265:対英準備
イギリスをボコボコにしたいので初投稿です
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1776年11月13日
大トリアノン宮殿 第五会議室
おはよう諸君!
大トリアノン宮殿を増築して新しく出来上がった会議室にて重要会議をしている真っ最中のルイ16世だよ!
午後3時という事もあってかおやつ休憩……もとい小休憩という事で、ビスケットと砂糖とミルクがたっぷり入っているホットミルクティーを頂いている最中だ。
マイソール王国の僧侶や商人の間で流行しているミルクティーのようで、彼らが帰国するまでに作り方を教えて貰ったので、早速作ってもらい会議の小休憩の時間に出してもらったというわけだ。
ものすごく甘いから凄く目が覚めるし、頭の回転もグングン回って行く感じがするぜ。
コップ一杯に角砂糖換算で4つぐらい入っているらしい。
美味しいのはいいけど、これしょっちゅう飲んでいたら糖尿病になりそうで怖いよ!
なので飲むとしても一日2杯までという自己制約を掛けているよ。
さて……9月にやってきたマイソール王国の使節団とも改めて友好条約を締結し、人材の交流や駐留軍の取り決め、青龍への農業従事者の派遣、保存食として現地の香辛料を安く仕入れる事などを盛り込んだ『フランス・マイソール友好条約』を9月17日に締結するに至る。
軍事・経済に関する上ではフランスにとって大いに影響のある条約を結ぶことが出来た。
会議ではこの条約はフランスにとって大変有意義なものになったと皆が喜んでいた。
まず軍事に関しては来年7月を目途にフランス陸軍一個砲兵大隊を派遣し、防衛部隊としてマイソール王国にて駐留軍となる。
さらにフランスの近代的な軍事教練を教える為にマイソール王国での砲兵育成に務める内容になっている。
あくまでも軍事教練並びに防衛戦力として配属されることになるが、侵略戦争には加担しない上に、マイソール王国が条約を破って侵略行為を始めれば直ちに軍隊を引き揚げるという内容にしたぜ。
さらに、マイソール王国では軍事教練と軍の駐留締結による見返りとして、現在極秘裏に開発中の黒色火薬を使用したロケット兵器のサンプルを一式フランスに信頼の証として贈与してくれることまで取り付けて貰えた。
俺はこれに関しては凄く良かった取引になったと自負している。
史実では従来の野砲よりも遠く、そして遠方から飛来してイギリス軍を苦しめたマイソール・ロケット……その試作モデルを譲ってくれたのだ。
会議でその詳細な資料を目に通した陸軍のクロード=ルイは驚きながらその性能について語った。
「推定射程約1キロを伴う広域制圧兵器ですか!火薬を敷き詰めて飛ばす兵器としては中世中国が火箭を使っていたという文献を見た事はありますが……この資料に記載されているような兵器をマイソール王国が実用化に向けて既に準備しているのですか?とてもじゃないですが、信じられないです……」
「クロードもそう思うだろう?余も最初はこれは流石に誇張しているのではないかと疑ったよ……だが、資料の次のページにも書かれているようにフランス科学アカデミー所属の化学者アントワーヌ・ラヴォアジエが使節団から渡された設計図を基に試作したモノをパリ郊外の野砲訓練場で飛ばした結果を見たまえ……」
「……『最大射程1キロ、威力は半径10メートル以内の者を殺傷せしめる能力がある……それでいて、一発の総重量が通常の砲弾よりも軽い……最小で1キロ……最大で10キロ程度の重量となる』……」
「つまり、これは周辺国でも持っていない広域を制圧できる兵器でもあるんだよ。野砲と違って兵士一人が数発程度を携帯出来るというのは移動や部隊の展開でも勝るという事だ、即応体制で対応できる……とはいえ、野砲と違ってこうした兵器は直接狙えるわけじゃないし、発射台を設けて角度を調整しなければならないからね。一長一短でもあるわけだ」
俺はロケットに関しては専門家ではないのでアレコレ指示はできないが、幸運にもフランスには科学に精通している学者がわんさかいるので、ロケット兵器の開発も進みそうだ。
先に試作モデルの開発に協力してくれたアントワーヌ・ラヴォアジエに関しては近代化学の父と称される天才でもある。
一応、スパイによる設計図強奪が起きたらマズイという事で、名目上は『王国主催パレードに使う改良型花火』という扱いになっているよ。
新型兵器だと堂々と見せつけたら周辺国も真似するだろうし、あくまでも名目上は花火だ。
原始的なロケット兵器だが、台車に乗せて角度を調整して発射できるようにすれば従来の野砲よりも移動が便利だし、何よりもロケット兵器というのは無誘導で飛んでいき、周辺にドンドン着弾するので制圧効果が高い。
第二次世界大戦においてスターリンのオルガンという異名でドイツ軍から恐れられたBM-13も普通の兵器に比べて安価で補充がしやすいという利点があったし、いずれ数年以内には部隊に実戦配備できるように調整するつもりだ。
「軍事面ではざっとこんな感じだ。次は経済面の報告をいってみようか」
「はいっ、経済に関しては青龍とマイソールとの間で砂糖と香辛料を交換し、香辛料をフランスに持ちこむ貿易方法を確立させる手順が整いました。あとは砂糖の生産を推し進める頃合いです」
「おぉ、それは良かった。これで生産を行えるようになれば青龍の価値も増すからね。生産基盤を確立させてからどしどしやるべきだよ」
そして経済面では青龍との貿易中間地点としての利点を生かして青龍で生産された砂糖などを輸出し、そこで儲けたお金を使って香辛料を購入し、フランスに持ちこむといった貿易方法などが立案され、砂糖の生産体制が整う再来年末に実施する事になった。
マイソール王国への工場の建設も行うことになるが、フランス国営企業が中心となって三年後を目途に建設が開始される。
今は国内での工場の生産と従業員の育成に力を入れているので本格的な経済貿易が行われるのはそれ以降になりそうだ。
……で、本来ならこうしたフランスにとってプラスになる話題でもっと会議を和やかな気持ちで迎え入れたいのだが、生憎そうはいかないのだ。
というのも、とうとうイギリスで大規模な動乱が発生したのだ。
甘いミルクティーを飲み干してから渡された資料に目を通して、事の経緯を説明しよう。
事の発端は10月5日の正午ごろ、ロンドンのブリクストン市場で『新大陸における領邦軍の裏切り行為への懲罰を!』というスローガンを掲げた王党派の団体と、独立した北米連合を擁護した上で戦費が嵩んで経済が不景気になり、債務者が増えているのを打開するために『新市民政府論』の必要性を唱える学生達が衝突し、衝突の仲介に入った兵士達が王党派に味方して学生達を一方的にタコ殴りにしてうち2名を反逆を企てたとして、その場で剣で突き刺して殺害したそうだ。
その知らせを聞きつけた近隣の住民や、イギリス軍の大敗北によって債務が増えて生活苦になって鬱憤を募っていた市民たちを巻き込んで学生達を守るために兵士との乱闘となり、やがては兵士の身につけていた武器を奪って近くの債務者監獄を襲撃し、債務者を解放するという事態に発展したという。
……これ、状況は違えどフランス革命のバスティーユ牢獄襲撃事件みたいな流れになってきている事に気が付いたのだ。
そして国土管理局の職員からの報告でさらに事態が悪化しているという事まで知らされたのだ。
「デオン氏の報告によれば、今現在ではブリクストンだけではなくロンドン近郊やスコットランドにも拡大しているとの事です。国王のジョージ3世が公の場でも姿を見せず、イギリスでは健康不安説も飛び交っていき、国王並びに議会に対する民衆の求心力も低下傾向にあるという事です」
「それは……つまり、情勢不安がより一層増していて危険な状態だという事かね?」
「はい、国会の庶民院(※日本で例えると衆議院に相当する)では首相であるノース男爵が新大陸での敗北という重大責任を負い内閣総辞職を宣言しましたが、それに伴って与党のトーリー党や最大野党のホイッグ党の間でさらに政治闘争が激化、責任問題の押し付け合いだけでなく自分達を支援してくれている支持者たちを使って互いを非難しあう有様です……結果的に国王の容態が悪化しており庶民院では政治を取りまとめる人物がおらず、もはや機能不全状態に近い有様です」
「ただでさえ莫大な債務を国が抱えて借金しているというのに政治闘争で機能不全だと……では、今のイギリスにはまとめ役すら不在という事なのか!」
「残念ながらその通りです……」
その報告を耳にして会議室の空気は張り詰めていくのであった。




