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311:シーライオン

後書きにて重大なお知らせがございますのでお読みください

『革命勢力により占領されたグレートブリテン島への欧州協定機構加盟国による解放作戦に向けて、我が国の戦力および作戦に関する報告書 フランス参謀本部より』


イギリスの運命は決まった。

沈まぬ太陽と称された一大大国が沈もうとしている。

いよいよもってグレートブリテン島を解放するべく欧州協定機構に参加している国々が占領地解放に向けた侵攻作戦を決行する事になったのだ。

各国間との事前調整などにてこずった事もさることながら、利害関係などで意見の不一致などもあり、本来であれば1月頃に向けて作戦の決行をするつもりが、ズルズルと引きずってしまった。


「これもまた随分と時間が掛かったのですね……」

「ああ、各国との調整が思っていた以上に難航したからね……そう簡単に決まることじゃないよ、ましてや今回は戦争実行計画だからね……」

「戦争……」

「それも、とびっきり大きめの戦争だね……やりたくはないが、それでも国を守る為に誰かを犠牲にしなければならない……戦争とは残酷なものだよ……」

「オーギュスト様……」

「あまりやりたくはないのが本音だが、そうも言っていられないからね……周辺国がやると決めた以上は我が国もそれに歩調を合わせないといけないんだ」


このグレートブリテン島解放作戦に関する情報は、プロイセン軍人であるシュトイベン男爵からもたらされたものであり、欧州協定機構加盟国の間で結ばれた一時的な欧州間の対立関係の停止に伴い、フリードリヒ2世から派遣されてきたのだ。

このシュトイベン男爵は優秀だ。

というのも史実ではアメリカ独立戦争時にアメリカ軍の組織改革に大いに役立った人物であり、イギリス軍を打ち破ったのも彼の軍事指導があってこそと言われている。


最も……それは史実の話であり、こちらではプロイセン情報部門からの派遣軍人として赴任しており、アメリカ独立戦争には関与していない。

一応は軍人枠で北アメリカ連合州軍に応募をして向かおうとしていた矢先にイギリス軍が降伏したこともあって戦闘に参加出来なかったそうだ。

そのシュトイベン男爵が持ってきた作戦内容は至ってシンプルであった。


『第一段階としてオーストリア、スペイン、スウェーデン、プロイセン、フランス、ポルトガル、ネーデルラント、ノルウェーからなる主要八ヶ国軍がグレートブリテン島各所に上陸し、ロンドン国民平等軍の主戦力軍の分散・各個撃破を狙い物資と補給路が途絶えることなく進めるように侵攻する。各国軍に与えられた役割を重視し、イギリス海峡とドーバー海峡をフランス・スペインの両海軍が封鎖し、オーストリア、フランス、スペイン、ポルトガル軍は陽動として鉱山地域があるコーンウォールと西デウォンに上陸。スウェーデン、プロイセン、ネーデルラント、ノルウェー軍はグレートブリテン島中間に位置するハンバー川に沿ってエディンバラに侵攻中の国民平等軍の主力部隊を分断し、補給路を遮断する…混乱している隙を突いてロンドンを孤立させる。これら一連の作戦内容をプロイセン軍ではシーライオン作戦と命名することにした』


中々刺激的な内容が書かれていた。

作戦名は誰が名付けたかは不明だが、各国間の将校らが話し合った末にシーライオン作戦と命名したらしい……。

……驚いた。

この作戦名は第二次世界大戦時にドイツ軍による英国本土上陸作戦名として名付けられていたアシカ作戦と意味合いが同じなのだ。

何という偶然か……誰か転生者がいるんじゃないかと疑いたくなるレベルだ。

案外誰かが転生者かもしれないな……。


「二か所に上陸して戦力を分散後、陽動を担うオーストリア、フランス、スペイン、ポルトガル軍は西デウォンにある渓谷を利用して防衛線を構築し、ロンドン方面からやってくる国民平等軍の足止めを担う。期限は3カ月程だが、主力部隊の作戦が失敗した場合はコーンウォールと西デウォンに点在している鉱山を爆薬で破壊し、生産能力を低下させた後に撤退するべし」


目を通して見れば、作戦が失敗した際の対処法まで載っていた。

欧州協定機構加盟国のうち、国土的にフランスに近い軍隊は陽動作戦を任された。

イギリス海峡、ドーバー海峡を封鎖してイギリスの鉱山資源地帯を占領する……。

陽動作戦に動員されるフランス軍人は陸海軍の後方支援要員を合わせて2万人……これは、常備軍としてフランス本土に配属されている軍人総数の3分の1に匹敵する。

これにオーストリア、スペイン、ポルトガルの軍勢が加わると陽動作戦だけで6万人規模の大規模な作戦となるのだ。


おまけに、プロイセンでは臨時に徴兵した軍隊を合わせて3万人規模を派兵するようで……主力部隊はこれよりも更に上回るだろう。

あまりにも人数が多すぎるので兵站の問題も生じるのだが、それに関しては戦場の最前線国となったフランスが農業国としてのアドバンテージを活かして調達してきたのだ。

一気に食糧を買占めて市場価格を上げてしまうと経済的にも大変な事になってしまうので、大量生産が可能で尚且つ保存食として携帯することができる兵糧食を工場などで生産していた。

お陰で買占めをしなくても、兵士に行き渡る分の食糧を確保することが出来たのは幸運でもあった。


「プロイセンなどが買い付けてくれたお陰で資金面は大丈夫だったけど……それにしてもスゴイ量になってしまったものだな……見てごらんアントワネット。これが兵士が持っていく食糧の内訳さ」

「塩漬け肉にビスケット……お野菜はあまりないのですね……」

「うん、今の時期だと野菜に関しては数が限られているからね。それに長距離航海をするならともかく、イギリス海峡とドーバー海峡を渡るだけなら数日以内に完遂できるから、保存食でも対応可能という形になっているんだ。それでも栄養不足が起こるとマズイから野菜と肉を煮込んだ携帯用スープを支給する予定だよ」

「そういえば、以前お話されていた瓶詰の保存食はどうなさいますか?」

「勿論、工場で作っているものを持って行くよ。ジャムや蜂蜜、ピクルスや塩漬けのニシンとかね。少しでも安全な食を考慮できるだけでも兵士の健康を維持できるからね」


瓶詰の保存食も今回の軍事作戦において実戦運用されることになる。

兵器よりも食糧を考慮したほうがいい。

今が2月中旬という時期的なこともあるが、イギリスでは野菜があまり育たない土地なので、何かと食事も味っけないものになりがちだ。

特にイギリス料理があまり美味しくない理由の一つに、生産される食糧の質が悪いので、何でもかんでも必要以上に加熱処理したり、煮すぎたりしてしまうのが原因だと言われている。


そんな状況でイギリスに滞在したらフランスの兵士達はどうなるだろうか……?

また、現地で食糧を接収した際に毒などが入っていたら……。

確実に士気低下が起きるのは火を見るよりも明らか。


そうしたリスクを考えると、食料はコストが掛かってもフランスから海上輸送で運んだほうがいいのだ。

兵士用の食糧を生産することによって、保存食の原料を取り扱っている精肉店や魚市場に発注が行われて注文もいくし、加工して瓶詰を行う工場の雇用確保にもつながる。

それに、瓶詰の保存携帯食は缶詰とは違って蓋さえしっかりと締めて密閉すれば鉛中毒になることもない。


瓶も食べ終えたら熱処理をすれば何度でも再利用可能だ。

難点をあげれば割れやすいことだろうか……。

運ぶ際には綿の詰まった箱に入れて持って行き、コンソメスープの素になる携帯用スープも粉末状にして持っていく工夫なども取られている。

うまいことこれが注目されれば、スペインやポルトガルでもフランス式の工場建設に向けたPRが出来るかもしれない。


……と、お金儲けでやっているわけじゃないからな。

これは戦争だ。

それだけ食糧が必要だということは……長期化すれば食糧の調達も拡大してやらないといけない。

アントワネットと今後の内容を見ながら情報を精査していくのであった。

閣下、国土管理局より報告。

この度、本小説のコミカライズ化が正式に決定されました。

コミックポルカ様より2021年4月25日に公開されるとの事です。

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[一言] おめでとうございます
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