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23:愛など感じぬ

総合評価1万pt達成ありがとうございます!!!

これからも邁進してまいりますので本日初投稿です

★ ☆ ★


ヴェルサイユ宮殿の片隅で一人の女が怒りを爆発させていた。

女の足元には割れた花瓶や破けたシーツが散乱している。

周囲にいる女性陣もあまりの気迫に押されてしまい、女の破壊行動を止めることができないでいる。

その女はアデライードであった。

目を真っ赤に充血させて手当たり次第に八つ当たりを繰り返していた。


「もう我慢なりませんわ……オーギュストを徹底的に懲らしめてやりましょう!こうなったのも……こうなったのもオーギュストのせいですわ!!!」


先日の舞踏会におけるオーギュストへの暴言と周囲に配慮の欠けた行動は国王陛下の耳にもしっかりと届き、国王陛下が大激怒した上にアデライード派の人間はしばらくの間、舞踏会への参加を禁じられたのだ。

アデライードは部屋に戻ると大いに怒り狂い、そして現在に至るまで興奮状態で物に八つ当たりを繰り返していた。

見かねた侍女の一人がアデライードに制止を促そうと彼女の前に出た。


「アデライード様!!!お気持ちは分かりますがどうかお静まりください!!!」

「えぇい!!!私に指図しないで!!!」

「きゃぁぁっ!!!」

「そもそも!!!なんでこんなことになる前に止めなかったのよ!!!!」


アデライードは制止しようとした侍女を拳で殴りつけた。

何度も、何度も強打していくうちに侍女の顔が見る見る腫れあがっていく。

庶民が一年かけて稼がないと入手できない高価な壺やテーブルなどを怒りに身を任せて破壊し尽くした。

侍女の顔面が鬱血して口からは殴られた衝撃で折れた歯が三本ほど、ボロボロとこぼれ落ちていく。

殴りつくして怒りが少しだけ治まったのか、アデライードは殴るのを止めて部屋の中にいる女性陣に向けて恐ろしい言葉を放った。


「甥は……!!!甥は私たちの敵です!!!!いいですか!!!オーギュストは私達の敵です!!!」


そうアデライードは宣言したほどにオーギュストを憎んだ。

敵となったからには身内にも容赦しない。

当初はアントワネットに危害を加えようと企画はしたが、オーギュストの入れ知恵によってガードが厳しい上にオーストリアとの関係が破綻し戦争状態になりかねない事を考慮してか、意外にもアデライードはこの案を見送ったのだ。

考えていると一人の若い女性が一歩前に出てアデライードに報告を行った。


「あの……一つよろしいでしょうかアデライード様?」

「……何?」

「先程入った情報ですが、オーギュスト様が風邪で寝込んでいるそうです」

「……あら、それは本当?」

「はい、主治医の一人から話を聞きました。間違いないそうです」

「……フフフ、やった!やったわ!!!あのオーギュストが風邪を引くだなんて!!!もっと風邪で苦しめばいいわ!!!アハハハハハハ!!!」


アデライードは先程まで怒っていた時とは打って変わって今度は甲高い声で笑い始めた。

自分の行いを邪魔して妨害してきた目障りなオーギュストが風邪を患ったからだ。

まさに願ったり叶ったり。

アデライードは一気に上機嫌となった。

若い女性はさらに話の続きを話そうとしている。


「おほほほ!!!少しはこれで懲りたでしょう!!!」

「あの……アデライード様?その話の続きを話してもよろしいでしょうか?」

「ええ、いいですよ!!話してみなさい!」

「その、オーギュスト様が風邪を引いたという事で、国王陛下がデュ・バリー夫人を連れてオーギュスト様をお見舞いに行ったそうですよ……」

「……それは本当なの?」

「ええ、はい……確かです」


喜びも束の間、オーギュストが風邪を引いた事で国王陛下がデュ・バリー夫人を部屋まで連れてきて見舞いに来たという話を聞いて上機嫌から一変して不機嫌になる。

雷が落ちる三秒前だ。

アデライードは大きく息を吸ってから叫んだ。


「なぜ、なぜ父上は……そこまで甥を!!!もういやああああああああ!!!!」


髪の毛をぐしゃぐしゃにしてアデライードは取り乱す。

アデライードの気分は一気に急降下していく。

オーギュストはデュ・バリー夫人とも人間関係がよろしいらしい。

その報告がさぞ気に食わなかったのだろう。

報告を聞いたアデライードは目を充血させて部屋にいる全員に聞こえる声で恐ろしい言葉を放った。


「やはり甥やあの愛妾デュ・バリーは邪魔ですわ!!このままでは私たちは一生冷遇され続けるわ!!!もはやまとめて始末するべきだわ!!!」

「!!!」


それはアデライードによる国王陛下とオーギュスト暗殺を実行に移せとの命令であった。

デュ・バリー夫人と対立していたアデライードにとって、もはや甥やアントワネットまで対立しているデュ・バリー夫人の味方になってしまったのだ。


日頃の行いが悪いのと異常な程の嫉妬心から対立をしているのだ。

もはや宮殿内ではデュ・バリー夫人やアントワネットを支持する者達の数が多い。

先日の舞踏会での悪行が決定打となっている。

アデライード達は孤立しているのだ。


孤立し、気が付けば追い詰められる彼女たちが名誉を回復するために行える行動はたった一つ。

政敵を謀殺して自分達の操り人形を傀儡に立てる事であった。

彼女たちのプランではルイ16世の弟であるルイ・スタニスラス(史実ではフランスの王政復古後に国王に即位しルイ18世になった人物)を傀儡にしようと考えていたのだ。


スタニスラスは上昇志向が強く兄であるオーギュストとは対抗していたのだ。

兄弟で反目しあっている事を利用して甥と国王陛下を暗殺し、スタニスラスを国王に任命させて成人になるまで摂政としてアデライードらが就くことも出来得る。

それであれば今まで続いてきた勢力として返り咲くことができるのだ。


しかし、王太子や愛妾……さらには国家元首である国王陛下の暗殺を堂々と言ってしまっている事で周囲は唖然としている。

取り巻きで妹のヴィクトワールやソフィーですら、あまりにも物騒すぎる発言をしている姉に対して流石に顔を真っ青にして制止を求めた。


「お姉様!!!流石に暗殺などすれば私たちの身も危ういですわ!!!どうかお考え直しを!!!」

「ヴィクトワール!!!もはや私たちに残された時間は少ないのよ!!!このままでは父上はあの愛妾に唆されたまま権力に居座り、私たちを嫌っている甥が元気になり次第追放を命じるに違いないわ!!!ならもはや手段を選んでいる時間は無いの!!!」


頭のねじが外れたアデライードはひどく興奮して話をしている。

目は大きく見開き、まさに狂信者のような目つきであった。

それほどまでにアデライードの精神は追いつめられていたのだ。


すでに舞踏会での一件があったことで、アデライードたちの地位は大きく揺らいでいる。

おまけに彼女よりもずっと歳が下のオーギュストのほうが彼女たちよりも冷静に振る舞っていたので相対的にオーギュストやアントワネットに人気や支持が向かっていく。

さらに言えば、父親であるルイ15世から激怒された末に言われた言葉に大きなショックを受けていたのだ。


『アデライード、特にお前のような娘は産むべきではなかった。お前は死産してしまえばここまで醜悪な姿にはならなかっただろう』


血の繋がりのある実の父親から言われたこの言葉は、アデライードの精神の奥深くに突き刺さり、それまで止めていたストッパーを解除させる要因となった。

産まれたことへの全否定。

それを聞いたアデライードは、すっかり情緒不安定になっていった。


ワインを何本も開けてはがぶ飲みし、アルコールに溺れるようになっていったのだ。

そしてアデライードの心には父親への尊厳や愛着も失せていた。

代わりに残ったのはルイ15世やオーギュストに対する憎悪だけであった。

そしてアデライードは決意した。


「今夜決行してもらいましょう……父と愛妾……そして甥は正気を失っています!!!もはや手段を選んでいる場合ではありません!」

「お姉様!!!」

「それだけはおやめください!」

「……ヴィクトワール!ソフィー!二人とも告げ口をしたら最初に殺すわよ」

「!!!」

「いい?もはや愛妾に現を抜かす国王陛下は要らないの、新しい国王陛下をお連れする時が来たのよ!!アハハハハハハ!」


もはやアデライードの制止役を担っていたヴィクトワールやソフィーですら姉の暴走を止めることはできない。

アデライードは今夜、王太子・国王陛下を暗殺するべく刺客を送り込む準備を整えようとしている。

念入りに、そして素早く殺すために。

彼女はもはや正気ではなくなっていたのだ。

その狂気を止めるものは、誰一人としていなかった。

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― 新着の感想 ―
アデライード、内実は単なるヒステリーと強迫症の合併症なのに、「もう先が無いならさっさと行動した方が吉」というある意味では芯を突いた指針なのがたち悪いw
[気になる点] >ワインを何本も開けてはがぶ飲みし、アルコールに溺れるようになっていったのだ。 そしてアデライードの心には父親への尊厳や愛着も失せていた。 代わりに残ったのはルイ15世やオーギュストに…
[一言] 死産になっていればよかった これは本当に発狂してもおかしくはない暴言ですね。 それで暗殺に走るのはもうどうかと思いますが動機は同情できますわ。
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