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第七十四話「集まった仲間」

 テンツユの活躍のお陰で、銀スライムを倒すことができた。

 気絶した銀スライムをテンツユが運んできて、俺がトドメをさす。

 その場に、小さな魔石と銀の塊、そしてレアメダルが残った。


【ジョージのレベルが上がった】

【迷宮師(神)スキル:迷宮管理Ⅳが迷宮管理Ⅴにスキルアップした】


 お、迷宮管理がスキルアップした。

 とりあえず、ステータスを確認してみる。


……………………………………………………

名前:ジョージ

種族:ヒューム

職業:迷宮師(神)Lv30

HP:152/152

MP:72/97

物攻:81

物防:78

魔攻:132

魔防:145

速度:65

幸運:15

装備:厚手の服 厚手の靴 手斧

スキル:迷宮管理Ⅴ 使い魔召喚 魔石変換 石魔法

取得済み称号:魔物使いの卵

天恵:職業【迷宮師(神)】解放

……………………………………………………


 レベルアップの速度は緩やかになったが、着実に成長している。

 ほとんど変化の無かった幸運値も成長していた。

 さて、迷宮管理で何が追加されたのか。


 管理メニューを確認してみる。

 変化があったのは、迷宮管理だった。

 これまでは設備設置だけしかできなかったが、魔物召喚が追加されている。

 魔物召喚を調べてみる。


……………………………………………………

歩きキノコ:必要ポイント1ポイント

青スライム:必要ポイント1ポイント

スロータートル:必要ポイント1ポイント

ゴブリン:必要ポイント1ポイント

……………………………………………………


 召喚できるのは四種類だ。

 試しにこの部屋に安全な歩きキノコを召喚してみる。

 テンツユと違い、野生の歩きキノコと同じ外見だった。


「これはご主人様が召喚なさったのですか?」

「ああ。ただ俺の使い魔って感じじゃないな。どうも使い魔になった魔物と同じ種類の魔物を召喚できるみたいだ」


 試しにじっと止まっているように命令しても歩きキノコは明後日の方向に歩きだした。

 放っておいても面倒なので、フロンの狐火でこんがり焼いてもらい、ドロップアイテムを確認した。


「ん? 食用キノコを落としたけれど、魔石を落とさないのか」

「そのようですね……あと、私のレベルが上がりました」


 検証結果。

・召喚した魔物は迷宮に現れる魔物と変わらない。

・迷宮の中ならどこにでも召喚できる。

・魔石は落とさないが、他のドロップアイテムと経験値は入手できる。


 こんなところか。

 レアな魔物が召喚できるようになれば、ドロップアイテム集めに役立つかもしれないが、いまのところ使い道は少ない。


 今のところ役に立ちそうにないので封印でいいな。


 地上に戻り、歓迎会の準備をする。

 料理は焼いた食用キノコ、サンダーが捕まえた鳥の丸焼き、ブルーツだ。

 そして、魔石でパン、いなり寿司。


 サンダーがどこからか運んできた平たい石を広場に置き、俺たちが料理を並べる。


「お、なんだこの樽。ジョージが言ってた酒か?」

「ああ、みんなが揃ったら飲もうぜ」


 サンダーは早速俺の用意した酒に興味津々のようだ。

 樽といっても小さな樽で、中身はビールだ。

 さっき交換したばかりなので、キンキンに冷えている。

 ただし、ピッチャー程度の量しかないのに、15MPと意外とお高い。

 ワインも用意しようとしたが、断念せざるを得なかった。

 ビールが映えるジョッキもない。

 飲み会といえばビールという勝手なイメージで用意したのは失敗だったかな?


   ※※※


「なんだこれは!? こんなうまいエール飲んだことねぇぞ」

「こりゃうまい。エールとは別の酒だな」

「新種のエールですか……製法特許を販売すればかなりの値になりそうですね」


 サンダーとガモン爺はビールに夢中で、シャルさんはその製法が気になっているようだ。

 どうやら俺の心配は杞憂だったらしい。

 ガラスのジョッキがなくてもビールのうまさは変わらないということだ。


「喜んでもらえて嬉しいです」


 俺はそう言った。ちなみに、俺とフロンのビールは少し水で薄めている。

 フロンはお酒が少し苦手らしく、俺もホストが酔ったらいけないという理由で。

 ビールの水割りはあまり美味しくないが、横目で見る少し頬を赤らめ、目が虚ろになっているフロンを見るととても可愛らしく、それだけで幸せだ。

 あ、この世界では十五歳で成人、さらに南大陸では飲酒の年齢制限そのものがないらしいのでフロンがお酒を飲んでも問題ない……問題ないのだが――


「うーん、美味しい」


 見た目小学生のシャルさんがビールを美味しそうに飲むのはどうも犯罪臭がする。

 ちなみに、シャルさんの夫のライナはここにはいない。

「海が荒れる」と言い残して俺が迷宮に潜っている間に船を出してしまったらしい。

 シャルさんが言うには、ライナは気候を読む力があるらしく、近々嵐が来るそうなので、嵐に遭遇する前に急いで船を出したらしい。

 

「こちらの料理はいなり寿司という俺の故郷の料理です。どうぞ召し上がってください」


 使い魔たち使い魔も同席して、テンツユとマシュマロは干し草、うどんは海草、ゴーヤは食用キノコを食べている。


「あぁ、坊主。儂たちに丁寧な言葉遣いをしているが、やめてくれんか?」

「え?」

「ここいにる儂もシャルの嬢ちゃんも、坊主を領事と認め、ここで坊主を手助けするためにやってきた。坊主の手足とまでは卑下するつもりはないが、しかし坊主を上の立場の人間と認めておる。しかし、これから島に来る人間が全員そうだとは限らない。そんな中、儂やサンダーがガサツな口調で話し、坊主だけが丁寧に話していたら、領事の立場が低いのではないかと勘違いする輩が現れるかもしれん」


 ガモン爺の言いたいことはわかる。


「それなら、ガモンさんやサンダーさんが丁寧な口調で接すればいいのでは?」


 シャルが俺も抱いた疑問を言った。

 ただ、その疑問を口に出さなかったのには理由がある。


「嫌だ、面倒だ」

「儂も丁寧な言葉遣いは尻の穴が痒くなる」


 だよな。ガモン爺は会って間もないからわからないが、サンダーが丁寧に話すところなんて想像できない。まぁ、こいつはこんな姿でも王族だから、こっちが丁寧に接する分なら本来は構わないはずなのだが、しかし一見すると王族に見えないところが問題なんだよな。


「わかったよ。じゃあ、これからはガモンさんにもサンダーと同じようにフランクに接することにするよ。ガモン爺って呼んでいいか?」

「構わん。シャルの嬢ちゃんはそのままか?」

「ああ。シャルさんは丁寧な言葉遣いだから問題ないよ」


 というより、シャル相手にフランクに接してしまえば、いつか子供扱いしてしまいそうで怖い。

 常に相手は年上の女性だという意識を持っておかないと。


「私も構いません。商売の話が主になりますから、乱雑な対応をされたら困りますし。ところで、ジョージ様、大丈夫ですか?」

「大丈夫ってなにが?」

「フロンさん、そろそろ危ないですよ」


 え!?

 横を向くと、フロンの目は数ミリしか開いていない状態で、座っていられるのが不思議なくらい体が揺れている。


「わぁ、フロン。こんなところで寝るな! みんな、すまない。フロンをベッドに寝かせてくる」


 俺は倒れそうになるフロンを抱きかかえ、ゴーヤにサポートを頼んで運び、迷宮の中のベッドに寝かせた。

 まさかここまでお酒に弱かったなんて。

 まぁ、寝てしまうだけで変な酔い方をしないだけまだマシか。

 さすがに歓迎会で客人を放置するわけにはいかないので、地上に戻ろうとした。

 その時だ。


「……ご主人様、頑張りましょうね」


 振り返っても、フロンはまだ眠っていた。

 どうやら寝言のようだ。

 その言葉を聞いて、俺は微笑んだ。

 

 サンダー、ガモン爺、シャルとライナの夫婦。

 それに使い魔たちとケルとベル。

 俺を支えてくれる仲間がこんなにも増えたんだ。

 ふたりだけで迷宮にいた頃とは大きく変わった。


「ああ、頑張ろうな」


 俺は彼女の声援に応えるように頷くと、先を行くゴーヤに続いて階段を上がっていった。

第一巻、12/14発売ですが、書店様によっては早く店に出回るそうです。

電子書籍版も同時発売です。

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[一言] 従魔2匹を忘れないで(´TωT`) 託されたんだから。
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