23.悪夢
美野里は押し込まれたお風呂場で克也が貸してくれた上着と何とか無事だったズボンを脱ぐと石鹸を取り出した。
何度も泡立てては体を洗い熱いシャワーを浴びる。
そんなことを何度もしているうちにお湯の出し過ぎでお湯が水になってしまった。
何をやっているのよ。
美野里は我に返るとシャワーの栓を締め浴室を出ると新しい洋服を着て廊下に出た。
廊下に出るとそこには甘い匂いが漂っていた。
思わずその甘い匂いに引かれダイニングの扉を開けると克也が甘いココアとサンドイッチを用意して彼女を待っていてくれた。
「いいから食べろ。」
美野里は彼に言われるまま甘いココアとサンドイッチを口に入れた。
いつもならもっと食べたいと思うはずなのにその時はサンドイッチを食べた途端なんでか眠くなってしまい気がついたらそこで意識がなくなっていた。
それ以降は意識がふわふわとさっき砦で起こった彼らとのやり取りを繰り返し夢に見た。
ちょうど夢は全員の治療を終え美野里がそこを出ようと立ち上がるところから始まる。
”黒の書”で創られた空間で魔力を多量に使ったせいか美野里は少しフラッとしてその場に倒れそうになってしまった。
そこにいつの間にか彼女の傍に来ていた若い兵士に声を掛けられ、気がつくとあの狭い部屋にあるベッドの上にいた。
美野里は慌ててベッドから起き上がろうとするがそこにはすでに最初に彼女を連れて来た若い兵士以外にも数人の男たちがいて、彼らにベッドに抑えつけられ着ていたシャツを毟り取られた。
「や・・・やめなさい。」
美野里は強く言おうとしたが思わず震えた声を出してしまい逆に彼らを煽ってしまった。
彼らは美野里が怯えているのに気がつくと余計乱暴になって今度は彼女の小さな胸に手を伸ばしてきた。
美野里は冷静になって魔力調整をして魔法で彼らを吹っ飛ばそうとするがその時は何でかまったく魔力が練れなかった。
魔力が練れなくてさらに焦ってしまい美野里は拘束を外そうと力いっぱい暴れるがそれもまた彼らの欲情を煽ってしまいさらに拘束が強まってしまった。
今度は相手に魔力をぶつけるのではなく前に倣った護身術で撃退しようとして身体強化魔法を自分にかけようとしたが異性に体を触られているせいでやはりそれも出来なかった。
あまりのことにパニックなって何度も情けない声で悲鳴をあげるとそこに克也が駆けつけてくれた。
思わず涙目で彼を見るとすぐに美野里を拘束していた男たちを殴りつけ彼女をその部屋から助け出してくれた。
美野里は部屋から連れ出され安心した瞬間、廊下で立っていられなくなって床に頽れた。
毛布を握りしめる手も震え始めていた。
そんな美野里を見て克也は自分が着ていた上着を脱いで彼女にそれを貸すとすぐに背負ってくれた。
美野里は克也に背負われて移動する間に何だか胸がキュンキュンしてきた。
これが小説なんかで言われるつり橋効果いやこの場合はもう恋に落ちるというやつだろうか。
何とも言えない気持ちが湧き上がっていた。
だがそんな気持ちも克也から離れるとグラついてさっき彼らにされた時の恐怖が浮かんでしまう。
だからシェルに言われ克也から離れて空間魔法で造られた空間に入った瞬間美野里は強姦されそうになった時の恐怖心が込み上げてしまったのだ。
そこにタイミング良く克也が後から入って来たので美野里は彼に抱き付いて泣いてしまった。
克也はその時も困ったような表情ながら美野里の背を労わるように何度も撫でてくれた。
その後も美野里は克也から離れると不安で泣き彼に慰められて目が覚める。
その日はそんな夜を美野里は翌朝まで続けた。
美野里がやっと何も考えずに深い眠りについたのは朝日が昇って周囲が白々と明けてくる朝方近くだった。




