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181:セキュリティ対策はしっかりしよう!

アントワネットの乗馬服姿は結構可愛いので良かったら見てほしい。

絶対インスタ映えするで

小切手に気前よくサインして契約を結んだわけだが、割と乗馬服って高かったんだね。

一着あたり150リーブル……現代の価値にして約75万円相当もするという。

これでも上流階級向けの衣装にしては破格ともいえるほどに安いらしいが、それでも高いと感じるのは日頃の節約癖が今だに抜けていないのかもしれない。

今回の購入費用は全て王族関係者が年間使用する使用支出金の中から出しているので、これぐらいであればまだセーフである。


それでも、アントワネットが欲しがっていた服だし、触り心地も良かったのでせっかくだから二着購入した。

サイズなどの寸法を測ってもらい、遅くとも来月半ばまでにはヴェルサイユに届けてくれると約束してくれた。

ザイトの出展者もかなり気さくな人だったので、俺は女性のスタッフがアントワネットの寸法を測っている際にオランダの日本における貿易状況をさりげなく尋ねた。


「中々良い物を作っているね……オランダは最近東洋の市場から良い物を取り揃えていると聞くが……こうした服にも東洋のものを扱っていたりするのかね?」

「ええ、私共は扱っておりませんが、オランダ東インド会社経由では日本の着物が輸入されておりますね。ですが、かなり数が少ないので高値で取引されております」

「ほぅ……どのぐらいの値段で売られているものなのかい?」

「そうですね……私がアムステルダムで見たものだと、最低価格が……600リーブルでした」

「着物が600リーブル!王室専用の衣装と同じぐらいの値段ではないか!最低価格で600リーブルとなれば、最高級品質の着物は倍以上するんだろう?」

「はい、去年のオークションでは2000リーブルで落札された着物がありました」

「に……2000リーブル……」


オランダとの貿易で入った着物が2000リーブル……凄まじい金額だ。

これはヴェルサイユ宮殿で消費される関係者の食費代4ヶ月分に匹敵する。

数千人の使用人と王族関係者の食費4ヶ月分で最高級品質の着物が一着買えるのか……と、感心したわけだが、オランダは日本との貿易で旨味を相当持っているみたいだ。

出展者は専門家ではないが、それだけ一般人にも少なからず日本製の商品が手に入ってくるというわけだ。

彼らに直接伺う事が出来る貴重な機会だ。

出展者といくつか話をした後に、また乗馬服を購入する時はザイトを利用する旨を伝えて店を後にした。


「それにしても……こうして様々な衣装を見て、触れて……さらに購入する際には簡略化された手続きで済むのは良い事ですね!」

「うん、誰しも気に入った衣装があれば触れて確認する事も大事だからね。勿論盗みが起きないように出展している店の周りを警備の者が巡回している。混雑時にもスリや盗難が起きるリスクを減らすために予め貴重品を預ける場所も確保しているからね」

「お財布を無くしたら一大事ですものね……そう考えると、オーギュスト様が命じた『荷物預かり所』は名案でしたね」


一般参加者の混雑はほぼ確定している。

馬車からチラッと見ただけであれだけの人だかりが出来ていれば、恐らく抽選方式の入場にはなるだろう。

抽選から漏れてしまった人の為に明日以降の一般入場を優遇するように命じてある。

ただ、入場しても混在して盗難が多発するのは良くないとして、宮殿の一角に荷物預かり所を設けて預かるサービスを行うのだ。


一回利用するのに10ソル、2500円ぐらいの値段だが預かりのサービス料金だと考えれば決して暴利ではない。

財布など小物を限定に貴重品を預かるサービスで、預かる際に名前を伺ってから番号札を利用者に渡して帰る際に名前と番号札が一致していることを確認してから回収するというスタイルにしている。

万が一預かる側が紛失をしてしまった際には賠償保障として最大10リーブルを支払う事も決めている。

これは大手同人誌即売会のやり方を真似ている。

こうでもしないと窃盗に遭って被害を訴えられるよりは、預かり所で財布を預けてくださいねと言えば人々は安心感を持つものだ。


「どうしてもこうした人の多い場所では盗みをするような不届き者が出やすいからね……ヴェルサイユ宮殿でも一般入場を規制する前は盗難多発地帯でもあったんだ……」

「そ、そんなに酷かったのですか?」

「うん、酷い時だと先代国王陛下の金時計がスリに盗まれたぐらいに酷かったんだよ……」

「ええっ?!き、金時計を盗まれたのですか!」

「うん、警備がザル過ぎて堂々と王室から盗んだ奴がいたんだよ。しかも事件は未解決で誰が盗んだのかは未だに分からないんだよね……」

「えぇ……よ、よくそれだけのことがあってもおじいさま……いえ、先代国王陛下はヴェルサイユ宮殿への一般入場を許していましたね……」

「ルイ14世の時代から続く伝統に逆らえなかったのさ……皮肉なことに、それに終止符を打ったのはアデライードだったけどね」


ヴェルサイユ宮殿には窃盗団が多くいたという話を聞くが、中でもルイ15世が大事にしていた金時計が白昼堂々盗難されたという出来事を知ってからは、もっと早くにヴェルサイユ宮殿における一般入場を規制すべきだと思ったよ。

宮殿や王族関係者へのセキュリティー対策が冗談だろうと思う程にガバガバ過ぎた。


それはルイ14世の時代から対策は緩く、既にこんな話もあった。

ある日ルイ14世の居室で王の縁飾りが盗まれた。

それから5日後、ルイ14世が親しい間柄の者達と夕食を取っている間に突然テーブルに紙に包まれた状態で盗難された縁飾りが投げ込まれた。

包まれていた紙には以下のような言葉が書かれていたという。


『主席近侍が探していた縁飾りだぞ。俺の口付けとして国王陛下に受け取ってもらえ』


食事中にもしこんなものが投げ込まれたら恐怖で失禁ものである。

食事をしていた一同は恐怖のあまりフリーズしたそうだ。

しかし、ルイ14世はこんなホラー映画のような出来事に動じずに、紙に書かれていた言葉を読み上げられて一言呟いたそうだ。


『何とも大胆不敵だな(原文ママ)』


……いや、大胆だけど突っ込むところそこですか太陽王!

盗まれた縁飾りが夕食中に突然投げ込まれたんだぞ!

ホラー映画なら怨霊とかポルターガイストとかが出てきてもおかしくない状況で、大胆不敵だなと呟くとか強キャラ確定ですね分かります。


……と、このような感じで今までよく暗殺されなかったなと関心してしまう程に防犯意識が低かったんだ。

第一、下っ端の使用人の地位や給料が低かった為に窃盗や食料品を勝手に市場に横流しをしたりと酷い有様だったからね。


改めて、近世ぐらいでは賄賂や横領などが日常茶飯事のように繰り広げられていたとつくづく実感してしまった。

使用人達からの改善願い届けの中でも、食料品類が極めて違法な価格で売られていたのでやむを得ずヴェルサイユ宮殿の配膳係が王族関係者に出された食事を横流し、その横流しされた食事を購入して食べているという話を聞いてから即座に違法価格で販売している食品店を摘発して、適正価格に戻した程だ。

あと、料理なども食べれる分だけを出すように指示したのも改革を始めてから直ぐのことだった。


そりゃ俺がブルボンの改革で真っ先に行った使用人への処遇改善も防犯も兼ねて行われたようなものだ。

使用人が十分な給料をもらい、住んでいる寮の家賃の価格設定も適切に行い、それでいてぼったくり同然の家賃を吹っ掛ける宮殿周辺のホテルを買い取って職員専用の集合住宅にしたのも、ヴェルサイユから違法行為を無くすきっかけとして使用人の意識改革につなげたかったからでもある。


なにせ都心のワンルームマンションよりも狭いカビやネズミ、酷い場合だと雨漏りが平然と起こる部屋を月々の家賃10万円以上で借りなければいけなかったんだよね。

手元に残るお金を計算しても、給料の三分の一……下手をすれば半分が家賃として消えていく状況であり、さらにここからヴェルサイユ宮殿周辺の物価が高かったこともあって肉の価格も都市郊外の倍近くになっていた。

こんな状況ではモチベーションアップなんて無理に決まっている。

だから悪い部分は即座に改革のメスで斬り込んだというわけよ。


「まぁ、そういった教訓があるからこうした見本市でも同様の犯罪が無いように工夫はしたんだけどね……いずれにしても、これからもっと人が多くなるからアントワネットもその事に気を付けていこうね」

「はい!勿論です!」


見本市での犯罪……。

起きてほしくないものだ。

対策は行える範囲内で十分に行った……。

警備も力を入れているし、考えられうる範囲内ではやるべき事を全てやった。

後は、このまま大きな問題なく時が過ぎれば良いなと思った。

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― 新着の感想 ―
[一言] 作者様、更新お疲れさまです。 乗馬姿のアントワネットかわE ちょっとヴェルサイユ宮殿のセキュリティがガバガバすぎんよ〜 防犯対策をきちんと心がけよう!
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