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1014:上り坂

ジョゼフとシャルルが話し込んでいるようだが、どうやら将来のことについて語っていたらしい。

ジョゼフの容態が回復できずに万が一のことがあった際には、シャルルに王位継承権を譲り受ける事なども話合っているという。

普段なら、滅多な事を言うべきではないと思うわけだが、今の状況を鑑みればジョゼフの容態が急変して生命が危うくなってしまう状態の瀬戸際であることを鑑みれば、こうした事も必要になってくるのかもしれない。


「シャルル……いざという時のものは引出に入っているから……それを使って……ゲホゲホ……」

「分かったよ兄さん。だからもう休んでいてくれ……重たい咳で辛いだろうに……」

「ああ……すまない……ゲホゲホ……」


ジョゼフから託された紙が引き出しにあるようで、その用紙はシャルルに王位継承者になった際の手続きなどが書かれているようだ。

以前から万が一のことがあった際にシャルルが王位を引き継ぎ、国王としてこの国を統治することになるだろう。だが、ジョゼフも可能であれば生きて欲しい。

こんな事を言うのは不謹慎かもしれないが、ジョゼフの身体が弱くても、王位につけるという事を世の中に広めた上で、身体などに障害がある人でも暮らしていけるようにする社会を作りあげる上では必要な事でもあるのだ。


弱者救済の理念が広がったのが19世紀頃であり、それまでは教会などが率先して救済のために行動をしていたのも事実だ。今日のように障がい者の支援ネットワーク施設があるようになったのは、第一次世界大戦と第二次世界大戦後に人権の理念が広がったお陰で、西側諸国を中心に法整備や障がい者の人権尊重の意識が増えるようになったのである。


それまでは、基本的に弱者は切り捨てられる立場でもあったのだ。

富裕層であったり、金銭に余力のある家はまだ良かった。

だが、それ以外に一家の大黒柱である父親が動かなくなってしまった家などの生活は一気に困窮してしまう。それは古今東西でも変わらないが、現代と違うのはそうなってしまった際のセーフティーネットがないために、子供や妻も重労働を強いて家庭を支えなければならない状態になるのだ。

以前デオンにも貧困層の調査を行った際に、家族が病気等で働けなくなったり亡くなったりして、児童労働や夜の性的サービスを行う店への出勤を強いられている女性が多くいる事を告げられたこともあった。


「貧困層の多くが、家庭内において一家の大黒柱である父親を病気で長期療養を余儀なくされたり、亡くなったりして生活苦になっている事例が多くあります。一般の庶民でもそういった事が多く発生しており、支援の手が行届いていない場合も珍しくありません」

「支援制度が足りていないという事か……」

「はい、女性や子供の場合は低賃金で長時間労働を余儀なくされているケースが多く見受けられます。これらのケースでも支援が十分に周知されていなかったりしている場合が多い為、保険制度の拡大を視野に進めていくべきではないでしょうか……」

「そうだな……ジョゼフの場合はまだ王族であるから手厚い支援が受けられているが、貧困層の場合はそうではない。子供や親が病気で苦しみ、薬などを十分に施せずに亡くなるなんてことがあってはならないし、一人でも多くの人々が救えるのであれば、その制度を広く国民に周知させておけるようにしておこう……」


子供が児童労働として働くのは、この時代では合法な上に……女性に関しては働く手段も択ばずに行われると、夜の店や客引きとして働くようになり、やがて身体を壊して両親が働けなくなってしまい、子供たちに更なる負担が増えてしまう結果になってしまう。

こうした事態を受けて、俺は日本でも取り入れられている国民年金制度を参考にした『王国民保険制度』の導入を行い、主に衛生保健省が管轄となり不慮の事故や怪我で就労が難しくなってしまった家庭などに、必要な分の支援金などを渡せる仕組みを作り上げた。


保険会社はこの時代でも存在していたが、物品などから税金を徴収し、その税金をこういった形で有効活用する方法を宣伝したのである。

その中でも、ジョゼフは自ら進んで自分の身体の事などを話したりして、各地からやってきた市町村の面々と会談をして、病気や障害などで身体が不自由な人だけでなく、その家族にも支援の手が差し述べられる社会を作って欲しいを語りかけたのだ。


「僕はこのような身体だけど、王族だから手厚い支援が受けられる……だけど、町民や貧しい人々の場合はそうではない。子供であれば、それだけで多くの手間や時間……それに病気を緩和する薬の購入だけで手一杯になってしまう。そうなってしまったら、働いている家族が更にきつくなってしまうだろう……僕のような病気であったり障害のある人達だけでなく、その家族の苦労を軽減するためにも、この制度の導入を大勢の人たちに知ってもらう活動を広げて欲しいんだ」


王族の王位継承権のある者が言うとより説得力があったのか、最初こそ渋っていた地方の行政官なども、ジョゼフの鶴の一声で可決の流れになったのだ。

貧民窟などの人達にも、伝令人などが文字の読み書きができない人のために、月に少額の保険を払うだけで怪我や病気で働けなくなった場合でも保障が受けられるようになると宣伝してくれたお陰で、多くの人達が保険に加入してくれるようになったのである。


(ジョゼフのお陰でフランス版国民年金基金の制度も整った上に、それを利用する人たちも大いに助かっているからな……税収から賄える金額である上に、多くの人達が必要としている支援でもある。ジョゼフは将来、多くの国民から支持される王になれる気質と慈悲深い心を持った人間だ……彼を失うのは親としても、フランスとしても手痛い事だ……)


ジョゼフの事もあって、呼吸器疾患や生まれつき身体の免疫機能が弱っている人達への療養施設はフランス国内でも存在していたが、利用料金などが高く上級階級の者しか使えない数える程度しかなかった。

それを身分などを問わずフランス国民であれば利用できる『王立療養支援センター』を作ったことで、パリなどを中心に各都市圏に作ることが出来た。


療養支援センターには、怪我や病気等で就労が出来ない状態の人達を助けるための支援施設であり、これらの支援施設には長期療養や短期療養などを含めて大勢の人達が利用している。

これも全て、税金で賄っているとはいえジョゼフの意見が採用されなければ通らなかったものだ。

王族でも身体の弱い子がおり、王族だけでなく国民でも万人が療養できるようにできる制度を作ることが社会理念の一つとして浸透することができたのである。


その理念を実現できたのもジョゼフの尽力あってことの賜物だ。

ジョゼフがいなかったら、実現はしなかった制度でもあるのだ。

出来れば、彼には生きていて欲しいのだ。

今後のフランスの未来を導いてくれるために……。

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― 新着の感想 ―
長男、一回王位につけたらあかんのかね?父親は帝位つけると思うし。台湾やら外地を王国とみなしてな。
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