1051:インダストリア
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1797年1月29日
おはよう諸君、ベッドで爆睡しているアントワネットの横で立憲君主制に関する草案を取りまとめた報告書を読んでいるルイ16世だ。
年が明けて1797年に突入した。
史実では1797年という年は実はフランス革命に関わっている大きな節目の年でもある。
というのも、フランス革命を脅威と捉えたグレートブリテン王国やプロイセン王国、スペインといった諸外国が第一次対仏大同盟で連合を組んで戦争を行い、勝利した年でもあるのだ。
フランスは周辺諸国全部敵という状態に陥ったにも拘わらず、その戦力差をひっくり返して革命を守った戦いでもある。
まず普通周辺諸国が全部敵国になったら再送確定、即オワタ式に見えるかもしれないが、この時のフランスでは革新的な師団編成であったり、国民の国家総動員体制を構築していたこともあってか、この戦いでフランスは勝利することができた。
この当時は総力戦という言葉はなく、軍人も殆どが職業軍人によって行われているものであり、あくまでも軍隊というのは兵士は志願制であった。
それを国民皆兵という制度を使って成人男性を徴兵し、インスタント兵士として訓練できるようにした結果、大規模な徴兵を動員することに成功し、数で押してくる連合軍の猛攻に耐えたのである。
そればかりか、オーストリアやイタリアなどを屈服させた結果、ナポレオンが冬将軍でロシアに敗れるまで、ヨーロッパにおいて革命的な勢力が優勢となってその影響力を行使した。
第一次対仏大同盟はフランスで起こった革命を武力によって鎮圧しようとした諸外国が、フランス側の軍事力を見せつけられ、革命というものに恐怖した戦いでもある。
またそれに続いて第二次対仏大同盟も蹴散らしてナポレオンが戦いによって名声を得たことにより、彼が皇帝の座に就くのだが……それでも戦争が止まることはなく、結果としてナポレオン戦争を起こして1815年まで戦争が続くことになるのだ。
早い話が、軍の改革などが革命によって守旧派から革新系に変わった事で、戦法なども大きく変わってこれまでの伝統的な軍隊の戦いから、現代でも通じるような砲兵による火力支援攻撃などが重要視されるようになったのも、この時代からだ。
(今にしてみれば、フランス革命をやっていて内部で王党派や反対派の人間を粛清しまくるような政治情勢においてもフランスが優勢で戦っていたのって凄まじいよな……それだけ当時のフランス軍は革新的なアイデアを出して戦っていたというわけだな……)
途中休戦を挟んでいるとはいえ、常に戦争をしていたフランスの国力もさることながら、そのような状態で政権内で内ゲバを始めたり、反乱を起こした王党派の軍隊が出現した地域において大粛清ともいえる処刑を行ったりと、色々とやりたい放題なことをしていたのもまた事実だ。
よくこのような状態で対外戦争をやって勝利できたと関心している。
革命勢力も、当時は革新的な軍隊方式であったり、ナポレオンをはじめとした若き秀才による軍事指導のお陰で勝利することが出来たのもまた事実だろう。
今のフランスはどうか?
少なくとも、史実のような内戦状態に陥っておらず、国王の権威も健在だ。
おまけにフランスが主導的な立場で発足した欧州協定機構の組織はこれまでにヨーロッパの大部分の国家や地域が参加しているヨーロッパ連合のような組織となっており、実質的に200年後のヨーロッパ連合を先取りしたような社会システムなどの導入も検討されている状況だ。
経済協定も行っており、これにより相互関税なども一定の額にした上で、蒸気機関などの重要工業製品などに関しては関税の措置を執り行ってフランスの重要な輸出産業として大いに栄えている。
ユグノー派が多い地域において、こうした工業製品を作る工業団地などを既に誘致している段階に入っており、パリ以外の地方都市……特に南部地域などに関しても工業化を促進し、フランス全土が経済的に発展するように計画工業化政策を導入している。
史実では考えられない速度で工業化の波がフランス全土を覆っており、すでに産業革命のスタートダッシュにおいてこの世界のフランスはどの国よりも早く実用化した機関車や蒸気機関を通じて工業を発展させているのだ。
その証拠に立憲君主制の草案の中にも盛り込まれている。
『これからの時代は工業を基盤とした工業化政策によって、多くの国でこれまでの暮らしを一変させるような技術が産まれ、その技術を使って人々は繁栄を得ることが出来、また多くの国でこれらの製品を使うことになる。人類が飛躍的な発展を遂げる工業政策は、各国において促進していくと同時に、工業化によって生じた公害等に対しては、環境汚染などの影響で人体に影響が出た場合には即座に汚染への対処を行い、同時に対策などを講じて水源地や人口密集地における汚染が発生しないように努力をしなければならない』という文言が加えられているのだ。
環境汚染に対応する旨を記載したのも、産業革命におけるデメリットであり、汚染によって引き起こされた環境破壊などは今のうちに対策を明記しておく必要があると感じ、それを盛り込んだのである。
産業革命が進んで工業化を行う際には必ずと言っても過言ではないほどに公害が問題になるはずだ。
日本でも明治維新を切っ掛けに産業革命の恩恵を受けたものの、その影では地下資源の採掘などに多くの民間人が重労働を行って過酷な生活を強いられていた上に、足尾銅山などでは公害問題なども深刻化していたことが挙げられる。
さらに時代が進んだ昭和中期ごろには光化学スモッグだけでなく、有毒物質を適切に処置しなかったことで下流域に工業廃水をそのまま流した結果、高濃度の有毒な水銀などを含んだ物質を摂取した魚などを食べたことにより、中毒症状を起こしたり生まれつき障害を抱える事案が多発した公害病が発生したことで、四大公害病の一つに数えられた水俣病やイタイイタイ病などが有名だろう。
四大公害病もさることながら、そういった公害問題などの解決も時間をかけてやるしかないのだ。
生憎、俺もメリッサもそういった公害問題を解決する具体的な対策方法などに対して案が出せていないのだ。水銀などを含んだ有害物質に関しては、水源地から遠く、周囲に住居などがない場所に【産業廃棄物処理場】として処分を行い、水源地などを守る取り組みを行うことを大前提とすることを確認している。
(公害問題に関しては、日本だけじゃなくてヨーロッパでも深刻な問題だったみたいだからなぁ……ソ連だと軍需生産に重要な場所には秘密都市を建設して、汚染物質を垂れ流してそのまま稼働していた影響もあって現代でも汚染が激しい地域があると聞いているが、もうこの産業革命の黎明期にそういった決まりを作って少しでも健康被害を減らす取り組みをしないとね……)
発生するであろうリスクに対し、救済措置を設ける。
こうすることで、いざ問題が発生した際に対策を行う事が出来るようになるのだ。
あるだけでも違う。
工業汚染対策は今のうちに法整備しておかないといけないのだ……。




