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眠れない夜に  作者: ミィ
第二章
32/74

   Burgundy (Ⅱ)

佐々木が『そっちに行く』ということは、この部屋に来るんだよねと思うと真理亜は一時的に落ち着かない気分になった。


一応おもてなししなければいけないのはわかるが、おんぼろアパートの部屋ではたかが知れてる。


広くない部屋をぐるりと見渡して、ありのままでいくしかないなと諦めると急に気が楽になった。


佐々木は午後都内に帰ると言っていたので午前中に掃除や買い物を済ませ、

午後からは小さなキッチンに立ち、作り置きできる料理に取り掛かった。


お料理は嫌いではないが、それほど凝ったものもできない。


しかもいきなり手料理なんて出すと佐々木が嫌がるかもしれないということも考えた。


外に食べに行こうと言われれば出さないでもいいやと決めると気も張らない。


早めに全部作って、汚れたキッチンを綺麗に片付けると、真理亜はヨガで気分を落ち着かせた。


夕方になり洗濯物を片付けていると、佐々木から電話がかかった。


もうすぐ近くまで来ているというのである。


真理亜は慌てて洗濯物をクローゼットに仕舞って、お茶の準備を始めた。



「今日はやけに暑いな」


そう言いながら佐々木は小さな玄関で靴を脱ぎ、所在なさげに部屋を見渡した。


小さなキッチンに小さなテーブルと椅子が1脚。


テレビの前に一人用のソファーとその奥にベッドがあるだけのシンプルな住まいだ。


「よかったらそこに座って?」と真理亜は一人用のソファーを佐々木に勧めた。


薄手のジャケットを脱いで佐々木はソファーに座った。


淹れたばかりの熱いほうじ茶を佐々木に出すと、真理亜はデスク兼ダイニングテーブルの椅子に座って自分もほうじ茶を一口啜った。



「あぁ、美味いな、このお茶」


真理亜は何も言わずににっこり笑っただけだ。


「暑いときに熱いお茶を飲むのはいいよな」


「どこへ行ってたのか聞いていい?」


「あれ?言ってなかったっけ」


「うん、聞いてないよ」


それには答えずに、「写真見るかい?」と佐々木が聞いた。


「うん、見せて?」と真理亜が言うと、佐々木はデジカメを取り出して写真を見せてくれた。


「あ、ヨーロッパなのね」


広く豊かに広がる田園を背景に佐々木が写っている。


「うん、フランスへ行って来た」


「ええ~~?」


「今日は成田からここに直行だよ」


驚く真理亜に佐々木はさらりと言って、「長いフライトだったよ」と首をしきりに回している。







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