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930:ZEROへの帰還

「さて、中南米地域への対応はどのようになっているかね?」


問題は、今回主戦場となる中南米地域の対応であった。

すでにスペインの植民地であるメキシコに関しては、現地の反乱勢力がそれ相応の力を付けており、これも北米複合産業共同体が武器などを支援しているという情報がある。

どうもテキサスを通過して陸路でも物資運搬などを行っているらしく、これらの武器・兵器などが現地の反体制派に抵抗運動として行き渡っている情報でもあるのだ。


「メキシコへの反体制派への武器・兵器供与をしているのはほぼ確定です。既にメキシコ植民地政府軍が反体制派から押収した武器・兵器なども北米複合産業共同体で生産されているマスケット銃であることを確認しております」

「メキシコでの動乱を利用して中南米地域を焚きつけるつもりか……あくまでも植民地政府との対峙であるという理由もあるのか……」

「それもありますが、やはりスペインやポルトガルの植民地支配の崩壊を目論んでいるものと思われます。これからの地域では1785年に施行されるはずだった『人種平等法』が実施されておりません。それ故に、現地の人々であったり、現地人と結婚した混血系の住民らへの政治参加などが成されていないことも、北米複合産業共同体に加担する要因となっているのです」

「やはり、現地政府が頑なに拒否をしているという事か……それさえできれば問題なかったんだが……」

「フランスとは違い、スペインやポルトガルなどの植民地では本国のGDP比に換算して約3~5割に匹敵する量の鉱石資源や綿花栽培などを通じて利益を得ていますからね……それにイベリア半島の国家は依存している状況ですので、これらの要件を施行するまでに植民地政府に対しては強く言える立場ではないのです」

「うむ……ここにきて同盟国の足枷が仇になってしまったようだな……」


そう、スペインやポルトガルも植民地支配によって国力を増やしてきた歴史のある国である。

それは俺も知っていたことだ。

だが、スペインやポルトガルは人種差別などを無くす条約である『人種平等法』の施行には参加をして批准しているものの、これはあくまでも『本国のみ』適応される状態であり、植民地となっている中南米地域への批准は遅れている状態でもある。


「オーギュスト様、今のスペインやポルトガルでは人種平等法を批准しているのではないのですか?」

「ああ、本国政府ではこの人種平等法を採択して批准はしているんだが、植民地ではこれらの批准は遅れているのが実情でもあるんだ。本国政府としても自国に対して資源や資金を送ってくれる植民地政府に対してあまり強くいってしまうと、離反であったり本国政府に供給量を減らすといった事をしてくる可能性が高いんだ。だからこれらの植民地経済に頼っている状況だと、あまり強く言えることはできないんだ」

「なんと……それでは、植民地政府の言いなりではないにせよ、強く言えない状況なのですね……」

「そうなんだよね……こればっかりはフランスもあまり口出しはできない案件ではあるけど、サン=ドマング地域や青龍に関しては、本国における海外県という扱いで正式なフランス領として扱っていることで、植民地政府への確執がないようにしているんだ……総督府はあるけど、あれはあくまでも現地における自治政府みたいなものであって、植民地政府と違うところは、現地住民やその地域に移住して労働している人々への差別などがないように徹底しているからこそ、本国との信頼関係が産まれているのが明確な違いでもあるんだ」


そう、フランスは植民地政府を解体して、全て本国領土として自治政府を誕生させている。

史実での1950年代以降フランスが植民地を手放して海外県を設置したときのように、本土と同じように教育などを行えるようにしたのだ。

あくまでもフランスにいくために財産を投げ売ってやってきた移民の多くがフランス語を取得するために、通信学校と同じように一週間に1~2日間赴いたり、夜間学校で仕事終わりに勉学する際には学費なども割安にしているのだ。


これは労働者の支援であり、必要なことだと割り振って行う反面。

しっかりと労働者がフランス語や文字を取得するために勉学を励んでもらいたい故にやっているのだ。

さらに言えば、本土でも貧困層であったり女性が文字の読み書きができない状態の人が少なくないため、こうした人々のために教育分野であったり生活面での支援を行い、フランスで働くことを誇りに思えるようにして信頼関係を構築することができたのだ。

予算も掛かったが、それでも必要なことである。


だが、スペインやポルトガルでは違ったのだ。


これらの国々では植民地政府がそれ相応の権限を有しており、貴重な経済資金を獲得してくる地域であったために、本国政府が強く施行を求めても期限をギリギリまで先延ばしにして1800年まで引きずることになってしまったのだ。

元々フランスで1785年に完全施行した法律を欧州協定機構加盟国で採用し、有色人種への差別撤廃などを求めた法的なやり方なのだが、植民地政府がこれらの批准を遅らせてしまった。


さらに、スペインやポルトガルの大使とも会談をしたのだが、やはりというべきか本国で人種平等法を施行していても、中南米地域からの出身者に対する差別や迫害なども起こっているのが現状のようだ。

特に現地出身者であり、インディアン系の住民に対してもあまりよろしくない差別的な発言が散見されることが多いという。


「やはり、植民地政府がある程度権力や発言権を持っているとそこまで大きく物事に強く言えないのが欠点だな……」

「オーギュスト様、スペインやポルトガル政府の動向次第では、植民地政府を擁護してしまいますが……かといって支援を行わないと、スペインやポルトガルとの関係も悪化してしまいます」

「そこなんだよねぇ……難しい判断だ。助けはするけど、確実に法案を制定させて差別的・迫害な行動を慎むように強く言うか、もしくは植民地政府がこのような北米複合産業共同体の行動を助長させる行為を行ったとして処分するしか対策がないね……アントワネットはどうするべきだと思う?」


俺の問いに、アントワネットは答える。


「現地住民や現地住民と結婚したお子さんへの政治参加を行わせなかったのは、明らかに植民地政府の責任でもありますわ。なので、この戦争が終わり次第メキシコ植民地政府に対しては、強い圧力を行った上で、反発していた現地住民の方々などに対する保障の確約、人種平等法の速やかな施行を確約させるしかないのではないでしょうか?」


やはりアントワネットも同じ意見のようだ。

スペインやポルトガルの各植民地政府に対して、人種平等法の施行を確約させるべきだろう。

それは今後これらの国々が今以上に力を付けた際に、本国政府への大反乱などが起きるリスクが極めて大きいからだ。

少なくとも、彼らの人権や人種を尊重することを重視しなければ、相互協力関係は産み出されない。

この事を踏まえて、スペインやポルトガル政府に対して強く進言しなければならないだろう……。

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