宴 3
「ところでマリクとミネルバは、聖王様から遣わされた魔法使いだったんだね。早く言ってくれればよかったのに」
戦いが終わって三日が過ぎ、市街ではまだまだ戦いの傷痕を片付けている最中ではあったが、少しずつ以前の落ち着きや活気が取り戻されてきていた。ユヒトたちは王都にある食堂で休憩を取りながら、それぞれこのあとの身支度を調えていた。今はギムレとエディールはそれぞれ買いものや用事があるとのことで別行動を取っている。
「馬鹿かお前。それは事情が明らかになった今だから言えること。俺たちはお前たちの素行調査や風評を事前に調べて聖王様にお知らせするという任務を秘密裏に行っていたんだ。それを本人たちに向かって堂々と話すわけがないだろうが」
マリクの言い方は相変わらず遠慮がないが、そこには以前にはなかった親密さも含まれていた。
「でも、私たちがシャドーの行方を追っていたことは嘘ではありません。今回あなたたちとの旅の末に、私たちの師の仇が討てたことは本当によかったです。けれど、町に被害が出てしまったことはやはり心苦しいですわね」
「そうだね。でも、きっとこの町の人たちならこれから立ち直って頑張っていってくれると思う。なんていったって、このエスティーアは水の竜に護られているんだし」
ユヒトの言うとおり、ここまで来る間にも、被害に遭った町の人たちは片付け作業やいろいろに追われている様子ではあったものの、そこにはどこか希望が見えていた。それはもちろんシャドーとの戦いの勝利が大きな要因ではあっただろうが、元からある人々の強さもあったのに違いない。
水の竜に護られしこの地に生きる住民たち。信仰していたその竜の姿を初めて目の当たりにした彼らは、今後さらに信仰心を強くしていくことだろう。
「今日は夜に王宮で戦いの勝利を祝う晩餐会が開かれるんだってな! オレたちも招かれてるみたいだけど、なんかオシャレとかいうのをしたほうがいいのかな?」
「そうですね。たぶん王宮で衣装とかは貸していただけると思いますので、その点については心配いらないと思いますけど」
「え!? このままじゃ駄目なの?」
「当たり前だ。聖王様が主催される晩餐会だぞ。みなそれなりに着飾っていくのが礼儀というものだ。少しはものを考えろ」
驚きの声を発するユヒトに、冷たいまなざしを送るマリクであった。




