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眠れない夜に  作者: ミィ
第三章
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   トワイスアップ(Ⅱ)

Angel Eyes に向うタクシーの中で田所は、真理亜をどこに送り届ければいいのかわからなかった。


何度か帰る真理亜にタクシーを止めたことはあるが、毎週タクシーで帰るのを疑問に思い、真理亜の住所を調べたことがある。


真理亜が気軽にタクシーで帰ることができるくらい近くに住んでることは仄めかしていたが、念のために確認したかったのだ。


従業員の情報を勝手に閲覧するのはよくないことだが、田所の部所では見咎められることはない。


その情報によると、確かに真理亜の帰る方向の延長線上に真理亜の登録した住所があった。


しかし、その住所が正しいとすると一介のOLが毎週飲んだくれてその上タクシー代まで払うのはかなり痛い出費だ。


彼女に経済観念が無いとはどうしても思えない。


いろいろ考えて、仁科真理亜は住民票は実家に置いたまま、実際は別の場所に住んでいると田所は結論付けた。



Angel Eye に近くなったので譲二に電話をすると、譲二は店の前で田所を待っていた。


譲二はそのまま外で手短に今日あったことを田所に話した。


「で、仁科は?」


「ん、こっちだ」


そう言うと譲二は田所を案内して Genesis の扉を開けた。



凄い喧騒が開いた扉から流れ出てきた。


「この店は週末のこの時間から朝にかけてが一番混むんだ」


譲二が田所を振り返りながらそう言っても、田所は片方の眉を少し上げただけだった。


ノアが二人にいち早く気がついてカウンターの中から流れるように出来てきた。


「悪いな、遅くなって」


「いえいいのよ。店が混んできたから私もでられなくなってしまって・・・」


ノアは田所を見ながら返事だけを譲二に返した。


「こちらさんは?」と、紹介して欲しそうにノアが譲二を促す。


やれやれと譲二は思った。


ノアが女性言葉になるのはいい男を見つけたときである。


「俺の幼馴染で真理亜ちゃんの上司だよ」


「ノアと言います。今日は部下の真理亜ちゃんのお迎えに来ていただいてありがとうございます」


ちゃっかり自分で自己紹介しながら名刺を指し出している。


真理亜の上司ではなかったが、譲二がわざわざそう言ったにはわけがあるに違いない。


田所は軽く頭を下げた。



田所がノアの肩の向こうを見ると、女が一人、カウンターに頬をつけて突っ伏している。


その視線に気がついたノアは田所からの自己紹介を諦めて、「こっちよ」と二人を真理亜の席まで案内した。


「ここには女性を襲うような人は居ないから朝まで寝かせておいてもいいんだけど、

混んでくるとなかなかそうもいかなくて・・・」


ノアがそう言うのを上の空で聞きながら、田所は店内をぐるりと見渡した。






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