258:インドからようこそ!
新大陸での問題も深く考えなければならないが、今日の午後はインドからはるばる使節団がやってきているので、彼らとの面会をしなければならない。
午後は夕食も使節団の面々と一緒に食事を取ることになっているので、彼らと和気あいあいとしないとね。
使節団は国の代表であるし多メンバーで構成されている団体なので、彼らには最大限の礼儀を持って迎え入れることが重要だ。
これも王としての努めでもあるからね!
インドといっても現代のようなインド共和国のようにまとまった一つの国家ではなく、この時代では様々な国が入り乱れていた。
その中でもフランスとの関係が深く、一応は七年戦争後にフランスに残されたインドの拠点があるマーヒ(現:インド共和国ケーララ州に属する都市であり、マエという都市名になっている)周辺の南インドを保有しているマイソール王国からの使節団がやってくる。
(それにしてもマイソール王国から使節団がやってくるとはね……蒸気機関の噂を聞きつけて来たのかな?)
マイソール王国……かつて南インドにあった国であり、HOBFをやり込んだ俺でも実績解除の為に3回ぐらいしかプレイしていない国だが、この国はインドの中でも最も近代化改革を成功させており、イギリスとの戦争ではイギリス軍に対してロケット兵器を使用して損害を与えた事でも知られている。
マイソール王国を含めたインド諸国がイギリス統治領になってもマイソール王国の歴代君主は近代化の重要性を認識していた為に、国の発展と開発を最優先で実行し、国の教育システムの構築を行い土壌基盤を築く。
インド独立後も、培ってきた教育システムといった近代化の恩恵を最大限に活用し、コンピューター関連の会社を含めたIT産業や航空宇宙産業が盛んであり、インドでも随一の重要な経済・科学研究の拠点でもあるのだ。
(アジアの貿易拠点でもマイソール王国は外せないよなぁ……フランスで入ってくる香辛料の輸入元はこの国を経由しているし、何よりもアジアでは数少ない同盟国だし……青龍からマイソール王国までの拠点の航路を確保しておくのもいいかもしれないな……)
そう、マイソール王国こそインド亜大陸で最も重要な国であり、フランスの数少ない同盟国の一つでもあるのだ!
念のために言っておくが、台湾の青龍を拠点にした理由についても極東地域には無補給ではいけないので中継拠点であるマイソール王国への港を使わせてもらう必要がある。
つまるところ、青龍からマーヒまでの航路が確保できればフランスとしてもより一層の海洋貿易がやりやすくなるというわけだ。
(そりゃインドは人口も多いし魅力的だけど、大部分は七年戦争時にイギリスに戦後賠償として取られたからなぁ……フランスに友好的な国はインドだけだとマイソール王国ぐらいだし、それだけだと不安なんだよなぁ……もし戦争に負けていなければ台湾じゃなくてもインドに投資すれば元は取れるよ)
七年戦争時、ヨーロッパ方面ではフランス軍がイギリス軍やプロイセン軍にボコボコにされて身動きが取れずに結果的にイギリス東インド会社によって占領されたんだよなぁ……。
幾つかの土地は返還されたけど、実質的にイギリス資本による経済的支配がされていることもあり、俺が転生した時にはフランス政府はインド方面を半ば手放している状態だったというわけだ。
そんな半ば見捨てられていた状況下でもマイソール王国は決して負けていなかった。
転生する二年前に起こった戦争では、インド北部最大の国家であるムガル帝国やイギリス東インド会社の軍勢相手に有利に戦って有利な条件で和平協定を結ぶことに成功しているんだよね。
こんなガッツのある国と、もっと早く手を結びたかった……。
いや、正直に申し上げるとインド方面に関しては閣僚会議とかでも殆ど取り扱いが無かったのと、俺自身の確認不足もあったのだ。
ルイ15世に尋ねた時も、インドからすでにフランス東インド会社は事実上撤退しているので殆ど利益は出ないよと言われてしまい、官僚からも実質的にインドに関してはイギリスが支配を強めているので投資などは控えた方がいいですよと言われて俺は諦めていた。
さらに悪いことに使節団も本来であれば1770年7月頃にやってくる予定だったのだが、赤い雨事件の影響もあって急遽キャンセルに……。
それが巡りに巡って6年後になるとは……。
投資じゃなくても、貿易拠点としてもっと活用するべく行動すべきだったな。
なんたる迂闊な失態だ……。
これには思わずため息をついてしまう。
(はぁ~……。全く……。せっかく転生してもインド方面の事は自分でよく調べないとだめだ)
本当にゲームでも史実でも、このマイソール王国は思っていた以上に君主が有能であり、それでいてヨーロッパの技術力を評価して近代化に向けて努力を積み重ねてきている事で有名である。
何かと身分制度や出身等でインドでは庶民が出世するのはキツイとされているが、このマイソール王国では実力や能力さえあれば身分を問わず出世できるチャンスがあったとされている。
というのも現在の国のトップであるハイダル・アリーに関しては元からボンボンだったわけじゃない。
なんとこの人は元々軍人であり、それも傭兵として各地を転々としながら数々の戦場を渡り歩いて、マイソール王国にて将軍として地位を確立した後、事実上のクーデターを引き起こした上でマイソール王国を治めていたオデヤ王朝を傀儡化させて、実質的な国のトップに上り詰めた実力派の人でもある。
傭兵が国家のトップにまで上り詰めるのは歴史上然う然うないだろう。
ファンタジー小説でも傭兵の成り上がりで国王まで行った例は数が少ない。
実権を握ってからは国家運営もしっかりと行っているので単なる軍事一強ではなく、経済的な改革もドシドシやっているのでインドでも発展が著しい国でもある。
一応、オデヤ朝は滅んではいないし国王がいるのだが、政治的・軍事的にも権力を掌握しているハイダル・アリーによってオデヤ朝は完全に飼いならされた羊であり、権限は殆ど持っていないに等しい。
ちなみにハイダル・アリーに反抗的だった国王は謀殺されたそうだよ、致し方無い犠牲になったのだ。
つまり他国からみても国の実権を握っているハイダル・アリーによって国家が運営されているというわけだ。
そんな彼の役職は首席大臣……日本でいう所の総理大臣の地位に就いている。
将軍をしていたから軍事政権的なのではと思った時期もあったが、わりと柔軟な思考をし勉学にも励んでいる人なので決して軍事独裁者というわけではない。
中央集権化を図った上で免税措置や税制改正などを行い不正チェックも厳しくし、軍隊の近代化や生活の質を向上させて国庫を潤沢にした事から、庶民層だけでなく商人から絶大な人気を誇っていることから、国民から熱烈な支持を受けている国のトップでもあるわけだ。
今現在マイソール王国はインドでも経済発展を遂げている場所なのだ。
(改めてハイダル・アリーの事をインド担当の職員から聞いてみたわけなのだが……なろう小説もビックリの成り上がり人生だし、もしかしたら主人公スキルでもあったのでは?)
何気に国を立て直すばかりでなく、インドでも有数の軍事力と経済力を保有する国家でもあるので、ハイダル・アリーに関して言えばフランスにとって心強い味方と言えるだろう。
しかし同時に、マイソール王国はフランスの同盟国である故に、インドでの利権を持っているイギリスとは犬猿の仲でもある。
今のところマイソール王国とイギリスとの間で休戦協定が結ばれているので平和は保たれているが、それも永遠ではないのでアメリカへの統治支配が失敗したイギリスがインドで損失分を回収しようと躍起になるのは目に見えている。
マイソール王国には多分イギリスのアメリカでの敗退が知らされていないと思われるので、使節団にはその事も話さないといけないだろう。
インド方面におけるフランスの影響力を巻き返すことは無理かもしれないが、かのマイソール王国との関係維持をするのはやぶさかではない。
俺はマイソール王国の使節団との謁見を行うのであった。




