372:復興
ワクチン接種をしてきましたので初投稿です。
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1780年4月15日
フランス パリ
パリ大火に見舞われて、地区の大部分を焼失してしまったピクピュスに俺ことルイ16世は赴いている。
ここではヴェルサイユ宮殿に公衆浴場の設計を担当したクロード・ニコラ・ルドゥーと同じく新古典主義的建築設計建築家として有名なエティエンヌ・ルイ・ブーレーがプロジェクトの中心となって都市再建が行われていたのだ。
道路も将来の自動車化社会を見据えて道幅を広くしており、火災で焼失した建物に代わって新古典主義的な石材建築による凛々しい感じの建物がずらりと建設されている。
建物の足場が沢山並んで金槌や作業員の掛け声が慌ただしくなっている。
「レンガが足りないからもっとよこしてくれ!」
「追加資材お待たせしました!またすぐに木材場から取ってきます!」
「慌てずに落ち着いて作業しろよ!」
うむ……こうして現場を見ていると建物が次々と作られていく場面は見ていて凄いと思う。
都市建設シミュレーションゲームをしている人なら分かるかもしれないが、こうしてドンドンと建物が作られていく光景を眺めているのが一番楽しいと思う事もあるはずだ。
実際に俺はそんな感じで眺めているのが好きだったし、まだクレーン車とかないこの時代でも、足場を組み立ててから建物が作られていく場面を眺めているのもいいものだ。
「だいぶ都市の再建が進んでいるように見えるが……プロジェクトの進行状況はどうなっているんだ?」
「はい、現在ヴァンセンヌ城周辺を含めた焼失地域の住宅復興を行っております。予定通りにプロジェクトは進行しており、こちらでは通りの拡大工事と並行して地上5階建ての集合住宅を建設中です」
「デザインも新古典主義的だが……これはこれでいいものだな……」
「はいっ、パンテオンも補強工事を再開し竣工を迎えられるように作業を開始しております。完全な都市機能の復興には4年から6年ほどかかりますが、それでもかつての大火を乗り越えた証として、再建されていくこの街並みを世界に誇れるように頑張ります!」
「うむ、もし資材や人材が足りない場合は遠慮なく申し出てほしい。これだけ立派に作れば大したものだよ」
新古典主義を重んじているルドゥーとブーレーがプロジェクトリーダーとなって再建が進められているパリの街並みはかなり立派になりつつあった。
それまでのパリの良いところを残しつつも、再び火災被害が拡大しないように道幅を広くして、避難する際には大勢の人がスムーズに逃げられるように道幅を広くして「大通り」を作らせている。
大通りはいくつもの馬車を走らせても問題ないぐらい広い道路にしており、もし自動車を走らせるとしたら大体片側4車線ぐらいの広さだろう。
道幅は約100メートル……十分に広い。
もし路面電車などが登場した際にも道路の真ん中にレールを敷くこともできるし、道幅は広くしてもデメリットが少ない。
強いてデメリットがあると言えば、舗装工事費用や道路の維持管理費が増えることだろう。
「うむ、それにしても道幅が広いから木材や石材の搬入もうまく進んでいるな!やはり思い切って広くしたのは良いことだな」
「そうですね、幅を広くしたことで馬車や台車の通行で行きかう際に事故などが起きにくいようになりました。広いので大きな建築資材運搬用の馬車でも難なく入ることが出来ます」
「再び大規模な火災が発生した場合には避難がしやすいように誘導灯や誘導員が見えやすい監視塔の設置も必要だな……」
「監視塔でしたら交差点付近に重点的においた方がいいでしょう。旗振り式の交通規制案内も導入するみたいですし」
「そうだな……それに関してはパリ警察や道路管理部門の仕事になるから、そちらに関する仕事の取り決めなども行わないといけないな」
閣僚などから「少々道幅が広すぎませんか?」と指摘こそされたが、将来的に人口も多くなれば前の道路状態ではすぐに混雑するだろうし、自動車化社会になったら路駐とかすごい問題になりそうなので、再建できる今のうちに道幅を広くしてしまうとおもった寸法だ。
それに合わせて、交差点に信号機の代わりとして旗振りをして道路交通の管理をしてもらうことの導入が決定している。
これはパリ大火の際には避難民が道路に一気に押し寄せてしまったことで、将棋倒しになって圧死してしまう事故が多発したからだ。
誘導員が目立ちにくかったという反省点も踏まえた上で、監視塔などを設置して分かりやすいように誘導指示を行えるようにするためでもある。
ちなみに、交通の混乱による圧死で亡くなった人は子供を含めて380人ほど……パリ大火における犠牲者の10分の1が道路が狭いことで人々が殺到したことによる圧死が原因であった。
そして交差点では右往左往した市民らがどちらの方向に逃げればいいのか分からなくなってしまうという事案も多発し、誤った誘導の末に火災に巻き込まれた……という報告もあった。
そうした点も踏まえて交差点における誘導係の存在も必要不可欠であるということが会議で出され、安全面も考慮してすぐに承認される形となった。
道路が広いこともあって、交差点での旗振り役も大変だ。
また、他にも避難指示を出した際に、パニックになった市民が窓から飛び降りてしまう事故も多発し、そちらでも50人以上の人たちが亡くなった。
この反省も踏まえたうえで、新しく建設されている建物には非常階段の設置を義務化して、分かりやすいように避難経路も各階に設置している。
「いま建設している建物には非常口や非常階段の敷設もしっかりとやっているかね?」
「勿論です。陛下のご指示の通り、必ず非常階段を敷設しております。それに、避難経路の図面も文字が読めない人でも分かりやすいようにイラストで表記させております。これを見本として今後作られていく住宅などにも採用できれば良いモデルケースとなることでしょう」
LK計画時に避難の策定などをしていたが、建物からの避難も揃えないといけなかった。
後になってからの自己批判になってしまうが、まだ避難経路などの策定などがされていなかった時代ということもあってか、人々が無秩序に逃げてしまってかえって被害を拡大させてしまった。
今後そうしたことが無いように、そして悲劇を繰り返さないためにも有事や災害が起こった際の避難経路や避難場所の策定を早急に作らないといけない。
なのでまずはパリをはじめとする大都市圏の建物には非常時に火災や洪水が発生した場合に避難する場所や経路などを定めるように法整備を行った。
『非常事態時における避難経路策定法案』
この法案を施行したことにより、大都市圏では一年以内に建物の避難経路を策定し、政府も火災や洪水などの大規模災害や戦争などが起こった際に、人々が集まって避難する場所の選定や火災が起きやすい危険エリアの情報などを作り、公共施設の防災機能についても現代日本をベースとした災害・有事対策を盛り込ませておいた。
あまり使う機会がなければいいが、先のパリ大火が発生した以上同じことが再び起きる可能性も否定できない。
備えあれば患いなし。
ブーレーと共に、復興している街を眺めていると声をかけられた。
振り向くとそこにはフェルセンが立っていたのだ。
これで今日から私も5Gです。




