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眠れない夜に  作者: ミィ
第二章
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   カルヴァドス (Ⅲ)

金曜日の就業時間が近づくと、そわそわと落ち着かない人が出てきた。


その日のうちに休暇に出発する人もいる。


休み中の確認を終わると定時になったが、真理亜は自分の仕事を残していた。


1時間ほど残業しても、その後のヨガ教室で軽く汗を流す時間はありそうだ。


営業部はそれほど早くは終われない。


今日の飲み会も遅めのスタートだった。



真理亜は残業を終え、駅前のヨガ教室で1時間ほどあれこれポーズをこなし、

軽くシャワーを浴びた後でようやく集合時間に近づいた。


駅の向こうのスペインバルに向う。


バルの扉を開けると喧騒が流れ出てきた。


やはり今夜は賑わっているらしい。


真理亜と前後して皆到着して会がスタートした。


男女5人ずつの10人である。


やっぱり合コンじゃないかと真理亜は思った。



女性達は始まるまでに時間があったので軽く食べて来たと言い、

営業部の男性陣はお腹がぺこぺこだと言ってボリュームのあるものを注文している。


たくさんの料理がテーブルに置かれたので、まだ食事を済ませてなかった真理亜には有難かった。


とりあえず乾杯だけは皆に合わせてグラスを上げ、出てきた料理を適当に皿にとって食べ始めた。


「食いっぷりがいいね!」と賢吾が遠くの席からでも聞こえるように言った。


「お腹空かせてきたのよ」と真理亜が赤くなりながら言い返す。


「空き時間に軽く一緒にどうですか?って私メール送ったんですよ~」と経理部の後輩が隣で笑った。


「あ、携帯の電源切ってた・・・ごめん」


真理亜は全然気がついてなかった。


「いいんですよ。残業されてたみたいですし・・・」と屈託の無い笑顔で言ってもらってほっとした。


それからは適当に話しながら食べて飲んで楽しく過ごした。


営業部の若い者たちとは話したことがなくても顔くらいは見知っている。


打ち解けるまでにそれほど時間は要らなった。



そろそろ電車の時間が気になって、自然にカラオケ組と電車組みに別れて店の前で解散した。


店を出る直前に、賢吾に「Angel Eyesに行こう」と言われていたので、

真理亜は帰宅組みに紛れて歩き出したあと、途中で「私、こっちなので・・・」と断ってから皆と別れた。


賢吾はカラオケ組に引っ張られていたが、上手く撒いてくるのだろうと思う。


Angel Eyesの扉が見えたとき、真理亜はほっとした。



真理亜が重い扉に手を伸ばしたとき、後ろから誰かの手が伸びてきて扉を開けてくれた。


スーツの袖口から賢吾だとわかる。


すぐ後ろに賢吾の気配を感じながら、真理亜は店の中に身体を滑り込ませた。






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