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958:遥か未来へ……

フランス軍の行動に関しては、既に先の会議でも行われていた通りメキシコへの防衛に向けて行動を開始することになっている。

メキシコの中でも北部から侵攻を受けている影響もあり、カリブ海側の都市「タンピコ」周辺に防衛線を構築し、スペイン軍本隊やポルトガル軍、それからポーランド軍の増援を持って迎撃するのが欧州協定機構軍の主体的な作戦である。

逆を言い換えれば、それより北部の地域に関してはメキシコ軍の士気が低いために突破されることを前提に行動するというわけだ。


「メキシコ軍は信用できない……スペインとの軋轢を生んだとしても、かの軍隊を再編成させるためにはある程度の侵攻も許容しなければならないというわけか……」

「はい、メキシコ軍は腐敗しております。政治的な腐敗による影響で、全軍の指揮は低く、最前線に至っては一般兵士として採用された現地民やメスティーソの者達が反乱を起こし、一部部隊が北米複合産業共同体側に寝返って村を明け渡した情報も入ってきております」

「味方から造反者が出ている状況で、フランス軍を動かせば大規模な裏切り……ひいては反乱軍が大規模になって押し寄せてくる可能性も高いからな……最前線で戦っているメキシコ軍兵士たちには悪いが、徹底した防衛線と北米複合産業共同体と対峙できるようにするにはこれが最適解というわけだ」


メキシコ軍の中に裏切り者が現れる。

それも一人や二人ではなく、数名で、小隊規模で、大隊規模で……。

これまでに判明しているだけでメキシコ軍の3000人以上の兵士が脱走ないし北米複合産業共同体に加担して攻撃をしているという情報がある上に、メキシコシティを中心に多発しているスペイン人を狙った襲撃事案にも現地の兵士が関与しているという情報すらある。


スペイン人の印象はあまりよくなく、特に奴隷制廃止を行うまでに現地民やメスティーソに対して綿花栽培などで利益を出していたプランテーション農園の地主であったり、その地主と結託して安い北米複合産業共同体で生産された阿片などを横流しして第三国経由で売りさばいて莫大な富を築き上げた貿易商などが襲撃され、数百人規模で死傷者が出ているようだ。

戦場ではない場所でも、これらの襲撃によって大勢の民間人が犠牲になっており、最も……現地民やメスティーソの人達にとってしてみれば、自分達を苦しめていた怨敵でもあるわけだ。

このような状態では、フランス軍や本国軍なども攻撃対象になるのは確実だ。


「我々が送った軍隊が味方であるはずのメキシコ軍であったり、市民から襲撃を受けたら疑心暗鬼に駆られて北米複合産業共同体に対峙するどころではなくなるからな……国土管理局による謀略と謀殺に関しては”今するべき内容”であると認識しているよ」

「陛下、万が一事が露呈したとしても責任は我々国土管理局が負います。決して陛下に汚名が付かないように最高責任者である私が全責任を負います……」

「デオン……」

「陛下、もし今陛下の身に何かあった場合、欧州協定機構加盟国の結束が揺らぐ事案が連鎖的に起こり得るのです。特に、欧州協定機構はその名の通り……欧州の王国や帝国、公国など様々な形式の国家が一つにまとまっている状態の連合体です。この連合体が瓦解してしまうと北米複合産業共同体が欧州に進出した際に、太刀打ちできない事態になり得るのです。そのようなリスクを少しでも減らす為に私が責任者となって事が露呈した場合に備えておく必要があるのです」


デオンの決意は固いようだ。

全責任を負うとまで宣言している上に、陸海軍の大臣からも軍隊に関してはすべて各大臣が責任者として連名を連ねており、万が一戦争で敗退してしまったとしても国王である俺に責任が行届かないようにするために工夫しているらしい。

反論しようとしたが、デオンを含めて政府や軍部・諜報機関の決意は固く、国王である俺は彼らの行動を支持するほかにない。

つまり最初から狙っていたというわけだ。


北米複合産業共同体が第三国経由でスパイを放っているのは重々承知しているが、それらのスパイの主目標を国土管理局などに定めるために欺瞞作戦なども同時に展開していると語っていた。

あまり詳しい詳細を教えてしまうと漏洩してしまう恐れがあるとして伏せられているが、主に国土管理局のダミー企業などの情報を教えた上で、そのダミー企業に入社してくるスパイなどにある程度の情報などを渡したうえで、彼らを翻弄させる意味で目を見張らせているという。


「フランスに4名、スコットランド政府に8名、それからスペインに20名ほどの北米複合産業共同体のスパイが混じっているのが確認されています。いずれも大学などを卒業したエリートの者が多いですね……」

「エリートにスパイが?全員北米複合産業共同体に買収でもされているのか?」

「買収されたと思われる事例が3件ありますが、フランスにいるスパイは平等思想を実現するために行われている模様です。思想的な考えに基づいて同調している……というのが見解です」

「思想に同調か……北米複合産業共同体は過激な平等思想ではなく、どちらかと言えば企業国家概念を持ち合わせている国家だから異なる思想だと思うが……」

「北米複合産業共同体に至っては、当時の北米連合政府を打倒した上で企業による統治国家を樹立した世界でも例を見ない実績がありますからね……それが王政を打倒する上で必要なやり方であると認識している者も多くいるそうです」

「ただ、北米複合産業共同体はガチガチの階級社会だからなぁ……それを理解しているのかいないのか……いや、認識が出来ていない可能性もあるな……」


フランス国内にいる北米複合産業共同体の息のかかったスパイは、すでにフランス当局がマークをしており、それ相応の情報を掴ませた上で信頼を勝ち取ってから彼らに偽情報などを渡して北米複合産業共同体を翻弄させるために行動しているという。

北米複合産業共同体に送ったフランス側のスパイからの情報でも、北米複合産業共同体の経済低迷状態を打破するために戦争に踏み切っているという情報もあるし、彼らの多くが自国完結型の内需経済に移行したとしても、その多くがより多くの格差を産んでいる社会になりつつあると語っていた。


「北米複合産業共同体も経済的な不況が深刻化しておりますし、戦争を3年間継続すればかの国の経済能力を上回る債務が訪れてインフレも加速していくでしょう。それまでに北米の南部地域に上陸して橋頭堡を築き上げて攪乱をすれば、更に彼らは混乱するでしょう」

「メキシコへの軍事侵攻に踏み切ったのもそれが狙いか……であれば、一刻も早く北米複合産業共同体に勝つためにスペインやメキシコの問題を片づけないとな……」


北米複合産業共同体も必死なのだろう。

彼らも内心では火の車だ。

侵略によって経済不況を打破するために行うのであれば、こちらも全力で打てる手はすべて打っておくべきだろう。

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― 新着の感想 ―
この話が始まった頃は、平和だったなぁ…。 まさか、第二次南北戦争じみた火種が発火するとは…。 神聖ロシアのエピソードなんて、ある意味予告じみた展開に、現代と近世の違いに産業位しか差違が無い認識に…
エリートたちは自分達が上流階級に無条件で招き入れられると信じて疑っていませんからね。 嘗ての活動家のように。
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