「ありがとう、シータさん。」
朱里は涙目で彼女の背にお礼を言った。
「どういたしまして。」
シータは振り返って朱里にニッコリ笑うと隣でぶつくさ言っている少年に笑って言葉を付け加えた。
「キョウドウ様が先程から王子様をお探ししていたようですので念話を送っておきました。」
「おい!」
王子と呼ばれた少年はシータから発せられた言葉にさらに彼女を睨み付けた。
それをサラリとかわすと彼女は次の患者の治療のために二人の前から去っていった。
「なんなんだあの女は!」
王子は足早く去って行く女の背に悪態を吐いた。
その王子の様子を朱里はビックリして見つめ、それと同時に尊敬の眼差しで彼女の背を見送った。
朱里はあんな人に自分もなりたいとそう強く願った。




