表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そして世界に竜はめぐる  作者: 美汐
第六章 聖王シューミラ
141/157

聖王シューミラ 4

 奥の扉を開き、中に身を躍らせたユヒトたちは、そこにあった光景に唖然と目を丸くした。


「聖王様!」


 エディールが叫んだ先に、その人物はいた。足元まで伸びた美しい黄金の髪。その美貌はこの世のものとも思えぬほど。そしてその額には、青く光る竜玉が光っていた。しかし、その姿は想像していたものとは違って、ぐったりとうなだれ、生気がない様子である。その原因は、すぐに見て取れた。


「シャドー!」


 マリクが叫んだ。ミネルバも彼の隣で身構える。

 聖王シューミラの背後に、黒い影が立っていた。不気味で恐ろしい得体の知れない魔物。ユヒトはぞわぞわと背筋に沿って産毛が逆立ち、ぷつぷつと鳥肌が全身に広がっていくのを感じていた。


「貴様! 許さん!」


 マリクが杖を振り上げようとするが、ミネルバが慌てて制止する。


「駄目よ! このまま攻撃したら、シューミラ様までお怪我を負うことになるわ」


「だが、このままでは……!」


 そのとき、うなだれていたシューミラが顔をあげ、二人の双子のエルフに視線を合わせた。


「構わぬ。妾には竜玉の力がある。多少の攻撃などでは死にはせぬ。それより、シャドーを……うぐ……!」


 シューミラの言葉を遮るように、シャドーは黒い障気で彼女の体を覆い、身動きを奪った。と、次の瞬間、シャドーは瞬時にユヒトたちの横を通り過ぎ、シューミラの体もろとも謁見の間から向こうへと去っていった。


「いつの間に!」


「速い!」


 目まぐるしく移動していくシャドーの姿を見失わぬよう、ユヒトたちは必死に追いかけた。周囲の兵士たちも、ようやく大変な事態になっていることを理解した様子で、蜂の巣をつついたような騒ぎとなっている。


「とにかくシャドーを追いかけろ! 逃がすな!」


 エディールが走っていると、途中でどこから湧いてきたのか、その辺りから次々に魔物が姿を現した。


「なんだ、こいつら! どっから出てきやがった!」


「くっ! シャドーが手下を連れ込んでいたんだな。面倒な!」


 エディールとギムレが武器を振り回して新手の敵を薙ぎ払う。マリクとミネルバも魔法で応戦を始めた。


「ユヒト! お前は先にシャドーを追ってろ! お前なら追いつけるはずだ!」


「は、はい!」


 ギムレに言われ、ユヒトはその場を他の仲間に任せると、シャドーの後を追った。足元から風を生み出し、目にも止まらぬ速さで駆け出す。

 少年が向かった方向からは、水の流れる音が聞こえていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ