237:サンタクロース大戦略ver.2.37
☆ ☆ ☆
1775年12月24日
……。
……。
ふぅ……。
熱い夜の思い出と運動に勤しんでいたルイ16世だ。
最近アントワネットがテレーズにも妹や弟が欲しいと思いますわと言ってきて、ナチュラルに次の子供を欲しがっていたのだ。
その気持ちに応えているが、まだ次の子供を授かるまでには時間がかかりそうだ。
夜明け前なので暗ーい寝室でアントワネットを抱きしめながら今日は何の日か考える。
転生前は嬉しい日でもあり、嬉しくない日でもあった。
そう、クリスマスだ。
みんな大好きクリスマスの日だ。
某有名歌手が歌っているクリスマスソングが街中で流れて、子供がいる家はプレゼントを買い、おもちゃ屋はクリスマス特需で商売合戦。
ゲームショップやゲーム販売サイトでは割引セールが実施されてお買い得の日だし、ゲーミングパソコン大好きマンの俺は毎年この時期になると数万円をはたいてゲームソフトを買い占めたものだ。
……大半は買って数時間で積みゲーと化したがね。
しかし、クリスマス故に繁忙期の時期と重なるので、物凄く仕事が忙しくなるのだ。
クリスマスの前後からは新年に向けて年度末の大詰め作業が待っているし、取引先との年度末作業とやらで運送会社との会談を行い、荷物の運搬指示なども出さないといけない。
なので家に帰るのは午前1時とかしょっちゅうだった。
もしそんな繁忙期の中で発注ミスなどの大事をやらかせば上司と一緒に関連会社に頭を下げまくるツアーが開催される。俺も一回やってしまった事があったが、あれは人生の中で最悪のツアーだった。
もう帰るのがめんどくさくなって会社近くのホテルに泊まろうとするもビジネスホテルは満席、おまけにリア充がホテルを満席にする日とかち合ったもんだから割高料金でお金を取られたものだ。
(まぁ……それでもクリスマスは一大イベントだったからなぁ……最初に転生した年はルイ15世が死んだ直後だったこともあって国内がお通夜状態だったし……クリスマスイベントそろそろ経験しないとね!)
もうじき年が明けるし、今日はクリスマス・イブの日だ。
クリスマスが本格的に始まるのは明日からでもある。
ジングルベルを爆音で鳴らして子供たちにプレゼントを届けたいサンタさん……。
全世界の子供たちにプレゼントを届ける為にジェット戦闘機並の速度でプレゼントをばら撒くのを想像したら思わず吹き出しそうになる。
以前科学検証本とやらでサンタクロースが世界中の子供たちにプレゼントを平等に配るとしたら子供一人当たり1.5秒ぐらいしかプレゼントを渡す時間の余裕がないので、ジェット戦闘機並の速度でクラスター爆弾をバラバラと落としていくようにしないとプレゼントは届けられないと書いてあったな。
さらにそうした場合にはサンタクロースが通過する際の衝撃波で家の窓ガラスが吹っ飛ぶとも書かれていたし……。
サンタクロースは兵器だった……?
まぁ、そんな事はともかくとしてテレーズにもクリスマスプレゼントをあげたいと思っている俺としては凄くウキウキしているのよ。
自分が子供の頃にクリスマスプレゼントを貰うのが凄く好きだったみたいに、テレーズにも何かプレゼントをしてあげたいなぁと思っている。
よーし、パパクリスマスで張り切っちゃうぞーと言いたいのだが……残念ながらこの時代にはサンタクロースという人物は有名ではないし、むしろ宗教的にはイエスキリストが人々の前に姿を現した公現を讃える1月6日のほうがビックイベントなんだよね……。
それにフランスではクリスマスとはいわずに、ノエルと呼んでいるんだ。
あとこれ12月25日からクリスマス関連のイベントを行い続いて1月6日の公現祭を持って締めくくりというやり方らしい。
それまではずっとお祝いのターンが続いているんだ。
日本だと熱心なキリスト教関係者の方々を除いて12月24日から25日までクリスマスで、それ以降は繁忙期!年末!年賀状準備!大掃除!大晦日!あけおめ!という順番になる。
もう転生して5年ということもあり、転生前の騒々しい頃が懐かしく感じる。
俺の場合、大晦日を含めて大規模同人誌即売会に一般参加し、りんかい線で人の荒波にもみくちゃにされてへとへとになりながらもやるべき事は済ませてから新年を迎えていた。
元旦は午前中はゆっくりとコタツで猫のように丸くなりながらダラダラとし、近所の神社で参拝しておみくじを引いた後、ネット友達(主にSNSで知り合ったオタク仲間)を誘って大晦日の同人誌即売会で買いそびれた新刊を秋葉原の同人ショップで買いあさり、電気屋で新年フェアでゲーミングパソコンのグラフィックボードを眺めていたな俺……。
物凄くゲームとパソコンオタクって感じしかないですねこれは……。
まぁ、そんなわけで今年のクリスマスは思い出づくりをするべきだろう。
決して人気がないわけではなし、夕飯が豪華になるんだけど……どちらかといえば外ではなく家で家族団らんで過ごしましょうというイベントでもあるわけよ。
日本みたいにカップルがホテルでお盛んになるイベントではないのだ。
しかも王室ということもあり、基本的にキリスト教会がやっている降誕祭とやらにも出席しなければならない決まりになっているのだ。
夕方から教会で御祈りをしながら夜の21時ぐらいまで延々と歌を歌うんだよね。
ジングルベルやサンタクロース関連の歌なら熱唱できる自信はあるが、生憎本当に真面目な降誕祭ということもあり、歌は楽しいというよりも神聖な儀式のような感じで歌う。
勿論、テレーズも参加させるわけだが、歌が好きなテレーズの事なので大声で熱唱するかもしれない。
その時は俺も一緒に熱唱してあげてフォローしてあげよう。
ふと、隣でアントワネットが寝返りをうってしばらくすると目を覚ました。
「んんっ……あっ、オーギュスト様……もう起きていらっしゃったのですか?」
「おお、アントワネット……すまない。起こしてしまったかな?」
「いえ、そんな事はありませんわ。たまたま目が覚めたのです、もうすぐ夜明けですもの。今日は待ちに待ったクリスマスですわ!」
「そうだね。今年のクリスマス・イブは皆への労いも兼ねて教会の行事を終えたらささやかながらクリスマスパーティーでもしようかなと思ってね。どうかな?」
「パーティー!いいですわね!けど……パーティーの準備はどうするのですか?」
「実はアントワネットがパーティーを許可したらこの部屋の飾り付けを施設課の人達にやってもらうように言ってあるんだよ。すでに飾り付けもどのようなものにするべきか決めてあるから完成するまでのお楽しみさ」
「まぁ!準備が早いのですね!」
そう、アントワネットがもしパーティーをすることに賛成してくれたならば3時間ぐらいでヴェルサイユ宮殿の空き部屋にて飾り付けを施設課の人達が取り計らうようにお願いしていたのだ。
本来であれば昨日23日頃にアントワネットに言うべき事だが、実のところうっかり忘れてしまっていたのだ。
これは俺のミスだ。
とはいえ、まだまだ時間的には大丈夫なので教会で歌を歌っている間に施設課の人達がやってくれるはずだ。
「パーティーそのものは簡素だけど、お世話になっている皆を呼んで小一時間ほど労いの場を設けようと思ってね。勿論、予め参加者は絞っているからそこまで大人数ではやらないよ」
「どのくらいの人数になりそうですか?」
「そうだね……ざっと16人から20人ぐらいかな。一部屋が埋まるぐらいの人数だし……それに皆アントワネットも知っているメンバーだよ。ランバル公妃も参加するって言っていたからね。お世話になっている人達への労いも兼ねて行うクリスマスパーティー……どうかな?」
「いいと思います!普段からランバル公妃やルイーズ・マリー夫人にはお世話になっておりますし、大勢で華やかなパーティーも好きですけど、知っている人達で集まってパーティーをしたほうが緊張をしなくていいですわね」
クリスマスとはいえ、この時期はやはり寒いので温まる料理を中心に世話になっている人達を呼んで軽く労う会にもなりそうだ。
そのほうが俺にとってもアントワネットにとっても肉体的・精神的な疲れも減るだろう。
ハウザーやランバル公妃といった重鎮メンバーをはじめとして、年中の大半を俺達王族や宮殿の関係者の胃袋を満たしている料理総長、各職員代表者、改革派の各分野の代表者……王室を支えてくれている人達を部屋に呼んでもてなすパーティーを開こうと思う。
(色々と皆には世話になりっぱなしだからね……ここは一つ、国王として仲間や世話になっている人を労ってやるか!)
事前にパーティーを開くことは伝えてはいるけど、こうしてひっそりと限られた人達で行うクリスマスパーティーを開くのは初めてだ。
プチイベントだが、俺の心の中ではビックイベントになりそうだ。
みんなへの労いパーティーの準備をコツコツと進めながら俺はクリスマス当日の朝を迎えたのである。




