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眠れない夜に  作者: ミィ
第三章
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   トワイスアップ(Ⅳ)

真理亜を背負って立ち上がった田所は、ほんの僅かに真理亜を上に押しやってから自分の腰に落とした。


「大丈夫そうか?」と、譲二が聞いてくる。


「ああ、固定できたよ」と言うと、ノアがカウンターから出てきた。



「世話をかけたな」と田所がノアに軽く頭を下げると、ノアが頬を染めて「どういたしまして。大事な真理亜ちゃんのお迎えありがとうございます」と返した。


そのノアの様子を見て、「おいおい、頼むよ・・・」と譲二が呟いている。



「支払いは後日、本人に来させるから」


「いえ、いつでもいいんですよ」


ノアも背が高いほうなので、下からうっとりと田所を見上げるようなことにはならない。


恋する乙女の『下から目線』で田所を悩殺できないことを残念に思っていると、

「へぇ、あの守銭奴のノアがいつでもいいなんて・・・」と野次馬が茶化している。


ノアは振り返ってギロリと後ろのお客たちを睨んだあと、扉まで田所と譲二を見送った。


扉が閉まりきらないうちに「あんたたち、覚えてらっしゃいよ~」と叫んでいるノアの声が聞こえたが、扉が閉まってしまうと店内の喧騒はまったく聞こえなくなった。



「タクシー止めてくれ」


「ああ。こっち側でいいか?」


「いや、向こう側に行こう」

と、いつも真理亜を乗せるときに渡る横断舗装を顎でしめしながら、田所は真理亜を負ぶったまま譲二と並んで歩き出した。



「久しぶりだな、お前が酔っ払いを背負うのは」


「ん?昔もよく背負ったな」


子供の頃から近くで育ち、幼稚園から大学を卒業するまで同じ学校だった二人は共に喧嘩も酒も強くなり、学生の頃は酔っ払った仲間をよく交代で運んだものだ。


「そういえばお前はもっぱら女の子しか介抱しなかったよな」と、田所は思い出したように言った。


「今でもそうだよ?野郎なんかごめんだ」としれっと言う譲二を何故か憎めない。


田所はそれには何も言い返さずに、譲二がタクシーを止めるのを待った。



すぐに一台の空車が目の前に止まった。


タクシーに真理亜を押し込むと、さすがに身じろぎをしたが完全に目覚めるほどではなくすぐに静かになった。


「じゃ、今夜は呼びつけてすまなかった。ま、あれだ、貸しってことにしておく」とタクシーのドアを手で押さえたまま譲二が田所に言った。


「お前、それ逆だろ」


呆れて田所が譲二に言い返そうとしたが、「運転手さん、行って下さい」と譲二がドアから手を離したので、ドアを閉められてしまった。


譲二はわざとニヤリとしてから手を振ってきびすを返す。


仕方なく田所は運転手に行き先を告げた。







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