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1011:フロリダ防衛線(中)

北米複合産業共同体にとってフロリダ州の状況は芳しくない。


現代ではマイアミとして有名な南端部分の都市は欧州協定機構軍によって占領されており、この地域を守備していた部隊は、戦闘開始から僅か2日で壊滅している。

フランス主導の上陸部隊は、数にものを言わせるだけでなく、徹底した沿岸部の要塞や軍事基地を破壊してから上陸を敢行したのである。

この上陸作戦を指揮したのはナポレオンであり、彼が率いている部隊は述べ3万人規模の軍団である。

その軍団がフロリダの南部を制圧したことで、最南端地域から北上を実行したのである。


ナポレオンの部隊は迅速に砲撃する位置を決めて陸戦においては北米複合産業共同体の部隊を蹴散らして快進撃を続けた。

北上している部隊の多くが近代的な連射式空気銃であったり、蒸気野砲、それからマイソールロケット砲を装備した部隊によって編成されており、主に野砲師団としての活躍が期待されていたからだ。

これらの部隊には随伴補給部隊が存在しており、砲弾などを運搬する兵士には『補給兵』として小型マイソールロケット砲であったり、空気銃に使う弾丸などを軍馬を使って輸送したのである。

また野営地においても乾パンやジャーキーなど比較的保存が効く食品が運ばれて兵士達に支給された。

これによって常に部隊は移動しながらの補給を可能にし、弾薬や食糧が途切れることなく敵陣を突破して奥深くまで進んでいったのだ。


この快進撃はナポレオン自身も想定していた範囲を超えており、観測用として採用されていた気球などから先行部隊から発せられた発光信号や旗振り信号などを通じて、部隊の位置を確認し、進軍のし過ぎで停止を呼びかける事態にもなったのである。


「閣下、現在第2蒸気騎兵小隊と第4狙撃小隊が北米複合産業共同体の補給基地を発見、攻撃を開始しております。まだ進撃可能とのことですがいかがいたしましょうか?」

「いや、その補給基地までで一旦進撃を止めよう。私が予測していたよりも早いペースで進軍をしてしまっている……あまり部隊を突出させてしまうと敵側から奇襲攻撃を受けて壊滅する恐れがある。この辺りで進軍を一旦停止して後続部隊との合流を行う頃合いだろう」

「はっ、後続の部隊との合流後に再度進軍致しましょう」

「しかし……ここまで戦闘が変わってしまうとはな……我々の想定よりも上回る戦果だ……」


ナポレオンが感嘆したのも、現在使われている戦術がこれまでに有効とされていた戦術と組み合わせることによって従来の方式で戦っている北米複合産業共同体に対して有効打を与えている点だ。

史実でも野戦砲部隊を中心とした活用方によってナポレオンの部隊は評価されていたが、今回の戦闘では野戦砲部隊と合わせて騎兵隊や狙撃部隊なども活用して戦場に投入したのである。


騎兵隊には再装填ではなく連射が可能な蒸気空気銃が配備されており、この空気銃はプロイセン王国との戦いで鹵獲・研究用に回されていたものである。

重量も重たいため、馬に担ぎながら三脚で設置するタイプと、威力が弱まる代わりにこの時代では最高レートの発射速度と連射性能を誇る蒸気機関を内蔵した空気機関銃は、騎兵隊の戦い方を大きく変えた。


「くそっ!フランスの騎兵隊だ!」

「こいつらマスケット銃じゃねぇ!連射式の銃を持っているぞ!」

「おい、隊長が頭撃たれたぞぉッ?!」

「なんてこった……これじゃ俺たちは袋のネズミだ!」


騎兵隊が敵陣に突入する前に、マイソールロケット砲による砲撃を敢行して敵陣の前面部分に損耗を生じさせた後、重空気銃を組み立てて銃撃する部隊と、斬りこみ部隊として空気機関銃を撃ちこみながら進撃する部隊を運用したため、多くの北米複合産業共同体の兵士達がこの騎兵隊との対峙で混乱している間に、遠距離狙撃用に望遠鏡などで使われている照準レンズを取り付けた特殊マスケット銃や空気銃で編成された狙撃部隊による士官の狙い撃ちが行われたのである。


遠くからでも狙い撃ちが出来るとは言っても、現代の銃よりは命中精度が劣っているため、マスケット銃や空気銃にもよりけりだが有効射程は300~500メートル未満である。

それでも、500メートル以内であれば確実に目標に命中できるように照準レンズを取り付けた狙撃部隊は大いに活躍した。

北米複合産業共同体側の主力装備であったマスケット銃や空気銃よりも射程が長く、それでいて熟練された兵士によって狙撃が敢行されたことで、誤射は殆ど起きなかったのである。


狙撃部隊は観測係だけでなく、弾丸を素早く装填する者と空気銃で使われる圧縮空気入りの筒を交換する補給兵、それから狙撃を行う狙撃兵の三組に分かれており、狙撃部隊に配備されていた兵士の数は50名程であったが、騎兵隊と合わせて150名に満たない部隊が、2000名を超える北米複合産業共同体の防衛陣地を混乱に陥れることに成功し、尚且つ士官を狙い撃ちにしたことによって将兵の多くが状況を把握しようとパニック状態に陥ったのである。


「誰か!誰か指揮を!」

「騎兵隊がこっちにも雪崩れ込んできているぞ!」

「騎兵隊が止められない!クソッタレが!」

「ここはもうだめだ!放棄して後方に退避するんだ!」


北米複合産業共同体の補給基地は襲撃を敢行してから僅か20分足らずで壊滅、2000名いた兵士のうち、上官死亡による指揮系統の混乱によって襲撃を受けて戦死した者が500名、騎兵隊や狙撃兵による攻撃で狙い撃ちにされて戦死した基地司令官が1名、陣地の中で部隊長などを勤めていた士官が13名、さらに補佐の役割をしていた者を含めると40名近い軍事教育を受けた指揮官クラスが死亡したのだ。

捕虜になった者は400名にも及び、残りの兵士達は指揮の混乱によって後方に撤退したのである。

大勢の兵士が、10分の1にも満たない軍勢によって攪乱・敗走した事実は、北米複合産業共同体とフランス軍双方にとっても衝撃がもたらされた。


この時はナポレオンでも、少数精鋭の兵士が奇襲攻撃を仕掛けてくれば、事前に心構えがある状態でも敵陣地内で混乱が生じれば、その間に回復できないとなし崩し的に防衛体制が崩壊してしまう。という事を述べた程である。

ナポレオンは後に、この奇襲攻撃を敢行した部隊を『特別奇襲作戦部隊』という名称に変更した直属の精鋭部隊に任命することになる。


士官が狙撃されて指揮系統が混乱している隙に乗じて騎兵隊が陣地の秩序を乱す……この連携プレーによってフランス軍は破竹の勢いで進撃を進めており、フランス軍の占領地域となった街では、北米複合産業共同体による支配からの脱却と同時に、人道支援などを行って三等市民扱いされて医療などを受けることが出来なかった黒人作業員などを積極的に治療したりするなど、占領地でのアフターケアを欠かさなかった。結果として、フランス軍の支配地域では反乱や暴動が起きなかったのである。



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