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932:黄金計画

ついに北米複合産業共同体との戦いが幕を開ける時なのかもしれない。

ただ、こちらも一応形として後世において戦争を回避しようと努力したが、それが認められずに北米複合産業共同体の方から戦争を吹っかけてきたという事実を作らなければならない。

それに軍隊に関しては去年にロシアやオスマン帝国への派兵なども行っており、国庫などはそれぞれの国が長期手形取引によって負担することで合意しているため、少なくともフランスのお金はあまり消費していない。むしろ消費しているのも弾薬と兵士達の軍服や飯代が多い。


北米複合産業共同体に外交官という職も存在しているが、この役職者名なども【諸外国対応受付窓口】というお役所仕事みたいな感じのネーミングとなっており、これらの役職者の多くが諸外国との貿易担当を担っている。

……が、この窓口と大々的に取引をしていたのは、ヨーロッパ諸国では救世ロシア神国であったり、スペインやポルトガルの植民地政府だけであった。


「北米複合産業共同体も基礎産業が多く存在しているからなぁ……主に第一次産業で生産された木材や綿花、それに阿片などを主な輸出品として取り扱っていたのだろう?」

「はい、それらの輸出品の販売に関わっていたのも諸外国対応受付窓口という部署が担当していたことも判明しております。これらの部署は北米複合産業共同体の対外収入の多くを管理している部署であるため、かの企業国家にとって大きな収入源となっているのも事実でございます」

「収入源か……対外資産を獲得する窓口業務を請け負っていた部署だからね、フランスでいう所の経済省のような役割を果たしていたところか」


北米複合産業共同体の収入源は国内経済による消費のほかに、第一次産業で生産された農産物の輸出で利益を挙げていたことが判明している。

特に、救世ロシア神国向けには阿片を……メキシコやブラジル方面にはこれらの地域で生産された綿花よりも安いものを仕入れて地域経済を圧迫させた実績を持っている。


「オーギュスト様、これだけの植民地政府の経済が圧迫している状況にもかかわらず、どうして輸入を規制しようとしなかったのでしょうか?」

「それはねアントワネット……植民地政府の上層部が利益を享受したかったからさ」

「利益を……?どういうことですか?」

「国内で生産されている綿花の値段よりも、安い値段で販売してくれば、その分の差額が生じるわけだ。差額分の利益を自分達の懐に入れて、植民地で生産した綿花だと言えばそれだけでも差額分の利益が上層部に入り、生産者には一銭も戻ってこないってことさ……」

「それは酷い話じゃないですか……上層部だけが得をするシステムだなんて……」

「これが問題視されるようになってからは綿花も輸入規制措置が取られるようになったけど、現地政府ではノルマ達成のために数量を限定した上で第三国を経由して輸入していたってわけさ」


普段であれば、そうした綿花などは輸入規制するべきなのだが、現地政府がノルマ達成と本国やフランスなどを含めたヨーロッパ諸国への輸出用としてそれ相応の代金で払っていたため、自国産と偽って輸出していたことも判明している。


1785年度には、メキシコで栽培されていた綿花よりも第三国を経由して入ってきた北米複合産業共同体で生産された綿花のほうが量が多く、これらの綿花がスペインやポルトガルなどを通じてフランスにも入って来たことがあるのだ。


当然、この事案が発覚してからは担当していた植民地政府高官などを中心に公職追放処分となっており、結果として植民地政府内でも不正や汚職を働いた扱いとなって本国に移送されて懲役刑に服している。

ただ、それでも植民地政府側が中央政府よりも資金面で有利に立っているケースが多くあった為、植民地政府の総督などが罪を高官などに擦り付けて難を逃れたケースが多く散見されているのも実情だ。


スペインやポルトガル政府もこうした総督などの交代人事なども行うつもりであったが、国内の経済情勢も踏まえて時期がずれ込んでしまった結果、総督の交代が遅れてしまったことで植民地政府のガタガタも響いているというわけだ。


つまるところ……北米複合産業共同体はそうしたタイミングを突く形で軍事行動を起こしているのだ。

この事態を受けて、フランスではまず外交官を派遣することを実施するつもりだ。

外交官を派遣するのには理由があり、後世においてもフランスの行動は倫理的にも政治的にも正しかったと証明するためでもある。


「北米複合産業共同体への外交官の派遣は直ちに行われそうか?」

「はい、現在スタニスラス外務大臣が選別した外交官を派遣して、サン=ドマングで捕虜になった軍人から得られた証言を元に交渉を進めるつもりです。遅くても来月までには交渉を行い、決裂した場合には開戦になるでしょう」

「開戦か……戦費は賄えそうか?」

「戦費に関しては既に3年間の作戦行動分は確保しております。主にユダヤ人資産家やユダヤ系コミュニティからの戦費寄付金が集まっておりますので、これらの戦争継続資金を通じて実施致します」

「成程、では戦費に関しては当面は大丈夫というわけか……陸海軍のプランはどうなっている?」

「今回の主戦場はカリブ海戦争時と同じく中南部地域における離島防衛などを中心に行われるでしょう。初戦から1年までは防衛に徹して同盟国の中南米地域の防衛、そして海上封鎖を実施します」


外交官をかの企業国家に派遣した上で、中南米地域におけるスペインやポルトガルの植民地政府に対する武力介入を伴う政府転覆行為の中止と、撤退を要請する。

この要請を無視してメキシコへの武力介入を実施した場合、フランスを主体とした欧州協定機構加盟国の軍隊は直ちに戦闘に入る予定だ。


アントワネットも食い入るように地図を見ているが、欧州から中南米地域まで距離があるためスペインやポルトガル海軍と連携してこれらのカリブ海地域を含めた戦力の配置が重要になってくる。

戦略拠点の一つであるサン=ドマングも既に陸海軍が投入されており、これらの地域の防衛だけでなく欧州協定機構軍の重要な軍港補給基地としても全土で臨戦態勢が取られることになるだろう。


「そして北米複合産業共同体の海上戦力が疲弊したところを突く形で、フランス軍はアメリカ大陸南部に上陸し、北部への攻勢をかけます」

「海上戦力が無くなってから陸上戦力を本土への上陸か……中々良い作戦だね」

「北米複合産業共同は潜在的な仮想敵国であり、同時に領土も膨大であるためこれらの地域を制圧しておかなければなりません。我々はこの作戦を『黄金計画』という名称を用いて実行に当たります」

「黄金計画……」


作戦名を聞いて、俺は驚くと同時に歴史の繋がりを感じさせる事を実感した。

そう、黄金計画は米陸軍において列強諸国や周辺諸国との戦争を想定した戦争計画において、対フランスとの戦争が勃発した際に用いられる予定であった計画名でもあった。

その計画をフランス側が行う事になるのは、歴史の皮肉なのかもしれない。

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