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東方天照記  作者:
46/91

話をしよう

レミリア「パチェ、まだ解けないの!?」


パチュリー「もう少しだけ待ちなさい……良し、解けたわ。」


ギギギギィ!


レミリア「半分まで開いたわね。美鈴、思いっきり蹴り飛ばしちゃいなさい!」


美鈴「よっ、よろしいのですか?」


レミリア「早くする!」


美鈴「はっ、はい!せいやーっ!」バキッ!


ドカーンッ!


パチュリー「天照!」


美・咲「天照様!」


レミリア「フラン!」


「やぁ、みんな。随分慌ててるみたいだけど、何かあったの?」


パチュリー「天照!っ!」ギュッ


「うわっ!パチュリー!」


咲・美「天照さま~!」ギュッ!


「二人も!?」


パチュリー「良かった、無事で。」


咲夜「お二人の姿が見えなくなったので何かあったのではと……。」


美鈴「お怪我はありませんか!?」


「私のことよりフランを……。」


レミリア「フラン…。」ギュッ


「痛たた。大丈夫だよ、レミリア。フランは今、眠ってるだけだから。」


レミリア「ごめんなさい、天照。」


「何が?」


レミリア「貴女を騙すような事をして。」


「別に良いよ。フランにとっての〈遊び〉だったんだから。それより、フランについて皆に話しておきたいことがあるんだ。」


レミリア「フランのこと?」


「そう。フランの狂気のことについて、さっき色々と分かったことがある。」


レミリア「分かったわ。一端、ここを出ましょう。美鈴、フランをお願い。」


美鈴「はい、お嬢様。」


レミリア「こんな所からは、早く出ないと。」


させぬ…。


レミリア「!?」


パチュリー「!?」


美鈴「!?」


咲夜「!?」


「…ちっ。ちょっとしつこいんじゃない?しつこい男は嫌われるよ?ウラド・スカーレット殿。」


レミリア「おっ、お父様!」


行かせぬ…。フランドールは行かせぬ…。


レミリア「どうしてお父様が、お父様はもう…!」


「思念だよ、レミリア。いや、執念と言うべきかな。」


フランドールは…ここより出しては…ならぬ。


「消えなよ、おっさん。出でよ剣!戦闘神技<オモヒカネ>。」


説明しよう…戦闘神技<オモヒカネ>は相手の思い│(想い)を断つ技である。使う相手は主に霊的な何かである。


私は…消えぬ…私は…誇り…高き…吸血鬼。


「そういうのはもう良いんだよ!早く消えろ!これ以上、二人を苦しめるな!」


私は……誇り…高き…。


パチュリー「消えた!?」


「ごめん、レミリア。」


レミリア「いいえ、気にしないで。それよりも。」


「うん、出よう。」


…………


美鈴「妹様は、ご指示通りお嬢様のお部屋へ運びました。」


レミリア「ご苦労様、美鈴。さぁ、聞かせて貰いましょうか。フランの狂気について。」


「うん。まず、フランに狂気なんか無い。」


レミリア「はっ?」


「聞こえなかった?フランには最初から狂気なんかなかったんだよ。ただ、甘えたかっただけ。甘え方を知らなかっただけ、ただそれだけ。」


レミリア「でも、貴女と戦ってた時は!」


「あれは純粋に楽しんでたんだよ。ちょこっとやり過ぎだけど。」


レミリア「訳がわからないわよ!お父様はフランに狂気があるからって閉じ込めたんじゃ無いの!?」


「答えはNo。フランを閉じ込めたのは、貴女たちの父親がフランを恐れたから。」


咲夜「どういうことでしょうか?」


「そうだね、少し昔話をしよう。このお話は今から400年前のお話。」


パチュリー「………。」


「あるところに吸血鬼の家族がおりました。吸血鬼の家族は父親、母親、娘の三人家族でしたが、ある日家族が増えることになりました。」


美鈴「……。」


「親子三人は大層喜び、妹は大切に育てられました。しかし妹が生まれてから五年後、父親は驚愕しました。何故かって?それは妹が、とある能力を持っていたためです。」


咲夜「……。」


「その能力とは、すべてを破壊する能力だったのです。能力を知った父親は心の中で思いました。もしかしたら自分は、殺されるのでは無いかと。もしも娘の能力が暴走して自分が破壊されるのではないかと。」


レミリア「……まさか!?」


「そして父親は、破壊の恐怖から逃れる為に愛しいはずの我が子を地下へ閉じ込めたのです。母親は無論、反対しました。それが親として当然の反応ですが、父親は既に壊れていました。娘の能力のせいではありません。自らの保身の為に、自分可愛さに、様々な心が想いが彼の父親としての心を壊したのです。」


「そして、最後まで娘を閉じ込めることに反対した母親は殺されてしまいました。愛したはずの人に、共に永遠を誓った人に。さぞ悲しかったはず、娘たちの成長した姿を見ることが無いまま死んで、さぞ悔しかったはず。」


レミリア「……。」


「そして、娘は閉じ込められました。長女には、地下へ近づかないように言い聞かせました。長女が心配だからではありません。長女が妹を助けないか心配だったからです。そして妹は地下へ閉じ込められ、父親はいなくなりました。そして、長女は父親の言いつけを守り400年の月日がたったと言うわけです。……終わり。」


レミリア「お父様がお母様を…。」


「話すべきじゃなかったかな。」


レミリア「いえ、話してくれてありがとう。」


パチュリー「じゃあ、あの魔法陣と札はレミィの父親が?」


「いや、恐らく父親の友人ってところかな。名前は、サンドラ・カーン。かなり有名な魔法使いだったみたい。結局、殺されたみたいだけど。」


咲夜「過去にそんなことが。」


美鈴「まったく知りませんでした。」


レミリア「なんだか、信じられないわ。」


「でも、これが真実だよ。真実とは時として残酷である。昔の人の言葉さ。なんだか、疲れちゃった。少し休ませて。」


レミリア「えぇ、そうね。お茶にしましょう。天照。」


「ん?」


レミリア「ありがとう。」


「どうしたの、急に?」


レミリア「なんとなくよ。(ありがとう、天照大神。)」



                    つづく



スカーレット姉妹の父親の名前はドラキュラのモデルとなったウラド・ツェペシュを参考にしました

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