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第26話 ふぁーすときす?

「ん・・・7時か・・・」

 

 空腹感を忘れるために寝続け、何時間か経ち俺はトイレに行きたくなって起きた

 窓から見える外は雨が降っていて、夜なので当り前なのだが真っ暗だ

 

 俺は重い体を引きずりながらトイレに向かい、用が終わると再びソファのところに寝転び夢の世界に行く

 

 

 

「ん・・・んん・・・ん?」

 

 夢の世界に行ってから何時間経ったかわからないが目を開けるとデコに濡れタオルが置かれていた

 もしかすると寝ボケながら自分で置いたのかもしれないと思って体を起こすために体を横に向けると、そこには日本にいるはずのないチィ姉が座ってコクコクと頭を揺らしながら寝ている

 

「え?あれ・・・なんで?」

 

 起きたばかりと風邪で頭がまったく働かず、なんでチィ姉がここにいるのか分からない

 ただ分かるのは俺の横でソファにもたれて座り、頭をコクコクを揺らしながら寝ているチィ姉がそこにいるということだけ


「ん・・・」

「・・・っくしゅん!!!」

「はにゃ!」

「あ・・・」


 盛大なクシャミをしたせいで寝ていたチィ姉がビクっと揺れて、何が起きたか分からないのかキョロキョロ辺りを見回して、俺と目が合う

 

「・・・・」

「・・・・」

「・・・おはよう」

「おはよう・・・・・あ、体温計もってくるね」

 

 チィ姉は慌てて冷蔵庫の横に置いてある箱の中から体温計を持ってきた

 それを俺に渡してきて俺は素直に受け取り脇のところに入れる

 体温計が鳴るまで俺とチィ姉の間には微妙な空気が流れていて無言で鳴るのを待つ

 

 そして、体温計が鳴って数字を見ると38.5℃でチィ姉に渡すと数字を見てビックリしたのか急にデコを合わせてきた

 俺は急にされて頭が付いて来ず、されたままの状態でボーっと目の前にあるチィ姉の顔を見る

 

「・・・何か食べれる?」

「たぶん」

「わかった、それじゃちょっと待っててね」

 

 チィ姉はそう言うとキッチンの方に言って何が作り始めた

 俺はその光景をボーっと見ていて数十分経つと小さな鍋と俺の茶碗を持ってきた

 鍋の中には野菜が細かく切られているお粥で俺の茶碗に入れていく

 

「熱いから気を付けてね」

「うん」

 

 2日ぶりに口にした料理は、この一週間近く昼・晩と食べてきたコンビニ弁当とは比べ物にならないぐらいおいしいもので、普段食べていた物がこんなにおいしいものだとは思わなかった

 チィ姉はお粥を食べ終わるまで黙って俺の方を見ていて、目が合うと逃げるようにTVの方を見るが少し経つとまた俺の方を見てきた

 

 昨日から何も食べてないのに、半分まで食べるともう食べられなくなってしまった

 

「ごめんチィ姉、そこに置いといて。また食べるから・・・ゲホッゲホッ!」

「・・・はい、風邪薬だよ」

「ありがとう」

 

 俺が初日に探して見つからなかった救急箱の中から出てきた風邪薬で、俺が寝ている間に買ってきたのか水も一緒に差し出された

 俺は渡された薬を飲み、そしてダルい体を再び寝転ばす

 すると、チィ姉が俺に背中を向けながら小さな声で話し始めた

 

「ごめんね・・・私のせいで風邪引いちゃったんだよね」

「・・・・」

「ご飯とかコンビニ弁当とかで済ませてるの知ってたし、それに一昨日の雨降ってた日も私がお風呂長く入ってたから・・・」

「・・・・」

「ごめんね・・・ダメなお姉ちゃんだね・・・ひっく・・・」

 

 背中を揺らしているので泣いているのはわかるのだが、何故か掛ける言葉が出てこない

 

「ひっく・・・ホントにダメなお姉ちゃんだよ・・・」

 

 今見ている背中は今まで見てきた姉の背中でも才色兼備な完璧超人 星井千夏の背中でも無く、ただの17歳の女の子の小さな背中だった

 今までチィ姉のことをなんでもできて、顔もTVで見る可愛い系アイドル以上で、超が付くほどのブラコンな姉だと思っていたが、今俺の前にいるチィ姉はそこらへんにどこでもいるただの女の子だ

 俺はそんな風なこと考えながらチィ姉の背中を見ていて、なぜか後ろから抱きしめてしまった

 チィ姉は急に俺が後ろから抱きついたことにビックリしているのか、さっきまで鼻をすすったりしていたのに今は固まってしまい、俺もなんで抱きついたのか分からないので微妙な空気が流れる

 

「・・・あ・・・あのさ、久しぶりに話したと思えばいきなり泣き出すし自分責めまくってるし、俺反応に困る」

「ご、ごめん・・・」

「それに俺風邪引いてんの、そんな人にあんな話聞かすのはどうかと思うよ」

「ごめん・・・」

「あと・・・」

「ま、まだあるの?ふーちゃん」

「はぁ・・・やっと言ってくれた」

「え?・・・あっ・・・」

 

 チィ姉は気がついたのか顔を赤くして俯いたが、気にせず俺は続ける

 

「あのさ、俺正直に言うと結構辛かったんだよね、この1週間。食事面とか金銭面とか、もちろん精神面でも。なんかチィ姉は俺を避けてるみたいだったし」

「・・・・」

「母さんにはなんかチィ姉に謝るな、話しかけるなとか脅されたからラジオは悠斗に任せちゃったし、あの悠斗の表情を見る限りじゃたぶんチィ姉も行ってなかったんでしょ?」

「・・・うん」

「俺ら姉弟喧嘩は色んな人に迷惑掛かってるんだよ、もちろん俺にも原因あるっぽいから人のこと言えないんだけど・・・」

「・・・・」

「だから、もう喧嘩はお終い。んで、これはチィ姉を怒らせたお詫び、ごめんねチィ姉」

 

 俺は謝ってチィ姉の顔を横に向かせ、デコにキスをする

 チィ姉は俺の予想外な行動に固まって、口をパクパクしている

 そんな顔を見ながら、ダルい体をチィ姉から離してソファに寝転ばす

 

「それじゃ俺寝るから」

 

 あまり眠たくなかったが、実の姉じゃないとはいえ姉同然のチィ姉に自分から口じゃないけどキスしたことが恥ずかしくて寝る以外逃げる方法がなかった

 俺は掛け布団を頭が隠れるぐらい被り目をつぶる

 すると固まった状態から戻ったと思われるチィ姉が何かバタバタと暴れている音が聞こえる

 

「あわ、あわわわ、あわわわわわ!わ、わわわ、私初めて頼まずにふーちゃんから・・・き、キスされた!!!うわっ!うわっ!!!」

「チィ姉!うるさい!!寝れない!!ゲホッゲホッ」

「わわわ、ご、ごめん」

 

 チィ姉は謝ってきたが小さい声で「うわ、うわ、わわわ」とか何度も言っていて寝れず、1時間ぐらい経つといきなり静かになり、俺はようやく寝れた

 

 


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