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215:フランス領台湾

台湾が好きなので初投稿です

☆ ☆ ☆


1775年5月24日


今日は閣僚級会議が開かれている。

最初に新大陸とロシア方面の情勢について報告を受けた後、会議の本題である「清国領の台湾買収に関する議論」が行われた。

意外にも台湾のフランス領への買収に関しては反対意見は殆ど出なかった。

清国との交渉次第ではあるが、仮に台湾の買収が成功すればフランスは東アジア地域において清国や日本との貿易を積極的に行える土地を確保できる。

また、これらのアジア地域には最新鋭の科学技術である蒸気機関の導入が進んでおらず、大半は植民地領のほんの一部の特権階級者向けにしか作られていないので、機械の輸出を担うのであれば未開拓の市場を独占する事も可能になるのだ。

アジア地域別の各国の推定人口を示したグラフを提示する。


「清国は3億人、日本は3千万人の人口を抱えている国家だ。市場の状況を考えれば蒸気機関を見ていない人達が大勢いるだろう。新しい産業を売り込むとしたら、この地域が大きなチャンスだと俺は見ている。蒸気機関だけじゃない、医療や保存食といった分野でも大きな市場を独占することができるようになり得るのだ。これはフランスの東洋進出の先駆けになるだろう。ハウザーはどう思う?」

「東洋では陛下のおっしゃる通り、蒸気機関をはじめとする科学分野に関しては遅れを取っているのもまた事実です。特に日本は鎖国政策を実施しているので海外の情報はネーデルラントの出島で請け負っているので、必要とあればネーデルラントと交渉して日本側とのコネクションを持つのもいいでしょう」

「ネーデルラントの仲介があれば日本との貿易も出来るかもしれないな。それに、ネーデルラントとの外交関係は改善しているし、もし清国が台湾の買収に乗る気であれば是非ともこの土地は確保しておきたい」

「ええ、日本・清国・琉球……東アジア地域でもまだ欧州諸国が手を付けていない魅力的な貿易路がありますねぇ……台湾はいずれの国に対しても近い場所にあるので貿易拠点としてはうってつけです!」


メリットが大きい場所だけに、土地を購入するのに中々意欲的であった。

国土管理局の最高責任者であるハウザー曰く、アジア方面にも情報の目を行き届かせる意味で、進出をするべきだと言い、スウェーデンに売却したトバゴ島の資金を使っても台湾本島の開発・整備に余力が出るという結論に至った。

特に、一番台湾の買収に乗る気だったのは財政長官を担っているネッケルであった。


「二週間前にスウェーデンとの貿易交渉の際にトバゴ島の売却を正式に通達致しました。交渉の末、トバゴ島の売却価格は2億2千万リーブルに及びます。我が国の金貨に換算して550万枚分となり、フランス全土への教育・医療体制の設備投資や交通整備・上下水道の敷設、科学アカデミーへの投資、失業者対策費用、従来の債務返済費用などを差し引いても1億1千万リーブルが余ります。我が国の経済状況を鑑みて、非常用資金3千万リーブル分を残し、8千万リーブルを台湾投資の為に使用しても問題ないでしょう。王立銀行ではサン=ドマングの収益によってフランス経済を少なからず潤わせていますが、これからはより他の地域の開拓も必要であると考えております」

「初期投資をあとはどれだけ上手く使うかだな……8千万リーブルでもかなりの大金だしね」

「仮に買収に成功したとしても、まだ台湾には未解明な場所などがあります。故に慎重に開発を行うべきでしょう」

「コンドルセは慎重派だね……ん?ボーマルシェはどう思う」

「私は……台湾の全土編入には反対します」


コンドルセ侯爵は慎重論ではあったが台湾の買収を最終的には了承し、唯一台湾本島の全土編入に反対したのはボーマルシェであった。

勿論、彼なりに理由があってのことであり、俺は彼の意見もしっかりと聞いた。


「ボーマルシェは台湾の買収には反対のようだが、理由があるのかね?」

「はっ、恐れながら台湾は確かに魅力的な立地であり、日本や周辺諸国との貿易には最適でしょう。しかしこの場所はその地理的条件でフランスに不利でもあるのです」


ボーマルシェの指摘は台湾周辺にフランス領の島や領土がない事であった。

確かに、台湾周辺はフランスの同盟国はいないし、強いて言えば味方になり得る国はフィリピンを植民地化しているスペインぐらいだろう。

台湾より北の地域には欧米列強諸国はいない上に、南は既にスペインやイギリス、オランダなどのヨーロッパ各国が利権を巡って植民地争奪戦を繰り広げているぐらいだ。


「つまり、ボーマルシェが懸念しているのは戦争や内乱が起こった際に援軍が直ぐに到着できないという事だね?」

「おっしゃる通りでございます。サン=ドマングでの動乱では海軍が部隊を編成してサン=ドマングに到着するのに二週間を要しました。台湾となれば気象条件や物資の運搬等を含めても早くて二ヶ月、場合によっては三ヶ月程有します」

「成程、速達で情報が届くとしてもそれは二ヶ月前の情報になるというわけか……」

「はい、それに台湾には清国の統治が及んでいない場所がある上に、港町の開発もあまり進んでいないそうです。なので私としては台湾の全土統治ではなく、港町周辺を統治し開発をするに留めたほうがよろしいかと存じます」


ボーマルシェの反対理由は理にかなっていた。

台湾には先住民族の人達がいるが、そうした人達との摩擦が大きく生じれば大規模な反乱が起こったりでもしたら鎮圧は難しくなるだろう。

最悪台湾を放棄しなければならない。

そうした事態を避ける為に、まずは港町を確保してから都市部の発展を行い、都市部の開発が済んで余力があれば次に地域を購入するといった段階的方式を行うように提案してくれたのだ。


「そうだね、確かにそのほうが費用や土地も安く済むだろうし、いきなり全土併合するよりは港町から開発を進めていく手法のほうが良さそうだ」

「ええ、それに全土統治は経済的負担も大きいですし、10年……いや20年を見越した上で開発を行うべきでしょう。予め統治をするにしても、ゆとりを持って都市開発を済ませてから移行したほうが良いかと進言致します」


最初は港町周辺から開発を行い、それが順調に進んで発展すればそこからさらに周辺の土地を購入して行うというやり方だ。

どちらかといえば有名な都市開発ゲームのような感覚だな。

それに台湾本島は日本の九州よりすこし小さいとはいえ、サン=ドマングよりも面積は広い。

規模と場所を考えれば全土併合もメリットではあるが、開発でいれば港町周辺を買収してからのほうが良さそうだ。

改めて、しっかりと意見を言える場を作って本当に良かった。


「……まだまだ台湾はサン=ドマングとは違い未開発の場所が多いですね。東洋と西洋の文化的な差があるとはいえ、港町を整備してから段階的に周辺地域を開発するようにしたほうが良いですね」

「それに清国ですら管理が行き届いていない先住民族がいるのもネックになりますね。全土併合だとこれらの民族への対応も我々がしなければならないですし……まずは港町の統治を行い、そこから規模を拡大していく方針のほうが良さそうです」

「その方針のほうがコストもリスクも全土併合よりは低いですからな。尚且つ台湾への投資も港町に集中すれば経済都市として発展するでしょうな。金融機関を置けばアジア地域の富もそこに流れるようになるでしょう」


ボーマルシェの意見によって全土ではなく購入した土地を手始めに開発してから……というのがボーマルシェの真っ当な反対意見もあり、いきなり全土ではなくまずは一部地域から……という話になった。

俺もボーマルシェの意見を聞いた後は彼の意見を採用し、まずは港町を開発・発展する方針を定めたのだ。

香港のような貿易都市として機能できればいいだろう。

……であれば、立地条件として最適なのはここだろう。


「港町を開発・発展するとなればどこがいいかな?俺としては台湾北部の基隆ジーロン周辺が良いと思うんだが……皆はどうだね?」

「台湾南部に清国の行政機関が集中している所を見るに、陛下が仰っている通り台湾北部付近はまだ開発がそれほど進んでいないようにも思えますね」

「小さい港町がある程度ですが、ここを抑えれば日本にも近いですし貿易拠点としては上手く機能すると思います」

「では、基隆を中心とした土地を買収する方針で行きましょう」


選んだ場所は台湾北部の港に位置している基隆だ。

現代台湾では港湾都市として栄えており、立地条件としても清国・琉球・日本に近いので貿易港として申し分ない場所だ。

ここであればかなりの開発が行えるだろう。

あとは清国から基隆一帯を買い取るだけだ。

俺達は争いで土地を奪うのではなく、平和的な取引で土地を買うのだ。

清国への使者の派遣なども会議で議論され、フランス政府は1775年末までにアジア地域での貿易路の確保の為に台湾基隆の買収に向けて大きく動き出したのであった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 基隆はもともと鶏籠(雞籠、ケーラン)と呼ばれていました。基隆に改変されたのは1875年以降です。
[一言] 琉球と薩摩の貿易は密貿易に近い形でしたので、琉球が薩摩や当時の日本との外交関係を多少有利にしようと考えて台湾に進出したフランスと交易を持とうとする事は考えられます、何より進んだ軍事力を持つ陸…
[一言] 琉球と交易して、そこから間接的に薩摩と交易するのもできるのかな? 蒸気機関はその当時日本には伝わってなかったと思うから、 歴史がかなり変わりそう
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