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115:Victoria

「恐怖の反動ですか?」

「はい、その通りです。人口の殆どが黒人奴隷を中心に動かしていた国なのです。その奴隷を解放したことによって彼らは身分上は平民扱いになりました。結果、奴隷を抑制していた制度に穴が出来て、そこを突くように大勢の奴隷が奴隷解放に反対しているプランテーション農園から脱走しているのです。”自由になった身である以上、拘束される筋合いは無い”……現に、山村部辺りで活動をしている自称反乱軍に大勢の奴隷が合流している状態なのです」

「そこまで深刻な事態なのですか?」

「……恐れながら、開明的な農園は無事ですが奴隷を解放することに反対的な態度を取る農園は戦闘の構えを見せており、現在首都を中心に警戒態勢を整えている最中でございます。陛下の開明的なご判断を決して非難する訳ではありません。しかし、奴隷だった者達が一気に平民階級に繰り上がった事で人口で勝る彼らがサン=ドマングで反乱を起こす可能性が大きくなりました」


受け取った報告と言っていることは違うぞ?

元奴隷による反乱行為の危機が迫っているだなんて報告は一度も受け取った事は無い。

ましてや、国土管理局で取り扱っているサン=ドマング関連の情報でも反乱が起こっているというのは感知していない。


俺は呼び鈴を三回鳴らしてハウザー氏を呼び出した。

三回鳴らすのは緊急性の高い出来事が起こったという意味合いも兼ねてだ。

直ぐにハウザー氏が飛んできてくれたよ


「如何なされましたか陛下」

「大至急、サン=ドマングの関係者に事実確認をお願いしたい。元奴隷による反乱軍に関する情報があれば早急に……思っていた以上に事態は深刻のようだ」

「なんと……分かりました。大至急確認を致します」


これは思っていた以上に由々しき事態だ。

史実ではフランス革命と同時期に大規模な黒人奴隷だった人々による反乱がイギリスの援助によって起こり、フランスがサン=ドマングから追放されてハイチが建国されたことは知っている。


というのも、歴史シミュレーションゲームHOBFでも史実イベントモードをONのままにしているとサン=ドマングでの反乱発生率が特殊条件を除いてほぼ100パーセントになり、最新鋭の正規ライフル歩兵師団を駐留しておかないと守備隊が全滅して強制的に【ハイチ独立イベント】が起こるんだよね。

だからそうした事が起こらないように植民地政策でも、奴隷制度を悪用して酷使する事を禁じて平民の労働者扱いで取り行う事を徹底させるようにしたはずだ。


いやいや、これはゲームじゃないし現実なんだぞ。

だけど妙に引っかかるな。

農奴・奴隷解放宣言を出して去年に施行してから半年間。

サン=ドマングをはじめとした植民地では大きな問題は発生していない。

……が、ノリボス総督は赤い雨事件の影響によって事務的手続きに遅れが生じてしまい今年の5月に就任したばかりだった。


定期報告便を含めた各植民地との交易便は月に1度は必ず受け取っていたんだけどなぁ……。

ノリボス総督は特に大きな問題を起こした事が無いし、むしろ報告書はしっかりと記載していて読みやすかった。


いや待てよ……。

もしかしたら前任者の総督が反乱軍の情報を伏せていたか、問題は解決したと嘘の報告をしていたんじゃないか?

もしくは以前から小康状態だった反乱軍に外国勢力が結託して武器などを供与したんじゃなかろうか?


前者はあまり考えられないな……何故なら反乱軍の情報を意図的に隠していたりしたらばれた時に責任を被るのは元総督だ。

交代するなら問題点などを残していくはずだから事実上反乱軍というのは本当に人数が数えられる程の小規模だったか、もしくは鎮圧していたはずだ。


だとすれば、反乱の危険性が一気に高まった要因を探らないといけない。

奴隷解放に反対した農園を中心に

フランスの植民地が無くなることで喜ぶ外国。

イギリスしかないじゃん。

そう、天下無敵の大英帝国(Victoria)だ。


正確にいえばグレートブリテン王国な訳だが、事実上世界の至る所に植民地を作りまくっている上に軍事力も世界有数なのでこの時代では最強国家のうちの一つだ。

スペインの無敵艦隊をボコボコにして以来、島国としてのポテンシャルやら滑舌な二枚舌外交などを駆使して巧みに領土拡大を担った国家。

故に、フランスとも幾度か戦争を起こしていて、七年戦争によってフランスは北アメリカ大陸の大部分とインドなどの植民地を失う結果となったわけ。


それだけに、イギリスが領土拡大を狙って元奴隷たちに支援を取り付けてサン=ドマング全土を巻き込むような大規模な反乱を起こそうとしているんじゃないだろうか?

可能性としては大いにある。

何故ならサン=ドマングの砂糖やコーヒーなどの嗜好品はこの時代における全世界の出荷量の大部分を占めているからだ。

言わば市場を独占状態にあるわけで、それだけに膨大な利益を挙げている。


今現在、フランスは軍事力よりも本国における経済力・技術力に力を注いでいる状況だ。

軍事面では正直に申し上げるとイギリスより下だ。

つまりイギリスはきっかけが生まれると同時に反乱を各地で起こさせて、イギリス傀儡政権の樹立を目論んでいるのかもしれない。

事実ならこれは非常にマズイ。


もしかしたらあの手紙に記されていた総督の家族が人質に取られているというのも、本国の支援を仰げない場合は殺されることを意味しているのではないだろうか。

ああ、なんてこった!

ここ最近でもとびっきりに悪いニュースだ!

俺は内心で頭を抱えつつも、今後どうするべきか方針を取らないといけないのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] でたなイギリス。悪い方向に絡んでくる。
[一言] 口から出任せの可能性だってまだ十分あるんだから信じ込みすぎるのも… 国土管理局とどちらが信用できるかと言ったら国土管理局の方っしょ。
[一言] イギリスはフランス革命のときにも王統派を支援してじたいをややこしくしていましたからじゅうぶんかんがえられる事態ですね。 とは言え現状であればフランス海軍はイギリス海軍位引けを取らない状態で…
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