同盟 3
それからしばらく、王都ではセイランとフェリアが同盟を結んだという話題でもちきりだった。
エルネストたちも、休憩時間はもっぱらそのことばかりしゃべっていた。
「しかし、まさか北の国が女王様に反乱を起こすなんてな」
休憩時間、エルネストたち同期組は、いつもの東屋で固まって話していた。
「なんでも北の国ノーゼスの聖王が、魔物たちと組んで女王様を襲ったらしいですね。これはありえないことです」
エルネストの言葉にリュードも渋い顔つきで言った。
「本当に信じられないわ。北の国の聖王は強く賢く四大聖王のなかでも一番との噂もあった人物よ。そんな人が女王様を襲って世界を未曾有の混乱に陥れようと画策するなんて、本当にびっくりよ!」
アーニャもやや興奮気味にそう捲し立てる。
「しかし、二つの国が協力体制を取って北と立ち向かうことになったんだ。きっと大丈夫さ。それに、東の国ハザンにも今同じように同盟の使者が発っているらしい。三国が協力して立ち向かうことになれば、いくら魔物たちを率いた北の国でも、打ち勝つことができるだろう。希望は見えているさ」
「だけど、相手は光の宝玉を手にしているのよ。そう簡単にはいかないと思うわ」
「そうですね。女王様のお力に頼ることもできず、その源たる宝玉は敵の手のうちにある。これは非常に厳しい状況です。さらには魔物が味方についているとなれば、我々が束でかかってもどこまで通用するか……」
アーニャとリュードが弱気を見せたことに、エルネストは憤慨するように顔を怒らせた。
「二人とも、なにを弱気なことを。おれたちは、セイラン国が誇る名高きユクサール天馬騎士団。その一員でもあるおれたちが戦う前からそんなことを言っていては勝てるものも勝てなくなる。おれたちには赤き旋風、エレノア団長がついているんだ! あの人だったら勝てる! どんな苦難にぶちあたっても、きっと
前を切り開いてくれる! そうだろう?」
エルネストの熱気のこもった言葉に、アーニャとリュードも顔を輝かせた。
「そうよね。エレノア団長が負けるはずないものね。きっと勝てる。あたしもそう思うわ」
「そうですね。我がユクサール天馬騎士団の強さは、そんじょそこらのものとは違います。北の国の軍や魔物たちなどに負けるわけがありません。絶対に」
「そうだ。おれたちユクサール天馬騎士団に怖いものなどない!」
エルネストはそう言うと、その場で立ちあがり、手の甲を上に向けたまま自分の手を目の前に差し出した。その意図を察した他の二人も、すっとその手にそれぞれの手を乗せていった。
「頑張ろうぜ! どんな苦難が待ち受けていようとも」
「ええ。頑張りましょう!」
「はい! もちろん全力を尽くします」
三人は団結し、笑顔で互いを見つめ合った。
エルネストは胸が熱くなり、不謹慎とは思いつつもわくわくとしていた。
世界で起きている異変の原因がわかり、その目標の敵がはっきりとした。
そして、今二つの国が手を取り合い、協力体制が生まれたのだ。
希望は見えた。
世界を救う道筋はそこにある。
(やってやる。おれも世界を救うヒーローになるんだ)
エルネストはセレイアにたどり着いたとされる少年のように、自分も活躍できる日がくるかもしれないと、そんなことを思っていた。ユクサール天馬騎士団の一員として、世界を崩壊の危機から救うために戦う。それが果たされれば、どれほど誇らしいだろう。どれほど嬉しいだろう。
あこがれの騎士に自分も一歩近づけるかもしれない。
エルネストはそんなことを思っていたのだった。




