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1016:もしも最後に……

呼吸と容態が一先ず安定したところで、俺とアントワネット、それにシャルルと三人で話し合いをすることになった。

このままジョゼフの容態が悪化して万が一亡くなる事態になった場合、シャルルが次期国王として王太子として様々な役割を背負っていくことになる。


(史実だとジョゼフは10歳を迎えるまえに病気で亡くなっている……この世界ではそれよりも長生きはできそうだが……万が一の事を鑑みれば、覚悟はしておいた方がいいだろう……)


ジョゼフは亡くなった時、史実の方では葬儀代が満足に捻出することが出来ず、宝石類を売り払ったお金を足しにしたと言われているぐらいに情勢が悪化……。

最終的には弟のシャルルを含めて一家は離散して、歴史の波に飲まれてしまった……。

この世界では、テレーズは嫁いでいったし……ジョゼフもシャルルも元気に育っていたが、やはり歴史の修正力というべきか、インフルエンザを拗らせたことで喘息を発症し、そこから坂を転げ落ちるように身体を悪くしてしまった。


それでも、史実に比べたらかなりマシの分類に入るだろう。

この時代の最先端の治療を行えている上に、弟のシャルルに関してもジョゼフとの関係も良好で、兄弟としてよくやってくれている。


ジョゼフからシャルルにはそうなった時に備えて色々な事を書き記した本などを渡されたりもしたようだが、シャルルにとってもジョゼフの容態悪化は青天の霹靂であったようで、動揺している様子であった。

親しい間柄であり、良き兄弟としてジョゼフが面倒を見ていただけに、やはり彼の容態が厳しい状態であることを告げられた際にも涙をこらえていたほどだ。

理想的な兄弟愛を体現化したような存在であった兄がもしかしたら……と考えてしまうのが辛いのだろう。


「シャルル……大丈夫か?」

「は、はい……ただ、兄さんの容態があまり芳しくないと聞かされたので……それが自分でもどうやって受け止めればいいのか分からないのです」

「気持ちは分かる。ここ最近のジョゼフの容態は比較的安定していたからな……それが昨日の夜から熱を出して急に悪くなってしまった……肺炎を罹患している状態となれば、絶対安静と今分かっている鎮痛作用のある薬と炎症を抑える作用のあるハーブを交互に服用するしか有効的な治療法はないからな……それでも、今のジョゼフは頑張って乗り越えようとしているんだ。必ず命が失われると決まったわけじゃない。峠を超えれば助かる見込みもある」


俺はそうアドバイスをしたが、実際に医師から山場という状態は医師たちの経験値に基づいて診断されるケースが多い、その上で助かる見込みも完全にゼロというわけではないが、治るかどうかと言われたら大半が助からずにそのまま死亡するケースが多いという事でもある。

現代医療の現場でも、生存率が10%程度以下と診断される場合は、大半の患者は頑張って生存率に望みを繋いで治療を行うよりも痛みなどを無くす緩和ケアを優先するケースが多いという。

それだけに、ジョゼフの容態が芳しくないことを鑑みれば、ジョゼフの意識があるうちに彼の傍にいてやることが親としての務めになるのではないだろうか……。


医師が回復の見込みがないというのは、もう助かるないし改善の余地がない事を現す。

そして、助かる見込みはあるが難しいと述べている時点で、体力に余力があるか免疫力がある程度あって健康的な人であれば助かる確立が高まるという意味合いであり、病弱であったり老人などの免疫力が衰えている人にとっては事実上の余命宣告に近い。

故に、ジョゼフの容態が悪化したらすぐに彼の部屋に集まることにしたのだ。


「ジョゼフの容態は決して良くない……はっきり言って、回復する見込みは薄い……それだけジョゼフの体力は消耗してしまっている。だが、それでも余はジョゼフが無事にこの危機を脱することができると信じている。自慢の息子でもあり、そしてシャルルにとっても良き兄だ。お前たちが二人で頑張って勉強しているのを知っているぞ。本当に二人で頑張ったな……」


シャルルの頭を撫でた上で、ジョゼフが無事に回復した際に……後遺症が残ってしまった場合も考えなければならない。そう、この時代には病気に打ち勝っても身体に後遺症が残っていしまうケースが多い。

有名なものでは天然痘では肌が荒れて傷痕が残ってしまう、これが原因でアントワネットの姉の一人が天然痘を罹患した後に生還しても、結婚が出来なかったと言われている。


現代ではそういった病の際に出来た傷も整形手術を通じて治すことが出来るが、この時代ではそういった事が出来ない事で、例え病から脱却して完治したとしても、外的要因で見た目を憚られて避けられる……といったケースがいくつもあった。

傷痕だけでなく、歩行障害などを発症してしまった際には場合によっては寝たきり状態になる可能性も高くなり、後継者となる世継ぎに必要な行為も出来ない事態になる可能性も高くなるのだ。


「シャルル、ジョゼフから聞いているとは思うが、万が一の事があれば次期国王として振る舞いを見せなければならない。王太子としての素質は既に持っているが、これから先は関係者や大勢の外交を担うことになる。それがいばらの道であったとしても乗り越えなければならない。その準備は出来ているか?」

「はい!……ジョゼフ兄さんと話をしていた時から、こういった時が来るときに備えて置いて欲しいと言われていましたので……ジョゼフ兄さんからアドバイスや本などを貰って勉強しておりました」


ジョゼフからシャルルは王位継承となった場合の心得であったり、その際に必要な事などを全て教えていたようで、既にその事については学んだという。

去年頃からジョゼフからシャルルに勉強を教えている事があったと報告を受けているので、きっとその頃にジョゼフが教えていたのだろう。

シャルルに教えているのであれば、問題はない。

残る問題は、ジョゼフの今後だ。


「これから先はジョゼフの体力次第だ……今はジョゼフが回復できることを信じる……それだけだ……」


回復できたとして、何かしらの後遺症が残ってしまい執務が困難となってしまえば、それだけでも王位継承者から脱落を意味する。

だが、障害のある人達への支援拡充などを訴えてきたジョゼフが亡くなる事態になれば、彼らへの支援拡充を訴える声も小さくなってしまうのではないだろうか。

王である俺がしっかりとジョゼフの意思を継ぐことも大事ではあるが、彼らとの交流のあった王族が亡くなるだけでも、それだけで彼らへの心への負担も大きくなるだろう。


自分よりも先に旅立とうとしている子供を見るのは辛い。

アントワネットもこの先に起こる事を案じてか、涙をハンカチで吹き払っている。

グッとこらえていたようだが、ついにその時が訪れてしまった。


1796年6月29日午後4時20分頃。

ジョゼフの容態が急変したとの報告が入ってきたのである。

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