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975:アーカイブ

お湯を茶葉に注いでから器を少し回す……。

こうすることで茶葉の風味がよくなるらしい。

グレートブリテン王国内戦後に亡命してきたイギリス人の貴族たちが嗜んでいた紅茶スタイルだ。

英国は紅茶の本場と言われているだけに、そういったイギリス人の紅茶に対する情熱は冷めやらない。

現代でもイギリス軍の戦車には伝統的にお茶を沸かすためのケトルや湯沸かし器が装備されているほどに、紅茶を楽しむティータイムだけは最重要視しているだけに、紅茶好きの彼らから教わった飲み方で飲むとしよう。


「茶葉を蒸すのも、紅茶本来の甘味と余韻を引き出す為に行うらしいな……ティーパックがあれば速攻で湯を入れれば溶けてくれるもんなのだがねぇ……ま、本場の紅茶……それもグレードの高い紅茶をこうして飲めるだけ俺は幸せ者だなぁとおもうね」


王族だからグレードの高い紅茶が飲めて当然かもしれないが、俺は()()()一般向けに販売されているグレードの茶葉を買って飲むことがある。

なんでかと思うかもしれないが、高い茶葉ばっかり飲んでいると一般向けの茶葉がどんな味で飲んでいるのか分からない。

つまるところ、庶民の味を知らない状態になってしまうというわけだ。

庶民の食卓を知らないのは国のトップに立つ者としては把握しなければならない。

故に、茶葉も安いのと高いのとで比較して飲んだりして、違いを見出している。


この時代に一般向けに販売されていた茶葉の品質に関しては、若干酸味が掛かっているような味付けであり、茶葉の発酵が進んでいるような商品が複数あるという事だ。

グレードの中にはあまり品質がよろしくないのがあり、それに関してはミルクティーやレモンティー、それにハーブティーなどの他の飲料であったり香料などを混ぜ合わせてから服用する手法が多く使われているのだ。

よって、この時代に紅茶本来の風味を味わうのは高級茶葉、多少品質が悪くてもミルクやレモンなどを入れて誤魔化すことが出来るのがグレードの低い茶葉だったりもするのだ。


悪質な店だと安価で仕入れた質の悪い茶葉を使って、ミルクティーなどにしてごまかして高級茶葉であると偽って摘発された事例もある。

悪徳業者のやることで少々ゲンナリもするが、この時代でも産地偽装などを行って悪だくみをする輩がいることに関心している。

思い返せば、時代的にも衛生概念というものが薄い時代でもあったので、肉の部位が腐っていてもその部分を切り落として食べればヨシだったし、多少の腐っている食べ物でも焼いて食べれば何とかなるという考え方だったので、市場でも食べ物がある程度腐っていてもそれを売っていた時代だ。


現代の清潔な衛生管理基準で言えば、事故品等の訳あり商品として格安で販売されるようなものでも普通に売られているのが現状だ。

数こそ減ったが、ホームレス状態の子供がそんな品質の悪い食べ物を食べて食いつないでいた時代でもある。ストリートチルドレンという子供たちは、現代よりも圧倒的に多産であったこの時代では貧民窟を中心に多く、こうした子供たちが低賃金労働としてこき使われたり、時には性犯罪などに巻き込まれたりしても【よくある事】として片付けられていた時代でもある。


(どうにかしてそういった事を変えていかないといけないからなぁ……こうして美味い紅茶が飲める身分に転生できたのも僥倖だったな……もし、ストリートチルドレンのような最下層ともいえるような状態だったら、今みたいな生活は絶対に送ることはできないだろうし……)


そう、もしルイ16世ではなく貧民に転生してしまっていたらどうなっていっただろうか……。

少なくともこのような生活を送ることは出来ないだろう。

辛うじて読み書きそろばん……基礎教育は現代で受けてきたので、その能力を使って何とか貧民を脱出して平民として生きていく事になっていただろう。


平民は平民でも、成り行きで革命側に立って行動するようになれば、ロベスピエールなどを含めた革命政府側の政争に巻き込まれて粛清される未来も見えるし、下手をすればこの時代でも度々流行していたペストや天然痘への罹患が起こって死亡していたかもしれない。

現代では特効薬はあれど、この時代にはペストは消毒するしかできないし、天然痘に関しては牛痘接種による予防措置しかできない。


(まさに幸運だったというわけだ……これ以上の幸運はないかもしれないな……例えるなら、2000年代に流行した電子掲示板での出会いがきっかけになってドラマ化したエッセイみたいなもんか……)


2000年代初頭に、大手インターネット掲示板で話題になった電車内で酔っ払いから女性を助けた男性の綴った内容が大ヒットしてドラマや映画化された際には、その女性がお土産として英国産の高級ティーカップを届けたことで一躍有名になった事例もある。

アレに関しては現代では「インターネット掲示板のステマ」だとか「そもそもあの話自体が創作で書籍化と話題作りのためにやった説」などが浮上しているのも事実だ。

いずれにしても、今となってはそれも分からないが……こうして茶葉を汲んで飲める身分でいることは幸せなことだなぁと自分でも僥倖だなと思っている。


そろそろ湯も沸いたに頃合いだろう。

湯を暖炉の熱で沸かし、そのお湯を器に注いでおく。


「さてと……これで紅茶を3分……いや、4分ほど蒸しておくか……」


それに、湯を注いでからしばらくは茶葉を蒸してから飲むのが一般的だ。

2分から3分程度……今回は紅茶の余韻を楽しみたいので4分ほど時間をかけて蒸すことにする。

こうして思えば、紅茶を注いでいる時も現代時代に紅茶を飲むときはティーパックに湯沸かしポットからお湯をぶち込んで、ささっとお湯を入れて飲んでいた時のことを思い出す。

あれはイギリス人からしたら作法的にはあまりよろしくないのとことなので、しっかりと上流階級らしく注ぐことに苦労した。


この時代の礼儀作法の中でも食事に関しては割と現代に比べてシビアなのだ。

マジでアントワネットとかも上品に飲むし、紅茶とかの作法に関しては大急ぎで覚えたのはいまでも懐かしい思い出だ。

随行員の人も「殿下が調子を悪くなされた際に作法の一部が抜けているかもしれません……」と言われたのでマスターするのに数時間……いや、3日ぐらいを要したものだ。


紅茶とて、淹れ方にも作法はあるしマナーもある。

とはいえ、この淹れ方はどちらかというと無礼講。

完全に一人で飲みたい時に飲むやり方だ。

ちょいとグルグル回して茶葉の味が早く染みわたるように掻きまわす。

隣にマナー講習がいればこんな淹れ方邪道ですわ!とおしかりを受けそうになるが、朝の寒い早朝の時間帯に飲むのであれば、蒸す際にもしっかりと器全体に紅茶の味わいを染みわたらせたほうが上手いのだ。

砂糖はいれず、ストレートで。

これが俺の好きな紅茶の飲み方だ。


窓の外を見ながらゆっくりと紅茶を飲みこむ。

……うん、美味しいな……。

そう呟いていると、アントワネットも起きてきたので紅茶を飲むのに誘ってみたのである。

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