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927:飛散(下)

ポルトーフランスの行政庁では、北米複合産業共同体の軍艦が座礁したというニュースが第一報で届けられ、さらに歩哨からの情報で投降を希望していることもあってか、まずは乗組員全員を最寄りの基地まで移送するように指示を出した。

ただ、少人数ではなく200名の乗員がいると判明してからはその指示を撤回して分散して勾留するようにとの指示を改めて出している。


定員50人の駐屯基地であるサン・マルク哨戒基地に、その定員の4倍の人数を詰め込むのはかなり窮屈であったため、非武装の状態で街にある教会であったり、塩田で作られた塩を精製する工場などに数十人規模で北米複合産業共同体の兵士達が分けられることになった。


そして、北米複合産業共同体のTS-109号において最高責任者であったエリック中佐は駐屯基地において尋問を受けることになった。


尋問といっても、抑圧的な取り締まりなどではなく相手に配慮したやり方で行われる事となった。

エリック中佐の階級などを確認した後、通されたのは基地内部でも上官であったり行政機関からの出向者を対応する応接室であった。

基地の最高責任者であるマリエル少佐は、軍服姿でエリック中佐と接した。


「紅茶とコーヒー……どちらがいいですか?」

「えっと……紅茶をお願いしたい」

「砂糖やミルクはどうします?」

「いや、ストレートで頼む」


エリック中佐にとって驚いたのは、駐屯基地とはいえ女性が最高責任者を務めていた点であった。

マリエル少佐は女性軍人として赴いていたが、元々国土管理局で訓練などを積んだ女性でもある。

近いうちに戦争が勃発することに備えて最前線となるサン=ドマング地域での情報収集を担当する役割を担っている事もあってか、この基地において国土管理局の出向軍人として一時的にトップになっていたのである。


「女性であれど、これからの軍隊には必要不可欠になる。それは酒保だけでなく、戦略面においても必要な存在となりえるのだ。故に、女性軍人の起用は大いに取り入れるべきだ」


これはルイ16世の助言によって誕生したことであり、国土管理局は正式には軍隊ではなく諜報機関の側面が強いが、有事の際には軍組織としての一員として動くことが認められていることで、マリエル少佐も今は()()()()としての立場で動いているというわけだ。


エリック中佐は自分より階級が一つ下とはいえ、まさか女性が担当するとは思ってもみなかったようで、面を食らった顔をしながらマリエル少佐が淹れた紅茶を受け取った。


「ご安心ください、毒などは入っておりませんよ」

「ははは、それを聞いて安心しました。部下たちにも食事と飲み物をお願いしたいです」

「勿論、今駐屯基地の給仕班が向かっておりますわ。部下の方々にも区別なくお食事をご提供致しますのでご安心を」


その言葉を聞いて、エリック中佐はホッとした。

部下たちの事を気にかけていただけに、身の安全と食事は保障されたのだ。

少なくとも、捕虜としての扱いはしっかりと受けている。

それも、劣悪な環境などではなくしっかりとした環境で整えてもらえることはいい意味で彼を安心させた。


「さて……本題ですが、エリック中佐……北米複合産業共同体は何をしに中南米地域に向かっていたのですか?」

「!!」


さっそく本題を切り出すマリエル少佐。

すでに北米複合産業共同体が軍事行動をしつつある状況は本国でも伝わっている状況であったため、本格的な武力衝突も時間の問題であるとされてきていた。

それだけにマリエル少佐の言葉は、エリック中佐に突き刺さった。


「やはり、そこまでお見通しなのですね……」

「ええ、乗組員の方々の情報を確認しましたが、陸軍兵も動員している上に船に積載されている積み荷のマスケット銃や野砲の数が演習で使うには多すぎるのですよ……どう見ても対外戦争を想定して輸送していた……そのように捉えられてもおかしくありませんもの」

「……我々の目標もご存知で?」

「スペインやポルトガルといった中南米地域に植民地や直轄領を持つ国との対外戦争でしょう……貴国……いえ、企業国家であるならば貴社の造船所で作られた船舶からして、TS-109号の型番から9隻以上が中南米地域に向かって航行していたのは間違いありません。正確な軍事目的を教えていただければ、待遇なども保障致しますわ」

「……フランスにはかないませんね……」

「作戦書類などをお持ちのはずですが……持っておりますか?」

「……これです」


エリック中佐は降参した上で、破棄する予定だった軍機の中南米地域の侵攻計画書をマリエル少佐に渡した。すでに降格処分が確定しているだけに、本国に帰還できたとしても処分や処罰を受けるのは避けられない。


一度、ヒラに落ちてしまったら復活することが絶望的に難しい企業国家である北米複合産業共同体にしがみつくよりも、フランスに降参した上で情報などを渡すことで身の安全を確保するのが先決だと判断したからである。

作戦書は英語で記載されていたが、マリエル少佐は英語も扱えるため、作戦書に書かれていた内容をすぐに黙読する。


作戦内容は、中南米地域において戦略的重要拠点であり、メキシコにおいて10万人規模の都市を誇る「メキシコシティ」への奇襲攻撃作戦であった。

これは沿岸部に上陸した歩兵部隊を中心に行われ、2週間程の日程を通して実行される予定であった。

メキシコはスペイン植民地だけでなくこの時代の世界においても銀の採掘量は世界でも半分以上を誇っており、量だけでいえば世界の半分を占めるほどの有数だ。


そんなメキシコシティへの攻撃規模は2500人と言われており、これが実行されていればメキシコシティを防衛するスペイン駐留軍であっても、沿岸部への防衛のために人員を割らなければならない事態へと突入してしまうのだ。


「沿岸部から上陸するとのことですが……距離がかなり離れていますよね?」

「内陸部にある首都ですからね……ただ、我々はあくまでも()()に過ぎません、本命は現地でスペイン植民地政府に反発している現地民であったり、政治的な参加を認められていない人々を焚きつけることですよ。それだけでメキシコは崩壊します」

「つまるところ……北米複合産業共同体の狙いは体制崩壊に乗じたメキシコの乗っ取り……という事ですか?」

「その通りです。我々はあくまでもスペイン植民地軍がやってくるのを足止めして首都での蜂起を行う反乱軍の手助けをするだけです」


ここでようやく事態がより深刻な状況であることをマリエル少佐は把握した。

メキシコでは植民地出身者への政治への参画が規制されている状態であり、これは全般を通してもスペイン本国政府が改善要求を行っても現地政府が渋っていたことが挙げられる。

つまるところ、メキシコ自治政府側の問題に付け入る形で反乱を起こし、さらにそれを中南米地域に拡大して大反乱を起こそうとしているのが北米複合産業共同体の狙いであった。


そして、エリック中佐を尋問している間にも北米複合産業共同体は中南米地域への大反乱を画策し、実行していたのであった……。

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― 新着の感想 ―
余計な世話かもしれませんが、ここ一、二百話あたりで省略記号は使いすぎではないでしょうか?オーグストだけの語調ならまだなんとか耐えますが、どのキャラもうこうなると正直ちょっと読みにくいです。
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