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1047:湖畔(上)

★ ☆ ★


今年も残すところあとわずか……。

私もオーギュスト様も仕事を終えて部屋に戻ってきました。

寒い冬ということもあってか、今日は一段と寒く部屋の暖炉に火をくべて寒さを凌いでおります。

帰ってきてからオーギュスト様は私にキスをしてから暖炉の前にあるソファーに腰掛けて、一息ついてから私に問いかけをしました。


「アントワネット……今後についてなんだが……今時間はいいかな?」

「ええ、どうかなさいましたか?」

「これからの王政政治について……些か気になっていることがあってね。君の意見を聞きたいんだ」

「私の?」

「そうだ。アントワネットが思っている意見を聞きたい」


オーギュスト様はそこから今後の王政政治が変容していく事を伝え、各国で民族主義であったり平等思想が広がっていくのは避けられないと語っておりました。

これは今現在はそこまでの広がりを見せていないものの、欧州全体で階級格差などが社会問題化していくと必ず起こり得る問題であると語り、グレートブリテン内戦であったり、プロイセン王国で勃興してネーデルラントに戦争を仕掛けた薔薇十字団のような組織が反乱や内戦、それに戦争などを仕掛けてくる可能性があると語っておりました。

それらを踏まえた上で、私はオーギュスト様に意見を言いました。


「……私としては、王政政治が続くことが大事だとは思いますが……やはり限界が近いのですか?」

「そうだね……これから多くの平民は政治活動について真剣に考えるはずだ。特に内戦が起こったグレートブリテン王国……今はスコットランド政府だが、プロイセン王国でも国王に政治を任せるのではなく、議会制によって国家運営をしていくという考え方のほうが多いね……無論、議会制政治も悪くはないんだが、如何せん悪用を仕掛けてきた場合は、議会と民衆を手中に収めるような輩が現れた場合、国王ですら対処ができないという点が難儀だね……」

「つまり、議会制政治は多くの平民を政治に参加させて質を高くする代わりに、国王や皇帝よりも暴君のような人物が出現する可能性が高まるというのですか?」

「国民が選んだ議員の中から選出された人物が統治者となって政治運用を行う事が出来る仕組みだ。統治者となる者が国政を担い、責務を果たす……というのが本来の役割だが、これは利点と弱点がある」

「……利点と弱点……」

「利点は王族は国王を含めて、国民に寄り添い誠意を見せて国事行為や慈善活動等に専念することが出来る。国政を国民から選ばれた政治家が行えばその分、こちらは王族本来の役割を果たすことが出来る。弱点は、さっきもいったように悪意のある政治家が代表に選ばれた場合、国王や皇帝の地位を簒奪することが可能という事だ。憲法などを制定して禁止にしていたとしても、国民投票であったり時の政治権力者としての地位を悪用して法的解釈を捻じ曲げて自分の都合のいいように変えてしまうことができるんだ」

「もし……そうなってしまった場合は国王や皇帝は反撃できるのですか?」

「暴君が全てを掌握した際に王族や皇族は反発したとしても、国軍側を掌握していないと勝ち目はない。仮に国軍側の中から王族に付き従う忠誠心のある者達を集めて反乱という形で決起を起こしたとしても、諸外国からの支援が無ければ倒すことは難しい。何せ国民によって選ばれた政治家が、その意思を悪用して王族や皇族を簒奪する事も可能という事だからね……」


議会制政治は平民などが政治家となって国の為に忠義を尽くす理想的な政治体制でもある反面、悪用されてしまうと国王や皇帝の権限を簒奪して勝手に登り詰めてしまうことが出来てしまうという事のようです。

オーギュスト様の説明には説得力があり、幾つかの例を挙げて説明もしてくださいました。


「議会制政治でなくても、このフランスでも度々簒奪者は現れたものだ……ただ、その大半は政治的な権力を掌握して、国王を自身の傀儡にすることを主眼に置いていたケースが多い。主に摂政を司る宰相が国の実権を掌握し、国王がそれを承認するというやり方だ。宰相の多くは国を反映させるために執り行うものだが……国王よりも権力を持って意のままに操る人物は多くいたんだ。ただそれでも最終的には国王の権威を間借りするような形で、盾にしてその座についていたから国王を排除して別の人物を国王にするにせよ、そのものを廃位にするような真似だけはしなかったんだ……グレートブリテン王国内戦で、それが大きく変わったんだ」

「あの内戦ですか?」

「そうだ……グレートブリテン王国内戦では国王の不予と、それに伴う政治的混乱によって怒り心頭の一般大衆と、軍人らが蜂起を起こした。その際に、国王の廃絶という大義名分を掲げて反乱を起こし、反乱発生時にロンドン市内にいた王族関係者の住居を襲撃して、即日中に処刑していたことが判明しているんだ」

「それは……凄惨ですね……でも、なぜ国王の廃絶などを掲げていたのですか?」

「反乱を起こした自分達自身が、国王の元で承認されるのが嫌だったのかもしれないな。反乱を起こせば十中八九失敗すれば死刑は避けられない。これは何処の国でもそうだけど、一番彼らが厄介だったのは、国王の制度を無くして自分達の思想に共鳴する人達以外を排除し、その排除が国王などの王族も含まれていたという事だ」

「排除……王政だけでなく国王そのものを否定して、自分達だけの国を作ろうとしていたのですか?」

「うん、現に王国で国王や王族と関わりのあった代議士や行政官、さらに料理人までもが『王族と関わりのあった』というだけで彼らは処刑されてしまったんだ。反対する者は徹底排除……それが彼らのやり方でもあるんだ。国王が不予になり、さらに本来であればそれをサポートする議会制政治が内部紛糾によってまとまらずに混乱した事で、かの国は一気に崩壊してしまったというわけだ……」


国が崩壊した実情を鑑みれば、まだ国王を傀儡にするのは権威を借りるために行われるためにあり、さらに言えばその権威すらも簒奪するような事態になれば、国王や皇帝の存在が無くなる代わりに独裁的な政治体制を構築する人間が頂点に立つというわけです。

これらに対応するためには、国王への権力集中は非常時においては有効かもしれませんが、王が必ずしも優秀であるとは限らず、将来に渡って私利私欲を優先するような人物が即位して権力集中がおこれば内部紛糾が起こるリスクも跳ね上がると仰いました。


「だからこそ、今の時代に法整備と欧州協定機構加盟国で将来に向けて政治体制の条約を決めようと思うんだ」

「条約ですか?」

「そう、各国にいる国王の威信と権威が失われることが無いように、そして政治家が独裁的で排斥主義や廃位等を起こして国家体制を転覆させるような事を起こす前に阻止する事を取り決める条約を作る。それが指標となれば今後200年ぐらいは王族や皇族の権威は維持されるだろう……」


オーギュスト様はそう語って今後取りまとめる草案などをゆっくりと語ってくれたのです。

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