28:王娘達の晩餐会
まさか、まさかの100万Pv達成いたしました!!!
ありがとうございます。
これからも精進しながら執筆を落とさずに頑張って参りますので初投稿です
アデライードの部屋にたどり着くと、その部屋にいた数名の女性たちが涙を流していた。
皆暴発しないように縄で縛られているので、さぞ動きにくいだろう。
その中の一人、ヴィクトワールに話を聞きにやって来たのだ。
随分と疲弊しているようにも見える。
「叔母上……」
「オーギュスト……もうおしまいよ!!!私は……お姉様を止めることが出来なかった……」
「……詳しく話を聞かせてもらいたい。なぜアデライード様があのような事をしでかしたのかを……」
「それは貴方達のせいでしょう?お父様や愛妾……そしてアントワネット妃と共謀して私たちを追い詰めたのは!!!」
ヴィクトワールは怒りを露わにするも、その経緯を説明してくれた。
良かった、まだ理性はあるようだ。
ヴィクトワールが語ったのは、アデライード派によるデュ・バリー夫人への妨害行為が尽く失敗に終わり、アントワネット妃を筆頭にアデライード派に加わろうとした経緯であった。
「あの愛妾はね……国王陛下をたぶらかしていたのは事実よ!対して身分の出生はとてもじゃないけど貧民なのよ?貧民は貧民らしく暮らしていれば良かったのよ!それなのに、その美貌を武器にあれよあれよという間に国王陛下の傍に近寄ってきたのよ!!!ポンパドゥール夫人のほうが遥かにマシだったわ!!!」
ポンパドゥール夫人とは、ルイ15世を影で支えた愛妾として知られている。
賢明でアデライード達とも仲は表面上は良好だったので問題無かった。
だが、新たに愛妾として迎えられたデュ・バリー夫人が入ってきた事で愛妾との対立が決定的なものとなり、宮殿内における政治はアデライード派とデュ・バリー夫人派の二分することになる。
そして、アントワネットがやって来た事でアデライード派に迎え入れる筈であった。
……が、未来から転生した俺がこれを見事に阻止した。
アデライード派に吹きこまれたらたまったもんじゃない。
アントワネットと共に勉学を学び、共に食事を作り、共に睡眠を取る生活をしたのだ。
そうした結果、アントワネットはアデライード派に抱え込まれることが無かったのだ。
おまけに舞踏会での大失態を切っ掛けにアデライード派から離脱する貴族や商人が続出した。
やがてアデライード派は宮殿内における勢力をごっそりと減らされたのだ。
「もう時間が無かったのよ……このままでは私たちは破滅してしまうってね……お姉様は貴方の部屋に国王陛下とデュ・バリー夫人がやって来たという報告を受けて、ついに精神がおかしくなったわ。お姉様は国王陛下、デュ・バリー夫人、そして貴方を殺してルイ・スタニスラスを国王に任命しようとしたのよ」
「つまり、叔母上達はそれをただ黙って見ていたと?」
「そんな訳ないじゃない!!!いくら何でも貴方や国王陛下、それに夫人を殺害しようとするなんて馬鹿げているわと言ったわ!!!でもお姉様にはその声は届いていなかったわ……私たちはお姉様の命令で手首を縄で縛られたのよ」
アデライードは最も剣術が出来るであろう取り巻きの女に命じてヴィクトワールらを縛り上げたようだ。
それで女には俺を、アデライード自身の手で国王陛下とデュ・バリー夫人を殺そうとしたらしい。
しかし何でそんな危ない奴を易々と寝室に侵入させてしまったんだ?
「しかし、なぜそれでいてアデライード様が寝室に入ることが出来たのですか?叔母上は何か知っているのですか?」
「……お姉様はお腹に枕を入れて縛ってからこう言ったわ。”寝室の前にいる守衛にはお腹に赤子を身籠ったので国王陛下に相談したい。……と言えば開けてくれるわ”……とね」
ああ、確かにそれだと一大事だもんな。
守衛も夜遅くに国王陛下の娘が妊娠しちゃったなんてニュース聞いたら驚くだろうし、何よりも国王陛下もずっと結婚もしていない娘が突然妊娠したという報を聞けば焦るだろう。
どこの奴を孕ませたのかと……。
ドアを開けてしまった、いや守衛に開かせたに違いない。
それであの惨劇が起きたってわけか……。
「ねぇオーギュスト、私は処刑されるのかしら?」
「……少なくとも証言などを積極的に言えば良くて城か修道院に幽閉されるでしょうな。ただ、叔母上はこれ以上贅沢な暮らしとは無縁の生活になるでしょう」
「……そう、もう私はおしまいなのね……」
「……叔母上、あなた方を国王陛下暗殺未遂事件の共謀者として連行いたします。詳しい話はそこでなさってください。守衛、彼女らの連行を頼んだ」
「はっ!!!」
ヴィクトワールや精神的に撃沈してしまって呆然としているソフィーは顔をうつむいたまま、他の侍女達や取り巻きと共に連行されていった。
また、現在ヴェルサイユ宮殿内にいるアデライード派に属する貴族や政府高官などを一時的に拘束するように指示を出している。
アデライード派の運命は今日で終わったんだ。
仮にこの計画がアデライード派全てが理解していたのなら国家転覆罪と反乱罪、アデライードが独断でやったとしてもヴィクトワール達は責任を負うことになるだろう。
積極的自白を行えば幽閉で済む。
だが最愛の愛妾を失ったルイ15世はそれで許すのだろうか?
やるせない気持ちがモヤモヤと心の中に響き渡る中、俺は再び鏡の間に戻ってきたのであった。




