900:地銀
記念すべき900話になったので初投稿です。
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1795年1月10日
テレーズの嫁ぎ先が決まり、私は彼女へのプレゼントとして首飾りを贈る事に致しました。
プロイセン王国で押収した宝石類に、数々のダイヤモンドなどを散りばめた一級品の代物になりましたが、これらの製作費には王族企業の利益から使ったため、実質的に国民への負担はほとんどないのです。
これにより税金から利用したという批判を受ける事は無いわけではないのです。
テレーズ曰く、結婚を決めるキッカケとなったのも、相手側のアプローチがあったからだと仰っておりました。
「私とて、色んな方とお話する上で彼とならうまくやっていけると思うのです。それに、お金や地位などを自慢する方ではないですし、外交官や国土管理局の職員を通じて調べてもらいましたが、彼に関する悪い噂などは一切ありません。お許しがあれば、私がネーデルラントに嫁ぐ用意があります」
テレーズがそれまで渋っていた嫁ぐことに行く決心をしたのも素晴らしいですが、やはり決め手となったのは相手からのアプローチだと言います。
私もフランスに嫁ぎたての頃は、どんな相手と結婚するのか不安で一杯でしたが、オーギュスト様の手紙を読んでから不安が取り除かれ、実際にお会いしてから彼に対して「この人であれば大丈夫」と思い、ついていくことにしたのです。
その結果は間違いではありませんでした。
フランスは今ではヨーロッパの中心地となっており、経済・軍事・文化を代表する国になったのです。
経済に関してはロンドンは内戦によって崩壊し、プロイセン王国もベルリンの戦いによって荒廃した影響で、西ヨーロッパの中心経済地となって多くの資本が集中するようになったのがフランスなのです。
そして、オーギュスト様はブルボンの改革によって、多くの経済改革を実行に移してそれまで身分などに著しい制限が加えられていたユダヤ人やユダヤ系をルーツに持つ人々への開放政策であったり、貴族や聖職者といった身分の方々に対しても税金納付の義務化などを推し進めてまいりました。
「ユダヤ人やユダヤ系の多くが迫害されているのをフランスが先陣を切って改革を行う……彼らを味方に引き入れることが重要なんだよ」
「オーギュスト様……一つお伺いしたいのですが、メリットはあるのですか?」
「勿論ある。彼らは2000年前に国家を失って世界中に散らばった民族だ……そして、金融や証券に詳しいのも、彼らが独自の情報網を築き上げた証でもあるんだ。彼らを保護しフランスが保証することで、彼らの【情報と信頼】を勝ち取ることがフランスを大国に導くキッカケになるんだ」
そう語り、オーギュスト様はハウザー氏といったユダヤ人やユダヤ系の人達を王宮に招き入れて政治改革などを彼らに語り、資本提供などを受けてから改革を実施しました。
ランバル公妃なども、今ではユダヤ人の男性を伴侶として生活しておりますし、彼らへの風当たりなども以前と比べればかなり減ったと思われます。
これは、オーギュスト様が大々的に金融や資本関係にユダヤ人やユダヤ系の支援があったからこそ、ここまで発展する事が出来たと各所で熱弁を振るって語ったからです。
フランス各地への巡幸行事の際にも、多くのユダヤ人コミュニティに立ち寄って、彼らと握手を交わしたりその地域の宗教指導者であるラビと呼ばれている方にも面会を取り付けて、保護などを行うことを約束したことも功を奏しているのかもしれません。
それぞれユダヤ人やユダヤ系の居住制限地域として定められていたゲットーの廃止と、国内であれば自由に行き来できるようにしたことで、多くのユダヤ人やユダヤ系の資本がフランスに集まることになったのです。
それまで、フランスだけではなくヨーロッパ中で白眼視されていたユダヤ人やユダヤ系の人々を真っ先に受け入れると王自ら宣言を出したことも、彼らにとっては衝撃的であったと語っております。
それまでのルイ14世やルイ15世など先々代や先代国王は、彼らに対してはお金を貸し付けて貰ったら、そのお金でヴェルサイユ宮殿の建設費に使ったり、娼館を建てるために使用したりとどちらかというと私利私欲のためにお金を彼らから借りる代わりに、高利貸し行為などを黙認するような事をしていたのです。
オーギュスト様はユダヤ人やユダヤ系の自由を認める代わりに、高利貸し行為に関しては原則禁止とし、代わりに上限金利政策を決める事で、金融機関から借りるお金に関しても元本から年20%以上超える取立は無効かつ違法であると定めたのです。
「あくまでも返済可能金額を利息として受け取るべきであり、明らかに返済が不可能な設定で貸すのは法令違反である。今後フランス国内の金融機関は最大でも年20%を超える利息を付けて貸付を行ってはならない。これに違反した場合は行政指導であったり、悪質と見なしたものには金融許可証の取り消しであったり懲役刑などの罰則を設ける」
金融機関も政府の公認許可を得て運営を行うことになり、違法性の高い高利貸し行為をしていた金融機関は摘発されたり、多重債務者となってしまった人達に対しては利息などから差し引く代わりに、国の公共事業で働いて返済することにより、経済を回すことで双方にとって損のない取引を行う事が出来るようになったのです。
今になって、オーギュスト様はこの事を見据えて行動していたのかもしれません。
パリの証券取引所は間違いなく西ヨーロッパ随一の規模になっておりますし、金融機関などもフランスに集中投資などを行っている関係で、各地で金融資本を元手に開発が推し進められて都市化が進んでいるのです。
そして、運河や河川などに対しても【百年に一度あるかもしれない大きな洪水にも耐えきれるように、大規模な堤防や治水事業を率先してやっていく】ことを名目に、すでに十年以上に掛けてセーヌ川の堤防設備であったり、先に述べた多重債務者の方々などを動員した治水事業などを推し進めているのです。
結果として、我が国は大いに豊かになりました。
治水工事によってセーヌ川の水質もかなり改善されたと改革派の面々から喜ばれておりました。
まだ全体の三割程度、パリ中心部やその上流側の治水事業を完了しましたが、雨の日でも水捌けが悪くならないようにしたりなど、セーヌ川の水質改善によって大きく生活環境が改善したそうです。
以前は汚物などを垂れ流していたそうですし、相当臭かったと言われています。
ドブの都なんて蔑称まであったそうですから、如何に今まで垂れ流しだったかを物語っておりますね……。
フランスは良くなってきております。
そして、これからも国家として約束された繁栄がもたらされることでしょう。
娘のテレーズの結婚式も国民全体で祝えるように、国を挙げて応援しましょう。
そのためにも色んな場所にテレーズの応援メッセージやお祭りとして告知を出しておきましょう。
今からテレーズの結婚式が楽しみですわね!




