Burgundy (Ⅲ)
「フランスって・・・エッフェル塔も凱旋門も写って無いじゃん」
真理亜がカメラの中の何枚かの写真を見ながら言うと、
「田舎のほうだったんだ」と佐々木は言った。
「それよりもこの近くにコンビニある?」
「うん」
「なんかさ、おにぎりが食べたいんだ。おかかや鮭の入ったの」
「なるほど。こってりしたご飯ばかりだったんでしょ」
「それもあるけど、この部屋に入ったらおにぎりが食べたくなった」
真理亜は笑い出してしまった。
「わかったわ。おにぎりは私がなんとかしましょう。
それよりも汗流したいんじゃないの?」
「そうだな。もう何時間も風呂に入ってないよ」
「シャワーがいい?お風呂がいい?」
「シャワーでいいよ。借りていいかい?」
真理亜は佐々木には気の毒な小さな浴室に案内してシャワーの使い方を教えた。
佐々木がシャワーを使っている間に、おかかと鮭と梅干入りのおにぎりを2個づつ作る。
味噌汁はお湯をかけるだけで出来るインスタントのものにした。
夕食にと思って作って冷蔵庫に入れていたサラダを出してドレッシングをかける。
それらを小さなテーブルに置いて、化粧用のカウンターの前に置いてあるスツールをテーブルの前に移動した。
これで2人でテーブルにつけるだろう。
シャワーから出てきた佐々木はテーブルを見て、「わおっ」と感嘆の声をあげた。
「作ったの?」
「うん。ご飯炊いたのがあったから」
「手間かけたな」
というので、真理亜は笑いながら「米屋の娘だよ?お米だけはあるから」と答えた。
佐々木の髪がまだ濡れているので、テレビの前に座らせて軽く髪を乾かすようにドライヤーを押し付けた。
真理亜は佐々木に許可をもらってデジカメの中の写真をテレビのモニターで観られるようにした。
それから二人でテーブルに座って、おにぎりを食べながら写真を観ていく。
佐々木は写真よりもおにぎりを食べるほうに気を取られているので、簡単な解説しかしない。
意外に田園風景の写真が多く、澄み渡った空や深い緑が目に心地よく、真理亜は飽きずに写真を楽しめた。
パリ市内の写真も何枚かあった。
レストランやお店の写真や街角の写真で、真理亜は興味深く観ることができた。
佐々木の家族の写真もあった。
しかし、それらはほんとに数枚で、ほとんどが風景と佐々木が気になるお店の写真だった。
「従姉妹の一人がフランス人と結婚してさ、あっちで式をするっていうので行ったんだよね。
相手が田舎の男だったのでほとんどが農家の写真だよ」
「なるほど。でもフランスって農業国っていうからほとんどがこういう景色なのね」
「オヤジ達はまだパリに残っているよ」
「あら、ひとり先に帰ってきたの?」
「あぁ、連休最終日になったら成田も激混みだし・・・」
「なるほどね」
確かに今日帰ってきたのは正解かもしれない。
成田も都内もまだそれほど混んでいない。




